Semua Bab フォールン・イノベーション -2030-: Bab 31 - Bab 40

66 Bab

31. 原宿

 やっぱりこの車だけ異質だ。自動運転がどれだけ発展しようと、飯塚車だけは唯一って感じがある。広さとしてはリムジンぐらいあるが、少人数の時は上手い具合にコンパクトになる。要は、大型自動車から軽自動車へと自由自在になれる感じ。龍の顔をして7枚羽が付いているのは、奇抜なデザインすぎて何とも言えないけど⋯⋯。でも中はAI自動風呂があって、寝室もAI自動調理も付いてるってのは、その辺の部屋に住むより断然良い。というより、ここまでの車はまだ世に出てない無いだろうな⋯⋯自分たちで創ったのだろうか? そんな車は新しくヒナを連れ、東京ミッドタウン八重洲およびネビュラスホテル東京を後にする。短い時間だったけど、部屋や食事はマジで良かった、"あの事件"さえ無ければ⋯⋯。 右手にはまだ薄っすら浮かんで見える、あの血痕が。もう血が付着しているわけじゃないのに、いつまでもいつまでも。「飯原さんには、結局挨拶せずにだったわね」「あの人なら起きてすぐ気付く、あれに」「今の時代に置き手紙なんて、ビックリしますかね」「たまにはいいんじゃね! そんなのも! 粋な事すんのな、新崎さんも!」 きっとあの人ならすぐに気付く。今回の件で、より目をこらすようになっただろうし。流れていく都会のビル群を見ながら、そう思った。 表参道へと入った頃、周囲の雰囲気がガラッと変わるのを感じた。これを感じたのは俺だけじゃないと思う。さっきまで広い車内を堪能していたヒナが、ずっと外を見るほどだ。だって、普通に"大勢の人間が何事も無いかのように"歩き回っている。「なんか、ここおかしくね?」 とうとうシンヤがその一言を放った。それによって話が広がる。「まるで日常が戻ったみたいね、ここだけ」「なんでしょうね、これ⋯⋯」 俺は口を開かなかった、みんなの思ってる通りだったから。外に出るまでは"本当の違和感"に気付けそうにない、そうも感じる。先頭にいたユエさんがこっちへと戻ってきた。「そろそろ目的地周辺よ。見ての通りみたいだから、各自油断しないようにね」「もしかして、竹下通りなんですか?」「そう。ちょうどここの監視カメラに映っていたのよ。それで、あの赤ビルの方へ入ったっきりまだ出てきてないの」「え、赤ビル!?」「えぇ」 原宿の竹下通りにもあるのか? いつ出来たんだ? 覚えている限り、渋谷と秋葉原しか知
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-21
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32. 竹下

 この原宿駅竹下口改札からだと、アレの全貌がよく見える。ユキと見てきたあの赤ビル、そのまんまだ。中には何があるのか。とうとう今日、アレに入るわけか⋯⋯。「SNSでめちゃくちゃバズってませんでした? AIだけで造られたそうですね」「らしいよなぁ! 俺らが一番に中を拝んでやろうぜぇ!」「それもいいが、まずは"目の前のコレ"が気になるな」 竹下通りに連なる多くの人。今までの日本だったら、観光客や旅行客でいっぱいになるのは分かる。でも、今こうなるのはさすがに不自然だ。それだったら、他で全く人がいないっていう説明がつかない。ここがこんなにいるんだったら、他でも多くいるはずだ。「ルイ、一人で突っ走っちゃダメだからね?」「わかってるって」 俺とシンヤが先を行き、ユキとヒナが後ろから続く。適当に竹下通りを歩いてみてはいるが、周りの人たちは普通に観光を楽しんでいるように見える。当たり前の光景だったはずなのに、気持ち悪いと感じる日が来るなんて。まさか、ここにいる人だけ"影響を受けない"ようになってるとか? そんなことあるのか?【タイムリミットまで後24分】「シンヤ、誰でもいいから話しかけてみてくれよ、本当に人なのか確かめてくれ」「え、俺が!?」「お前得意だろ、そういうの」「え~、別に得意もねぇぜ?」 と言いながらも、シンヤはポニーテールの女性に話しかけに行った。この違和感を拭うには、シンヤくらいコミュ力あるヤツがやった方が分かりやすい。「シンヤ君、似合うわね」「ほんとはあーやって裏で毎日ナンパしてたんじゃね?」「ふっ」 ユキに笑われるシンヤ。あれだけ一緒に遊んできたのに、実は裏でやってたら最高すぎる。【タイムリミットまで後15分】 シンヤが戻って来た。「なぁ、俺には"普通の人"にしか感じなかったぜ?」「⋯⋯」「おい、ルイ?」 普通の人。なら、なんであの人は"アイツら"に襲われてないんだ? 俺は"この方向を見ろ"と顔で合図した。シンヤが慌てて銃を取り出す。それに伴い、ユキとヒナも出した。「ねぇ、あっちにもいる!」 ユキの視線の先にも、同様に10体ほどのネルト集団がいた。マズい、ここに時間を割くわけにはいかない。ここは⋯⋯。「俺とヒナで左、ユキとシンヤで右!」「わかったわ! 行くわよ、シンヤ君!」「お、おうよ!」【タイムリミットま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-22
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33. 赤都

