Semua Bab 君が目覚めるまではそばにいさせて: Bab 21 - Bab 30

131 Bab

1-21 疑惑 2

「おい、千尋ちゃん暫くここに来ないんだって? 体調が悪いらしいじゃないか。早く良くなるといいな。患者さん達もヤマトに会えるの楽しみに待ってるし」患者のマッサージを終えて片付けをしていた里中に先輩の近藤が声をかけてきた。「え? 千尋さん具合悪いんですか!? 誰にその話聞いたんですか!」里中は驚いて近藤に詰め寄る。「お前、聞いてないのか? あ~そっか。千尋ちゃんの代理の人がやってきた時、お前患者さんの対応中だったな。ほら、あの人に聞いたんだよ」近藤の示した先には中島が花を飾っている所だった。「あの人が店長?」「うん、俺よりは年上だろうけど中々美人だよな~。ま、俺の彼女には負けるけどな。何たって笑顔が可愛いし……」里中はそんなのろけ話を上の空で聞いていた。(どうする、今千尋さんの具合の様子をを尋ねてみるか? でも正直に答えてくれるだろうか……)そこまで考えて、里中にある考えが閃いた。****「よし、終わり。うんうん、我ながら完璧な仕事ね」中島は自分が仕上げたフラワーアレンジメントを満足気に眺めた。秋らしく、暖色系の色でまとめてピンポイントに赤や紫の色の花を添えてみた。仕事も終了したので責任者に声をかけて帰ろうとした時に、突然中島は声をかけられた。「すみません。『フロリナ』の方ですよね? 少しよろしいですか?」中島は声をかけてきた青年を見た。(あら、随分若いスタッフね)「はい。何か御用ですか?」「俺、里中って言います。さっき同僚の先輩から千尋さんの体の具合が悪いって聞きました。それで、ちょっと気になる事があって……」(え? 何この男?)突然千尋のことを尋ねてきたので身構えると、里中が慌てて弁明した。「あの、実は1週間程前に千尋さんと駐車場に一緒にいた時に強い視線を感じたんです。その日の夜から毎晩俺の携帯に無言電話がかかってくるようになって、昨夜とうとう相手がしゃべったんですよ。彼女に近寄るなって。だから千尋さんに何かあったんじゃないかと心配になったんです」その言葉を聞いて中島は眉を顰めた。「あなた……失礼ですが、うちの青山とはどのような関係ですか?」「は? 関係?」「彼女と交際してるんですか!?」中島は口調を強めた。「とんでもないですよ! 病院で知り合った、友人関係でもない只の顔見知りですよ」「それじゃ、青山さんはあ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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1-23 疑惑 3

「この書類、新しい契約書になります。よろしくお願いします」「どうもありがとう」契約書を受け取ると中島は帰って行った。(本当は自分でこの契約書を持って千尋さんに会いに行きたかったけど、怯えさせてしまうかもしれない。それよりも俺のやらなくちゃならないのは犯人を見つけ出すことだ。一体どうすればいいんだ……?)具体的な考えはまだ何も浮かんでこなかったが、あまり時間はかけたくない。(取りあえず、共通の知り合いにかまをかけてみるか……?)気持ちを新たに、里中は仕事に戻って行った――**** 休憩時間の合間を縫って、里中はさぐりを入れてみることにした。けれども男性スタッフ全員が妻帯者であったり、彼女を持っていた。しかも全員が里中が尋ねもしないのに、のろけ話をしてくるので話にならない。(参ったな……。ここのスタッフかと思っていたのに空振りだったみたいだ)「……コーヒーでも買って来るか」 自動販売機の前でコーヒーを買おうとしていると背後から声をかけられた。「今日もコーヒー買うのか? 里中」振り向くと、そこにはオペレーターの長井が立っていた。「そうか、今日も入れ替え日だったのか」(そう言えば長井もここに出入りしている人間だから、千尋さんの顔を知ってるかもしれないな)長井の顔をじ~っと見た。「な、何だよ。男に見つめられる趣味は無いぞ」「なあ、長井……」「ん? 何だ?」「お前彼女いる?」「いきなり何言い出すんだよ。まあ、正直に言うと現在募集中かな」「ふ~ん。そうか」(長井は彼女がいない。可能性はあるな……。でもストーカーするタイプには見えないけどな)「突然どうしたんだよ? そういうお前はどうなんだ? 彼女いるのか?」「そんなのいねーよ。ま、今は仕事で精一杯だからな」(本当は千尋さんが俺の彼女になってくれたらなー)里中はお金を入れて自販機の缶コーヒーのボタンを押した。ガコン!出て来たコーヒーを取り出す。「それじゃ俺もう仕事に戻るわ。じゃあな」手をヒラヒラ振り、里中は缶コーヒーを持って職場に戻って行った――****ーー17時「お疲れさまでしたー」退勤時間になり、里中は帰ろうとすると野口に声をかけられた。「里中、『フロリナ』に行くんだろう?」「いえ、行くのやめにしました。今日代理で来た方に書類渡しましたから」「そうなの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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1-24 消えたヤマト 1

