M国で取った証明書とはいえ、国内では効力を持たない。それでも、「お義母さん」と呼ぶのに変わりはなかった。生来プライドの高い言吾にとって、どれほど優花に惹かれても、かつての義母を妻に迎えることなど到底受け入れられない。優花がその立場にいた期間がほんの短期間だったとしても。それでも彼女は、父親の女だったのだから。言吾の父親は極めて女性関係にだらしない男だった。母親が存命中から陰で派手に遊び回り、母親が亡くなった後はより一層奔放になった。そんな遊び人が、優花のような清楚な女性に手を出したのだ。すぐに飽きてしまった。M国で証明書を取り、ハネムーンも終わらないうちに父親は優花を捨て、新しい女性のもとへ走った。期間が短く、海外でのことだったため、この事実を知る者はほとんどいなかった。その後、言吾が優花の評判を守るために情報を封鎖し、さらに知る者は皆無となった。一葉が大金を投じて一流探偵を雇わなければ、恐らく一生この真実に辿り着くことはなかっただろう。一葉の望みは離婚だけだった。余計な波風は立てたくなかった。連中が一葉を「横恋慕の第三者」「愛を引き裂く悪女」と中傷するなら、好きにさせておけばよい。離婚さえできれば、それで十分だった。しかし、優花は決してしてはならないことをした。桐山教授を巻き込んで脅しをかけるなど、絶対に許せない。死にたがっているなら、望み通りにしてやろう。一葉が親切心を装って別の携帯電話を取り出し、優花と言吾の父親がM国で結婚証明書を取った時の写真を一人ずつに見せて回った。全員の優花を見る目が一変した。二人が証明書を取ったのは、まさに言吾の父親が言吾を家から追い出した年だった。若くてハンサムな男性と、五十を過ぎた年老いた男性。金目当てでなければ、誰が後者を選んで前者を捨てるだろうか。馬鹿でもそんなことはしないだろう。ということは……優花は言吾が家を追い出されて一文無しになったのを見限り、父親に取り入って言吾を捨てたのだ。そして今、言吾が事業で成功し、高嶺の花の深水社長になったのを見て、また戻ってきたがっているのだ。彼女は清純潔白な女神でも、言吾の純白な初恋の人でもない。ただの金の亡者だったのだ。言吾のかつての義母だったのだ。まるで示し合わせたかのように、我に返
Read more