「ほぉ、私を知っているかね。近頃の若いのは、政治家など興味無いと思っていたが」 鋭い目つき。まるで俺たちの内側を見抜くような⋯⋯この人は圧がヤバい。テレビで何度か見た事がある、現法務大臣をしている人だ。「紀野さん、あなたはまだ人ですか?」「気になるかね? なら、ここなら全てが分かるかもしれないな」 その瞬間、ついに赤ビルのドアが開いた。あれだけ開かずの間だった場所なのに。時間は"PM 10:00"を示している。「来ないのか? 用があるんだろう? この中に」 なんなんだこの人。俺たちのやろうとしている事に気付いている⋯⋯? 紀野大臣は驚く様子もなく、毅然と中へ入ろうとする。「オーラヤベぇな」「怖い感じ、しますよね」 シンヤとヒナがひそひそと話す。どちらにせよ、俺たちは中へ行くしかない。「行きましょう、私たちも」「⋯⋯選択肢は無いしな」 こうして俺たちは、連れられるようにして、とうとう赤ビルの中へと入った。そこで待っていたのは、異世界のような空間だった。「んじゃこりゃぁ!? こんなん誰が好きなんだよぉ!?」 上を見て叫ぶシンヤ。それもそうだ。天井には"L.S.のクソデカい版?"のようなものが、俺たちを見下すようにぶら下がっている。周りはどこまでも赤黒い壁。さらには不規則に散りばめられた"赤いクリスタルの置物"。これ以上は言葉では表しにくい。 右端にはエレベーターと思われるものが見える。そこが開き、紀野大臣が先に入っていく。「悪いが、一般人は"階段とエスカレーターのみ"になっている。全てを知りたいなら、最上階まで上って来たまえ。上がれるなら、だが」 そう言い残すと、一人乗って行ってしまった。「お、おいッ!! コラッ! 俺らは乗れねぇってどういうことだよッ!!」 シンヤがエレベーターを無理やり開けようとするが、ビクともしない。奥にある階段とエスカレーターでしか、本当に上がれないのだろうか。引き返す事ももちろん出来ない、次にこのドアが開くのは4時間後の14時だ。「どうする?」「どうしますか?」 ユキとヒナが同時に俺の方を向いてくる。やっぱり俺が決めるしかないか⋯⋯。まず、このビルは10階まである。なぜなら、エレベーターの階数表記が10まであるからだ。 次に、紀野大臣が「上がれるなら、だが」と言っていた事からして、もし普通に1階ず
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-23
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34. 神明