 フードを被った男がシャッターの下りた<フロリナ>の前に立っていた。警察もあの女も邪魔だ……。彼女から何とか引き離さなければ…。****  警察官による定期的なパトロール、そして中島が一緒に家に居てくれる為、千尋は以前よりも穏やかに過ごせるようになっていた。毎日ポストに自分の隠し撮りされた写真や手紙が投函されていることは中島から聞いていたが、目に触れさせずに警察に提出してくれている。中島には感謝してもしきれないので千尋はお礼を兼ねて、毎日腕を振るって料理を作っていた。「店長、今日はホワイトソースのチキングラタンにオニオンスープ、それにミモザサラダのフレンチドレッシング和えですよ」「すご~い! まるでレストランのディナーみたい!!」中島は目をキラキラさせて大喜びしている。2人の賑やかな食卓の足元ではヤマトが尻尾を振りながら餌を食べていた。「そんな、大げさですよ。本当に店長には感謝してるんです。周囲には警察の人が巡回してくれているし、店長も家に泊まり込んでくれていますから。私とヤマトだけだったら怖くて家にいられませんよ。どうぞ、食べて下さい」中島は熱々のグラタンを口に運んだ。「美味しい! こんなにおいしいグラタン初めて食べるわ!!」「良かった~。お口に合ったみたいで」「そう言えば、今日病院に行った時に里中さんていう人に会ったのよ。ひょっとしてストーカー相手を突き止められるかもって言ってたわ」「え? 本当ですか!?」「ええ。彼の所には毎晩無言電話がかかっていたそうよ。彼が言うには自分のことも青山さんのことも知っている人間が犯人じゃないかって言ってたわ」「私と里中さんを知ってる人物……?」千尋には全く心当たりが無かった。「うん、だから犯人が見つかるのも時間の問題かもよ?」「それならいいんですけど……」「大丈夫だってば! 全て解決したら彼も誘ってお酒飲みに行きましょ?」「はい!」(良かった、青山さん。少し元気が出たみたいで)この後、2人はいつも以上に会話が弾み、楽しい食事の時間を過ごすことが出来たのであった。****――21時過ぎ2人人で食事の後片付けをしていた時に突然「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴った。「え? だ、誰?」千尋はビクリとなった。「大丈夫よ、青山さん。私が玄関の様子を見てくるから絶対出ちゃ駄目よ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-03
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1-25 消えたヤマト 2

