「渡辺さん、さっき電話がかかってきてたみたいだけど何の電話だったの?」接客を終えた中島が渡辺に尋ねた。「山手総合病院の里中って人から千尋ちゃんのことを聞かれたの。お休みだから伝言があれば伝えますって言ったけど大丈夫ですって断ってきたけどね」「え? 里中さんからだったの? 青山さんが休みだってこと知らないから電話してきたのね。何か進展あったのかしら……?」「千尋ちゃん、ヤマトがいなくなってさぞ心配でしょうね」渡辺がぽつりと言った。「本当にね……」「あ、店長こちらにいたんですね」突然男性が顔を出してきた。新しく雇った店員で年齢は29歳。千尋のストーカー事件をきっかけに中島は男性を起用したのであった。「ここの納品書で確認したいことがあるのですが」「分かった、原君。すぐに行くから」「お願いします」原と呼ばれた男性は、すぐ店の奥に顔を引っ込めた。「原さんて中々働き者ですよね」渡辺が言う。「そりゃそうよ、私が面接して決めたんだから。さて、仕事に戻りますか」「そうですね 」その時、自動ドアが開いてチャイムが鳴り響く。「「いらっしゃいませ!」」中島と渡辺は声を同時に揃え、接客へと向かった——****一方、その頃里中はパトカーを降りて警察病院の前に立っていた。「長井……」「里中さん! お待ちしてました」警部補自ら里中を出迎えに病院から出て来た。 「いや~すみません。わざわざご足労頂いて」並んで歩きながら警部補が話しかけてきた。「いえ、それより長井の目が覚めたって電話で教えて貰いましたが、どうですか? アイツの様子は」「いや~それが実はですね……ちょっと色々ありまして……」言葉を濁す警部補。「どうかしたんですか? アイツ、千尋さんにストーカー行為をしていたことを認めたんですか? それに自分がもう歩けなくなったことは話してあるんですよね? アイツが自分の罪を認めて改めるなら、俺は長井を自分の患者として受け入れてリハビリの訓練をさせたいと思ってるんです」「……」警部補は里中の話を黙って聞いている。「どうしたんですか? 何かありましたか?」里中は警部補の様子がおかしいことに気が付いて声をかけた。「里中さん、いきなり長井に会うと驚かれるかもしれないので、事前に伝えておきます。実は、長井は……」ガシャーンッ!! その時
Terakhir Diperbarui : 2025-04-05 Baca selengkapnya