 エスカレーターを上る度、徐々に薄暗さが増していく。危険なのかどうか、常にユエさんが教えてくれるからスムーズに対応しやすい。今の時間は12時。前までだったらゆっくり食事をしたり、ゲームしたり、そんな日々を送ってるんだろうか。そんな日常はもう存在しない。死なないようにはどうすべきか、総理を止めるには何をしたらよいか、それらが今の俺たちを覆っている。この"死のヴェール"が拭える事は今後無い。『⋯⋯ここはちょっとヤバいかもしれないわね』 9階付近へと足早に行ったユエさんから警告が入る。「どんなヤツがいるっすか!?」『あれは⋯⋯"神明官フォルセティウス"。三翼の天魔神ほどではないけど、厄介なボスモンスターね』「なんでもかんでもしやがってッ!! あんのクソジジイがッ!!」「勝てるでしょうか⋯⋯?」 シンヤがイラついている横で、ヒナが不安そうなにこっちを見る。ユキまで。「⋯⋯俺が前で戦う。怖けりゃ下がってていい」「でも、ルイにばかり任せるわけにはいかないわ。あまりに負担が大きすぎるもの」「車内でも少し教えてもらいましたけど、この槍の元のモンスターの時はどうやって戦ったんですか?」「あー、アイツはルイが"一人で"やっちまったんだよなぁ」「え!? 一人で!?」 仰天した目でヒナが見てきた。「皆のおかげだよ。他を全部やってくれたから、俺はなりふり構わずやれた」 あの時の事が脳裏で再生される。俺は結局ずっと引きずっている、"あの人"の事を。察するようにシンヤが肩に手を置いてきた。「次は大丈夫だって、な?」 ユキまで俺の肩に手を置く。いつまでも引きずってられないのは分かってる。分かってんだよ⋯⋯。 長いエスカーレーターが終わりを迎え、ついに9階へとやって来た。10メートルほど先に、"金色の巨大な何か?"が椅子に座って待っているのが見えた。目をこらして見ると、明らかにヤバい見た目をしたものがいる。『アイツの攻撃は2つだけ知ってる。同じモーションなんだけど、光り方で違うの。青い方は地面からジグザグに炎が沸いて、紫の方は天井からジグザグに炎が降って近付いてくる。他は、裏部がいれば分かるんだけど⋯⋯』「後はやって覚えていくしかないってことですね」『えぇ。私のこのプロトロアだと、ここからはもう付いていけないわ、ごめんなさい⋯⋯でもあなたたちなら、すぐ対応
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-24
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35. 死刑

 さらに長いエスカレーターの先。最上階には、紀野大臣が座って待っていた。大臣はガラス超しに竹下通りを見下ろしている。クリスタル状の赤いデスクには、【法務大臣 紀野裕司(きのゆうじ)】と書かれた木彫りのネームプレートや様々な物が置かれ、デスク横には日本国旗が掲げられている。そうそうに一般人が入れない厳格な雰囲気がここには漂っていた。 「おいッ!! そっから呑気に俺たちを弄びやがってッ!! 裏部さんをどこにやったんだよッ!! おっさんッ!!」  そんな雰囲気など、1ミリも気にする様子も無いシンヤが一言投げかけた。 「おっさん? 誰のことを言っている?」 「あんた以外誰がいんだよッ!!」 「ふん。私の事をそう呼ぶのは、君が初めてだな」  座っているクリスタルチェアを回転させ、とうとうこちらを向いた。何かを見通すようなあの鋭い目つき、やっぱりこの人は見るだけで畏怖する。高圧的なその有様からは、まるで圧迫面接を受けさせられているように感じた。  これが法務大臣という立場に就き、法を管理してきた人間の権力の有様なんだろうか。いや、この人がそういう性格の人なんだ。 「普段ならば黙れと一掃するところだが、今回は特別だ。ここまで来た君らに一つ提案をしよう」 「⋯⋯提案だぁ?」 「君たちを"例外有能者"として総理に推薦しよう」 「は、はぁ!!? 総理に推薦だぁ!!?」 「(⋯⋯これって、"チャンス"ってこと⋯⋯?)」  真横のユキが耳へと囁いてきた。 「(⋯⋯分からない。とにかく最後まで聞こう)」  この人の考えがまだ分からない。どこまで本当で、どこまで先を考えているのか。ここはよく最後まで聞いた方がいい。 「総理は有能な人間は残そうと考えておられる。その有能と考えられる要因を占めるのは、"理不尽に対して抗い、AIにも改革を起こしていこうとする力"だ」  紀野大臣は立ち上がると、再び背を向けた。 「だが、その力の本質を知る人間が何人いる? 行動に起こせる人間が何人いる? おそらく東京総人口の0.0001%にも満たないだろうな。つまりは何が言いたいかというと、君らは"その枠"に入っていると私は思う」  ⋯⋯なんだ!? なんかここ動いてないか!?  突如足場が動き、大きなテーブルとイスが用意された。座れとでも言っているのだろうか? 「まぁ座り給え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-25
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36. 法務