中島と警察官がパトカーで店まで出かけた後、残った警察官は千尋に言い聞かせる。「いいですか? 戸締りをしっかりして一歩も家から出ないようにして下さい。私が外で待機していますので安心して下さい」「はい、ありがとうございます」千尋は警察官が門の外へ出ると、鍵をしっかりかけたが身体の震えが止まらない、そこへヤマトがやってきた。「ああ、ヤマト」千尋はヤマトをしっかり抱きしめた。「私を守ってね……」ヤマトは黙って頷く。その時――ガチャーンッ!!遠くで何かガラスのようなものが割れる音が聞こえて悲鳴があがった。バタバタバタと走り去っていく音が聞こえ……やがて音は遠ざかり、辺りはまた静けさを取り戻した。「な、何!?」千尋は飛び上がり、耳を澄ましたが何も聞こえない。5分程経過した時に、玄関の方でガチャガチャと音が聞こえた。「――!」千尋は恐怖で身体が動かない。「ウウ~ッ!」ヤマトが立ち上がり、今まで一度も聞いたことがないような低い唸り声をあげて玄関の方を睨み付けている。「ヤ、ヤマト……?」—―ガチャッ……玄関の開く音が聞こえた。「!!」千尋は思わず叫びそうになり、両手で口を押えた。ギシッギシッ……廊下を進んでくる足音が聞こえる。(いや……誰……? 怖い……!!)その時。「ガウッ!!」ヤマトが鋭く吠え、廊下を飛び出した。「うわっ!」直後、はっきりと聞きなれない男の叫び声が聞こえた。「くそっ! は、離せ!!」ヤマトが侵入者と格闘しているようだが千尋は恐怖で動けない。バタバタバタッ!!「ワン! ワン! ワン! ワンッ!!」走って逃げる足音とヤマトの吠える声が完全に聞こえなくなるまで、千尋は一歩も動くことが出来ずにいた。やがて静かになったところで千尋は我に返った。「ヤマト……?」玄関へ向かうと、ドアは開け放され、ヤマトの姿も侵入者の姿も見えなかった。「ヤマト……? ヤマト!!」玄関を飛び出すと、慌てて走ってきた警察官と鉢合わせした。「一体、何があったんですか!?」千尋は警察官に詰め寄った。「それが、近所で石で窓ガラスを割られる事件が発生したんですよ。急いで様子を見に行って話を聞き終わった後、こちらへ戻ってきたばかりなんですが……この様子だと何かあったようですね……」警察官は千尋のただならぬ様子に気付いた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-03
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1-26 消えたヤマト 3

「青山さん……?」中嶋は千尋の家に戻ると、俯いて床に座り込んでいる千尋を見つけた。「店長……。ヤマトが……」中島は何も言わずにギュッと千尋を抱きしめた。既にヤマトが千尋を守った事も聞かされているのだ。「大丈夫、ヤマトが見つかるのを信じて待ちましょう?」千尋は黙って頷いた。しかし、この夜ヤマトが戻ってくることは無かった――**** —―翌朝里中は出勤時、守衛室をチラリと覗いて見たが話しかけてきた男は素知らぬ顔で座っている。(……妙な男だな……)病院のロッカールームで先程の守衛の男のことを思い出してみた。(おかしい……何故昨夜は無言電話がかかってこなかったんだ……?)ぼんやり考えていると、ポンと肩を叩かれた。「おはよう、里中」 振り向くと先輩の近藤だった。「なあ、知ってるか? 昨夜<フロリナ>でボヤ騒ぎがあったって」「え!? 何ですか? その話は!?」里中は嫌な予感がした。「さっき俺も聞いたんだが、知り合いがあの花屋の近くに住んでいて夜の9時過ぎ……だったか? シャッターの前に段ボール箱が置かれて燃やされたらしいぞ? でも大した被害は無かったらしいけどな」「そんな……」(ひょっとすると昨夜俺に無言電話がかかってこなかったのは、あのストーカーが燃やしたのか? 恨みとかで……? でもそれだけじゃ説明がつかない……)「おい、どうした? 里中? 遅刻するぞ?」近藤が声をかけてきた。「あ、いえ。何でもないです!」里中は慌ててユニフォームに着替え始めた—— リハビリステーションに行くと何故か騒がしい。見ると主任が数名の男達に取り囲まれているのである。「あれ? 一体何があったんだ?」一緒にやってきた近藤は不思議そうに眺める。その時、主任がこちらを見た。「里中! ちょっとこっちへ来てくれ!」「はい、何でしょう?」呼ばれて行くと、50代位の男性に声をかけられた。「里中さんですね? 我々はこういう者です」取り出したのは警察手帳である。「!」「少しお話したいことがあるので、お時間いただけますか?」里中は主任の顔を見ると、黙って頷かれた。「はい……大丈夫です」「ありがとう。ではついてきてください」   病院の外に連れ出されると入り口にはパトカーが止まっていた。「あなたを案内したい場所があります」パトカーに
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-03
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1-27 長井という男 1

