やっぱりこの車だけ異質だ。自動運転がどれだけ発展しようと、飯塚車だけは唯一って感じがある。広さとしてはリムジンぐらいあるが、少人数の時は上手い具合にコンパクトになる。要は、大型自動車から軽自動車へと自由自在になれる感じ。龍の顔をして7枚羽が付いているのは、奇抜なデザインすぎて何とも言えないけど⋯⋯。でも中はAI自動風呂があって、寝室もAI自動調理も付いてるってのは、その辺の部屋に住むより断然良い。というより、ここまでの車はまだ世に出てない無いだろうな⋯⋯自分たちで創ったのだろうか? そんな車は新しくヒナを連れ、東京ミッドタウン八重洲およびネビュラスホテル東京を後にする。短い時間だったけど、部屋や食事はマジで良かった、"あの事件"さえ無ければ⋯⋯。 右手にはまだ薄っすら浮かんで見える、あの血痕が。もう血が付着しているわけじゃないのに、いつまでもいつまでも。「飯原さんには、結局挨拶せずにだったわね」「あの人なら起きてすぐ気付く、あれに」「今の時代に置き手紙なんて、ビックリしますかね」「たまにはいいんじゃね! そんなのも! 粋な事すんのな、新崎さんも!」 きっとあの人ならすぐに気付く。今回の件で、より目をこらすようになっただろうし。流れていく都会のビル群を見ながら、そう思った。 表参道へと入った頃、周囲の雰囲気がガラッと変わるのを感じた。これを感じたのは俺だけじゃないと思う。さっきまで広い車内を堪能していたヒナが、ずっと外を見るほどだ。だって、普通に"大勢の人間が何事も無いかのように"歩き回っている。「なんか、ここおかしくね?」 とうとうシンヤがその一言を放った。それによって話が広がる。「まるで日常が戻ったみたいね、ここだけ」「なんでしょうね、これ⋯⋯」 俺は口を開かなかった、みんなの思ってる通りだったから。外に出るまでは"本当の違和感"に気付けそうにない、そうも感じる。先頭にいたユエさんがこっちへと戻ってきた。「そろそろ目的地周辺よ。見ての通りみたいだから、各自油断しないようにね」「もしかして、竹下通りなんですか?」「そう。ちょうどここの監視カメラに映っていたのよ。それで、あの赤ビルの方へ入ったっきりまだ出てきてないの」「え、赤ビル!?」「えぇ」 原宿の竹下通りにもあるのか? いつ出来たんだ? 覚えている限り、渋谷と秋葉原しか知
Terakhir Diperbarui : 2025-04-21 Baca selengkapnya