 刹那、俺と大臣の鋭利な刃がぶつかり、強烈な火花が舞った。あまりの速さにそう対応せざるを得なかった。『オ前ハ付イテクルカ』 大臣はさらに返してこようとするが、他3人による一斉攻撃によってそれは阻止されると、ヤツは後ろへ大きく飛んで距離を取ろうとする。 ⋯⋯ここしかない ズノウの≪壊滅虹一波(アークデストラクション・ワン)≫を即座に解き放つ。両手持ちになった丸いイーリスから、溜め込まれた激しいスペクトラムが一気に射出された。どこからどう見ても大臣の全身に直撃したそれは、大きな虹爆を起こした。三翼の天魔神の時、片腕を吹き飛ばすほどの威力だったんだ。相当の致命傷をこれでくらわすことが出来た、そう感じていたのは俺だけじゃなかったと思う。「なっ!?」 煙幕の中、飛んで来たのは"無傷のヤツ"だった。金と黒の鱗を纏ったヤツは、冷静な様子に変わりない。 どういうことだ!? なんであんな平気な!? 考える隙など無いまま、ヤツが真っ先に捉えたのはなんとユキだった。一歩遅れた俺の行動は、ユキには届かなかった。さっきまで片手のみだった"赤いクリスタル状の鋭刃"は、気が付けば両手に持たれており、防ぎきれなかったユキは激しく吹き飛んだ。「ユキッ!!!」 声空しく、勢いのまま壁へと強く打ったユキは頭部から流血し、ぐったりするように倒れた。気にする暇など与えられず、次に狙われたのはヒナだった。ヒナの強力な白い雨も光の槍も、全てが"障壁?"のようなもので弾かれ、一瞬で迫られる。 くそ⋯⋯これじゃ間に合わないッ!!  そんな限界⋯⋯誰が決めた。俺は⋯⋯違うッ!!! シンヤの言葉が思い出される。『な? それに、お前は同じミスはしない、そうだろ?』 両足が焼き切れたかと思うほどの超反応を起こした俺の身体は、一瞬にしてヤツとの距離を詰めた。"七色の炎を纏った光刃"が現れ、蝶の羽根が燃え盛る。大きく反った俺の上半身は、感覚が分からなくなるほどの速さで連撃を繰り出した。 ≪七色蝶新星(セブンズ・スーパーノヴァ)≫と≪七色虹炎刃(セブンズ・インフレイムエッジ)≫を組み合わせたそれは、9階で得た新システム。 ≪七色虹炎刃(セブンズ・インフレイムエッジ)≫を3回連続で行う≪七色虹炎三重刃(セブンズ・インフレイムエッジ・トリニティ)≫は、止まる事無く21連撃を発する。だが、違和感があ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-28
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37. 新生

 このUnRuleはそもそも前提が狂っている。何かによってリアル化されてしまった事で、実体への負担があまりに大きすぎる。本当はこんな事なく作られたはずだ。ズノウも身体をここまで酷使せず、ちょっとの動きで実現されていただろう。誰でも出来るようAIアシストが細部まで届き、軽い運動程度の負荷でやっているのが想像に容易い。 それが全て不明瞭になり、その不明瞭なモノで対応しなければならず、いくらAR慣れしていても限界がある。特にヤツと対峙して感じた、あの天魔神よりも強いヤツにこれ以上はもう⋯⋯俺には⋯⋯。 ふらつき、倒れそうになった時、「⋯⋯うッ!!」 またあの頭痛が始まった。いい加減にしろ、どこまで苦しめる? 歪んだ視界の先に、また"白いアイツ"が立っていた。右手には"あの銃剣"。「⋯⋯いい加減にしろ⋯⋯誰なんだお前ッ!!」 ヤツがこっちを見る。その瞬間、銃口が俺へと向けられた。ただ喋らない、静観だけを続けるアイツ。「⋯⋯ッ!!」 どうにか限界の腕を伸ばし、こちらも七色蝶の銃口を突き付けた。二つの銃剣が呼応するように、お互いの蝶羽根が激しく輝く。すると、ユキの笑った顔、ヒナの明るくなった顔、シンヤの嬉しそうな顔が、デジタルサイネージのように空中に浮かび上がって回った。次第にユエさんの顔、"死んでしまったあの人の顔"まで。いろんな人の喜んでいる様子が、俺たちの周りを回り続けている。『⋯⋯わたし⋯⋯いっしょにいたい⋯⋯いきて⋯⋯いっしょに⋯⋯いたいよ⋯⋯』 最後にユキの声が響いた。一緒にいたいって、生きて一緒にいたいって。「⋯⋯俺は⋯⋯」 倦怠感や痛み、寒気や痺れが動きの邪魔をする。どこまでも纏わりつく。それでも引き金を強く握った。「⋯⋯お前もヤツも⋯⋯超えるッ!!」 同時だった。俺とお前、トリガーを引いたのは。 現実世界へ戻ると、俺の銃剣は粉々に割れていた。と感じた時、脳内のズノウが全て搔き消され、一つだけ"消えかかった謎の項目"が残った。 ≪大蝶(だいちょう)から虚無限蝶(きょむげんちょう)への新生≫ ≪螟ァ陜カ縺九i陌夂┌髯占攜縺ク縺ョ譁ー逕≫ ≪大蝶(だいちょう)から虚無限蝶(きょむげんちょう)への新生≫ ≪螟ァ陜カ縺九i陌夂┌髯占攜縺ク縺ョ譁ー逕≫ ≪大蝶(だいちょう)から虚無限蝶(きょむげんちょう)への新生≫  それは
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-29
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38. 二蝶