「そうですか。やはりあなたはあの男をご存じなんですね」一旦、病室を出て同じ病棟の談話室へ移動すると一番年長の警察官が里中に声をかけてきた。「はい。俺が勤務している病院の自動販売機のオペレーターです」「あの男とは友人関係だったんですか?」「はい、友人です」「しかし、彼の方はそう思っていなかった可能性がありますね」警察官は何故か意味深なセリフを吐いた。「あの……一体それはどういう意味なんですか?」すると今まで2人の会話を聞いていた若い警察官が口を挟んできた。「君は何も気づいていなかったのか?」はっきり言わない警察官にしびれを切らした里中はイライラした調子で声を上げた。「さっきから一体何が言いたいんですか? はっきり言って下さいよ!」「ああ、これは失礼」若い警察官を制すると再び年配の警察官が謝ってきた。「この男はねえ、昨夜9時半頃に雑居ビルが立ち並ぶ歩道橋の下で頭部から血を流して倒れている所を発見されたんですよ」ゴホンと咳払いして警察官は続けた。「幸い、身元の確認はすぐに出来ました。携帯電話を所持していましたからね。それでちょっと面白いことが分かりましてね」「面白いこと?」里中は眉をひそめた。「彼の発信履歴を見ると、ここ最近ある一定の時間に何度も何度もあなたに電話をかけていることが分かったんですよ」「え?」一瞬何を言われているのか分からなかった。「あなたのところに最近毎晩のように電話がかかってきていませんでしたか?」「!」(まさか……あの無言電話の相手が……!?)親友だと思っていた長井がストーカーだったとは思いたくなかった。しかし現実は残酷だ。「この女性に見覚えありませんか?」警察官は1枚のスナップ写真を見せてきた。そこには隠し撮りしたかと思われる千尋の姿が映されている。「千……尋さん……」「やはりあなたは彼女を知ってるんですね。この写真、発見時に長井が所持していたんですよ。いや、実は我々は最近こちらの女性からストーカー被害の相談を受けていたんですよ。それで彼女の自宅付近を毎晩パトロールしていましてね」里中は黙って警察官の話を聞いている。「昨夜は2名体制でパトロールをしていたのですが、ボヤ騒ぎで二手に分かれて行動したんですよ。1名はこの女性の自宅付近に待機していたんですが、近所の家の窓ガラスが割られる悪戯があ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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1-28 長井という男 2

「ほう。あなた、犬の名前までご存じだったんですね」「勿論です! ヤマトはうちのリハビリステーションのセラピードッグだったんですよ。すごく賢くて大人しい犬なんです。だからそんな行動に出たなんて、正直驚いていますよ!」「……余程、ご主人を慕っていたんでしょうねえ」「はい、そう思います」里中は唇を噛んだ。「我々は警察官を1名病院に残してこれから長井の住むアパートに行ってきますよ。ご協力感謝いたします。病院まで送りますよ」警察官たちは立ち上がった。「あの……」里中はまだ椅子に座ったまま俯いた。「何です?」先程まで話をしていた警察官が返事をした。「長井は……またストーカー行為を続けるでしょうか?」「ああ、それは無いと思いますよ」こともなげに言う警察官に里中は不思議に思った。「どうして言い切れるんですか?」「……恐らく落下した時に第5頸椎を損傷したのでしょうね。もう一生車椅子生活になったらしいです」「え? 長井はもう二度と歩けない身体になってしまったんですか?!」あまりにも衝撃的な話しばかり続き、里中は眩暈がしてきた。「まあ、自業自得ってところもありますね。それに運が良かったじゃないですか? 下手したら死んでたかもしれないところを助かったのですから」若い警察官が口を挟んできた。あまりの言いように里中は頭に血が上ってしまった。「なんだってそんな言い方するんだ!! お前、それでも警察官か!?」気が付けばその警察官の胸倉を掴んでいた。「ぐっ……」胸倉を掴まれた警察官は苦しそうに呻いた。「まあまあ、落ち着いてくださいよ。今の言い方は確かにこちらが悪かったです。許してやってください、まだ年若い男なので」年配の警察官に止められて、里中は手を離した。「すみません……つい乱暴な真似をしてしまって」若い警察官はまだ苦しそうに喘いでいる。「……長井の目が覚めたら連絡貰う事は出来ますか? これでもまだ俺はアイツのことを親友だと思っているので」「ええ、分かりました」その後、里中はパトカーに乗せられ再び山手総合病院へと戻った――**** 千尋は中島から今日は仕事を休むように言われて自宅のリビングにいた。目の前には女性警察官が2名いる。1人はショートヘアの若い女性、もう一人はメガネをかけた30代位の女性警察官である。「この男性に見覚えがあ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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1-29 長井という男 3