「いよいよ明日なんですね」 ⋯⋯ん⋯⋯ここは⋯⋯なんだここ? 研究室? そこになぜか俺は立っていた。体を動かそうとすると全く動かない。今、俺はどうなってる!?「あのー、所長」 所長? え、俺!? なんで所長って呼ばれてるんだ? そんな呼ばれ方なんてされた事無いぞ?「私が行かないでって言ったら、ここにいてくれますか⋯⋯?」 さっきから話しかけてくる"この人"は誰だ? ユキに少し似ているかも。眼鏡を頭にかけ、ラフな格好をしている。 行かないでってなんだ? 意味が分からない。それより、俺って生きてるんだよな!? ついさっきまで、確かに紀野大臣と戦っていた。その感覚は今でも全身に焼き付いている。でもこの身体はなんだ? まるで"他人視点を見ている"ようなこれは。ってか、目の前のこのヤバそうな機械はなんだ?「(⋯⋯うッ!?)」 突如、辺りが強烈な光に包まれた。徐々に光は消えていき、少しずつ目が開けられる。そこは、どこかの墓場だった。打って変わって静寂が漂う。"俺?"が勝手に線香を置き、視線を上げた先には"名前"があった。そこには【 新 崎 ユ キ 】と。「また来てたんですね、こんな夜中に」「⋯⋯」「どうしても、"あの場所"に戻るんですよね」「⋯⋯」「いくら止めても、行くんですよね」「⋯⋯」「だったら私、決めましたッ! 私も一緒に行きますッ!」「⋯⋯」「どうしてダメなんですか!? 私が邪魔だからですか!?」「⋯⋯」「ならどうして!?」「⋯⋯」「⋯⋯所長」「⋯⋯」「分かりました。なら、一つだけ約束してくださいね。必ずまた一緒に研究すること! それまでは私が代わりに、お墓参りしておきますね」 そう言うと、さっきから見かける彼女が他の墓に線香を置き始めた。 【 町 田 ヒ ナ 】 【 有 川 シ ン ヤ 】 【 白 石 ア ス タ 】 【 三 船 ノ ノ 】 この墓はなんなんだ⋯⋯? 分からない、何も分からない。「(うッ!! またッ!!)」 考えていると、また辺りが強烈な光に包まれた。その先はさっきの"研究室?"へと移動していた。"俺?"は勝手に歩き始め、ヤバそうな機械へと近付く。「それでは、準備はいいですか」 ヤバそうな機械が突然動き始めた。あらゆる部分が高速回転し、中心と思われる部分に集約されていく。どうやら数十
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-30
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39. 横顔