「え……? ええ!?」千尋は改めて写真を見直した。浅黒い肌にがっちりした体形はスポーツマンタイプでとてもストーカー行為をするような人間には見えない。「もう安心して下さい。二度とこの男にあなたはストーカー行為をされる事はありませんから」若い警察官は笑顔で言った。「あの? それはどういう意味ですか?」「昨夜、あなたが飼っていた犬に追いかけられた長井はここから約2km程離れた場所にある歩道橋の下で頭から血を流して倒れていました。不審な点があったので警察病院に搬送されましたけど、頸椎を損傷してしまったらしく、もう二度と歩くことは出来なくなったそうです」メガネの警察官が代わりに答えた。「その話……本当ですか? この人が私をストーカーしていて、ケガで二度と歩けなくなったって言うのも……?」「ええ。後は本人の目が覚めてから事情徴収に入ります。まだ眠っている状態なので」「あの、それでヤマト……私の犬はどうなったのか分かりますか? 昨夜から帰って来ないんです」「申し訳ございません。長井が犬に追われていた情報はありますが、長井が発見された後の犬の目撃情報は無いんです」「そう……ですか……」千尋がうなだれると、若い警察官が慌てたように言った。「あの、私も犬を探すの手伝いますので元気出してくださいね!」「ちょ、ちょっと……」慌てたようにメガネの警察官が止めようとしている。「大丈夫! 警察官は善良な市民の味方です!!」どうやらこの女性警察官は熱意にあふれていたようである。 女性警察官たちが帰ると、千尋は本当にこの家に一人きりになってしまった。窓の外を眺めてもヤマトの姿は見えない。ストーカーの恐怖は去ったけれども、ヤマトのいない寂しさには耐えられない。「ヤマト……何処に行ってしまったの? 早く帰って来てよ……」千尋は誰もいない部屋でカーテンに顔をうずめて一人泣き続けていた——**** その頃、警察病院ではちょっとした騒ぎになっていた。「おい、長井が目を覚ましたって?」先程里中と話をしていた年配の警察官が病室に向かって足早に歩いている。「はい、警部補。警察病院から連絡が入ったんですよ。長井の目が覚めたけど、ちょと困ったことがあったと言って」若い警察官も必死で後を追いながら説明する。「何だ、困ったことと言うのは? お前も長井に会ったんだろう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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1-30 焦燥 1