「うわぁぁぁぁぁッ!?」 あれ!? 身体が自由に動く!? 手足をひっきりなしに動かしてみる。ちゃんと感覚があり、特に後遺症も無い。痛みも無く、どこも焼けてもいない。 ん? 誰かいる? 暗闇の中、目を凝らすとスウェット姿のユキがいた。微かな寝息を立てて寝ている。こっそり頭を撫でてみた。うん、ちゃんと生きてる。ちょっと顔も触ってみた、今はさっきのが夢だったって事を証明したい。「んー⋯⋯なぁに⋯⋯」 あ。「⋯⋯うーん⋯⋯んー⋯⋯え⋯⋯ルイ⋯⋯? え!?」 彼女は飛び起きると、俺の顔を揉みしだいた。「本物よね!?」「それいがいにゃにがあんにゃ」「よかったぁ! 起きたのねっ! いつ起きたの?」「今」「そっかそっか。なんかね⋯⋯怖い夢を見てたの。そのー、私が死んで、ルイが初めて泣く夢。私は見ている事しかできなくて、触れる事すらできなくて、そんなよく分かんない夢。おかしいよね、そんな事あるわけないのに」 そう、そんな事あるわけない。なのに⋯⋯あの墓の事が脳裏を過った。そんな事あるわけない。なのに⋯⋯「!? どうしたの!?」 涙が出ていた。「あれ、なんで」 悲しいわけじゃない。嫌な事があったわけじゃない。なのに、なんで。「ごめんね、私が変な話しちゃったからかな」「いや違う、身体が勝手に反応して」「⋯⋯ルイでも泣くんだね。なんか嬉しい、初めて見ちゃった」「嬉しいもんでもねぇだろ」「いーや? ちゃんと人間なんだな~って! ルイのそんな様子、今まで一度も無かったから」 そう言うと、ユキは俺を無理やり引き寄せ、頭を撫で始めた。「なっ! いいって子供じゃあるまいし」「いいの、こういう時は。甘える事だって大事なんだから」 い、いやいや!? 2つの柔らかいモノの感触が!? 涙が止まったかと思えば、最悪のタイミングで俺のある部分が膨らみだした。「へぇ~、ルイもちゃんと性欲あるんだね。よかった~」「いや、見んなって!」「やーだ。ルイにそういうのがあって、安心するんだもん」「い、意味分かんねぇ!」「だって大きくなってくれないと、本番できないんだよ?」「それはそれだろ!? もういいってっ!」「あ~、逃げちゃダメ!」 何やってんだろ、ほんと。小学生かよ。他愛ないやり取りを数分した後、俺たちはまた寝っ転がった。そして俺は、ユキと同じよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-01
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40. 病院

「んで、ここってどこなんだ? みんなは!?」「シブチカセントラル病院っていう渋谷駅地下の病院、みんなも無事だから安心して。飯塚さんのお腹の事と、みんなの事を治療するにはここが一番良さそうだったから」 L.S.でも今の場所を確認する。一瞬で【シブチカセントラル病院】と出てきた。新しく出来たばかりの場所のようだ。「大変だったろ、ここまで来るの。倒れた俺たち担いで渋谷のここまで移動してって」「飯塚さんが全部してくれたわ。予備のプロトロアまで連れてきてくれて、2体が合体するとバイクになるみたいなの。それが2台もあったから、私とシンヤ君がそれぞれ運転して車に戻ってって感じね」「よく運転できたな。壁に強く打ち付けて、頭から血も出てたんだぞ?」「それが案外ね。当たる直前にズノウでなんとかしたから、軽い脳震盪で済んだんだけど、でもまたちょっと痛くなってきたかも」 頭を抑えるユキ。前髪で隠れていたが、包帯が薄く巻いてあった。「今日はもう安静にしとかないと」「うん。あ、そうそう! 大臣の言った通り、裏部さんが隠し部屋にいたのよ。今私たちと一緒に来てるの」「⋯⋯どんな人だった?」「少ししか話してないけど、凄い話しやすい人だった。なんか要点をまとめるのが上手いというか、ルイとは気が合いそうな感じ」「へぇ、気になるな」「なら行ってみる?」 ユキがベッドから立ち上がろうとする。「おいおい、無理すんな」「ん⋯⋯大丈夫よ、歩くくらい。誰かさんと一緒で、じっとしてるのは性に合わないしね」 不敵な笑みを浮かべるユキに連れられるように、真っ暗な病室を抜け出した。廊下に出ると、赤い光だけが点々としており、まるでホラーのワンシーンのようになっていた。「こういう廊下って、なんか出そうで怖いよな」「ちょっと! 変な事言わないでよ⋯⋯」「わりぃわりぃ。でもユキ、ホラー系得意だろ?」「まぁ嫌いじゃないけど⋯⋯リアルとゲームは違うの」 適当に会話をしながら数分歩くと、より広い場所へと出た。ここが中央らへんか? 壁に近付くと、突然案内図と現在地が立体的に浮かび上がった。反対側の壁の下に超小型プロジェクターが搭載されているようで、人に合わせて自動で表示してくれるようになっているらしい。さらにはタッチしてみると、いろんな施設情報が立体的に見れるようだ。 「ここほんと大きいわね
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-02
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