「一体、どういうことなんですか!?」病室の廊下に出ると、警部補は担当主治医に詰め寄った。「あ、あの。私の専門は外科なので説明を求められても困るのですが……」白髪交じりの男性医師は壁際に追い詰められている。「それじゃあ専門の医師をここに連れて来て下さいよ! あのままじゃ取り調べなんて出来っこないじゃないですか!」「そんなことを言われましても本日は心療内科の医師が不在の日なので……」「はあ? 病院は24時間いつでも対応出来るものじゃないんですか? 我々警察だって24時間いつでも対応できる準備をしてるんですよ!?」「医者と警察を一緒にしないで下さい!」「何だと!」「警部補、落ち着いてください! すみません、先生。血の気が多い方なので……」若い警察官は必死になって2人の間に入って止めに入った。「とにかく家族に連絡を取って下さい! 私たちだって困っているんです。精神は幼児返りしてしまっているし、頸椎損傷と言う大怪我を追ってるので今コルセットで固定していますが、これから大きな手術をしなくてはならないので親族の同意書が必要なんですから!」医師は大きな声をあげた——**** あの騒ぎから約1時間後― 病院の談話室で警部補と部下はコーヒーを飲んでいた。「それにしても長井には驚きましたね。自分の犯した罪を逃れる為に演技をしてるんでしょうか?」部下が質問してきた。「いや。それは多分無いな。とても演技している様には見えなかった。」つい先ほどまでの長井とのやり取りを警部補は思い返した……。****『長井、里中って男を知ってるか? お前の親友だと言ってるが?』警部補は長井の枕元に椅子を持って来ると、そこに座り質問した。『誰? 里中って人はどんな人なの? 親友って……お友達のこと?」『お前が出入りしていた病院のリハビリスタッフの男だ! ずっと嫌がらせの無言電話をかけていただろう!?』『うう……このおじちゃん、怖いよお……』長井は再び目に涙を溜めながら怯えている。『それじゃ質問を変える。この人物は分かるだろう? お前がストーカーしていた女性だ』里中が持っていた千尋の写真を見せると長井の目の色が変わった。『やはり、今まで演技していたな!?』しかし……。『うわ~綺麗なお姉ちゃんだねえ。僕、大人になったらこのお姉ちゃんと結婚したい! ねえ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-05
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1-31 焦燥 2

 仕事が一段落し、遅めの昼休憩に入ろうとしていた里中を主任が呼び止めた。「里中、ちょっといいか? お前に電話がかかってきているんだが」「電話の相手って誰なんですか?」里中は受話器を受け取りながら尋ねた。「警察からだよ」「え?」(まさか長井の目が覚めたのか?)逸る気持ちを抑えながら里中は受話器に耳を当てた。「お電話替わりました、里中ですが。……はい……はい。え!?……そうですか。分かりました。後程そちらに伺います。え? 迎えに来てくれるんですか? ありがとうございます。連絡お待ちしています」やり取りの様子を野口はじっと見つめ、里中が受話器を切ると尋ねた。「警察の人、何だって?」「長井の目が覚めたそうです。俺にどうしても今日会わせたいって言ってきました。仕事が終わる時間に迎えに来るって言われました」「そうか……」「俺、まだ信じられないんですよ。あの長井がストーカー行為をしていた挙句の果てに、二度と歩けない身体になってしまうなんて。どうしてあんな事をしたのか、はっきりアイツの口から聞きたいんです。千尋さんにも怖い思いをさせ、俺にも嫌がらせの無言電話をかけてきてるのに、どうしてもアイツを憎むことが出来なくて……。俺って変ですか?」野口は黙って聞いていたが、やがて口を開いた。「やっぱり里中、お前っていい奴だな」「え?」「考えても見ろ、普通の人間だったら自分が親友だと思っていた相手にこんな裏切行為をされれば憎しみに替わると思うぞ? でもお前は、そうはならなかった。純粋な人間だってことだよ」「い、いや……単純馬鹿なだけですよ」里中はポリポリと頭を掻く。「里中、お前今日は早めに上がっていいぞ。警察にも連絡いれておいたらどうだ? 警察の方でも早めに協力して欲しいと思っているだろうから。17時にはあがっていいからな」「はい! ありがとうございます」野口に言われ、里中はあの後警部補に連絡を入れた——****—―17時仕事を終えた里中が職場から出てくると、既に病院の前にパトカーが待機していた。「里中さんですね? どうぞお乗りください」運転していたのは初めて見る警察官だった。「ありがとうございます」お礼を言って乗り込むとパトカーが走り出す。里中は窓の景色を眺めながら千尋のことを考えていた。「すみません、電話をかけてもいいですか?」
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