Semua Bab 君が目覚めるまではそばにいさせて: Bab 71 - Bab 80

131 Bab

3-7 渚の幼馴染 1

「あ……」渚は咄嗟に身を翻して逃げようとした。「おい! 待てよ!」茶髪の若い男はあっという間に渚の腕を掴んで捕まえた。「何で逃げようとするんだよ。半年以上も行方をくらましておいて。俺が今までどれ位お前のこと探し回ったのか分かってるのか? スマホも繋がらない、アパートに行っても解約されていたし」渚は俯いたまま黙っている。茶髪の男はため息をついた。「おい、ちょっと顔かせよ」そして渚の腕を掴んだまま歩き出した。****  渚と茶髪の男はファミレスの椅子に向かい合って座っていた。冷えて生ぬるくなったコーヒーが2つテーブルに置かれている。渚はテーブルの下で両手を握りしめて俯いていた。男は腕組みをして渚を睨んだ。「おい、渚。何とか言えよ。さっきから黙ってばかりで。お前、もしかして俺のこと忘れちまったのか?いや、そんなはずないよな? 俺を見て逃げ出そうとしたんだから」それでも渚は黙っている。「う~ん。どうもさっきから変な感じがするんだよな……。俺の知ってる以前のお前と今のお前、全く雰囲気が違って見えるんだが……。お前、渚に変装した偽物か?」「偽物じゃ……ないよ」ようやく渚は口を開いた。「偽物じゃ無いって言うなら俺の名前言えるはずだ。俺の名前は?」「橘……祐樹」「言えるなら、渚で間違いないかもな。だけどな! 絶対お前おかしいぞ? そんなキャラじゃ無かっただろう? なんかビクビクしてるし、本来のお前は喧嘩っ早くて血の気の多い男だったじゃないか。目つきだって凄く悪かったぞ?」「実は僕は……一部記憶が無くなってしまったんだ。どうして記憶を無くしたのかも覚えてなくて」声を振り絞るように渚は言った。「はああ? 僕だあ!? やめてくれよ! お前から僕なんて言葉を聞くと鳥肌が立ってくる!」祐樹は両肩を押さえて震えた。「ごめん……」「だ~から! そんな言葉遣いするんじゃねえ!」祐樹はドン! とテーブルを叩いた。「もう、この話し方が身について今更変えられないよ……」「あ~っ! もういい! 大体お前記憶が欠けてるんだもんな。仕方が無いか」祐樹はため息をついた。「あれ? そういやお前、あの事件がきっかけで仕事辞めたんだよな? それで部屋も引き払ったのか?」「う、うん。まあそんなところかな?」「じゃあ、今は何処に住んでるんだよ?」「知り合
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-03
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3-8 渚の幼馴染 2

「お仕事お疲れ様、千尋!」千尋が店を出ると笑顔で渚が待っていた。「いつも迎えに来てくれなくても大丈夫なのに」「駄目だよ、夜の一人歩きは危ないから。何より僕が心配で家で待ってなんかいられないよ」渚は首をブンブン大袈裟に振る。「それじゃ、帰ろう?」いつものように渚は手を差し出してくる。「う、うん……」千尋は遠慮がちに手を伸ばすと、渚は当然のようにしっかりと指を絡ませて握ってくる。「今夜はねえ、千尋が大好きなチーズフォンデュだよ。美味しそうなフランスパンも買ってきたから。後、美味しそうなかぼちゃが売ってたからパンプキンスープも作ったんだよ」パンプキンスープは千尋が大好きなスープだった。「うわあ、本当? 今からとても楽しみだな~。あ、ところで渚君が買いたがってた家電は買えたの?」「それが……これだって言うのが中々見つからなくて結局何も買わないで帰って来ちゃったよ。今度は二人で一緒に見に行かない? なるべく千尋のお休みの日に僕も休みを取れるように調整するから」「うん、そうだね。それもいいかも」二人は笑顔で手を繋いで家に向かう。その姿はまるで恋人同士か、新婚夫婦のようだった――****「ああ、美味しかったあ。やっぱり渚君は料理が上手だね。ご馳走様」渚の手作り料理を食べ終えた千尋は、すっかり満足していた。「片付けは僕がやるから千尋はお風呂入っておいでよ」渚が食器を片付けながら声をかける。「そんな、渚君が料理を作ってくれたんだから片付けは私がやるよ」「いいから、いいから」その時、突然渚のスマホが鳴った。「? 珍しいね。渚君のスマホが鳴るなんて」「うん、そうだね」渚はスマホをチラリと見たが電話に出ようとしない。その顔は若干青ざめている。「出なくていいの?」「うん。いいんだ。迷惑電話かもしれないし」「それもそうだね」「ほら、千尋はお風呂だよ」渚はバスタオルとタオルを千尋に手渡した。「う・うん……。それじゃ入って来るね」千尋は着替えとバスタオルを持って、風呂場へと向かった—―「ふ~……いいお湯」お湯につかりながら千尋は渚のことを考えていた。(何だかあの電話の後、様子がおかしかったようにみえたんだけどな……)千尋は渚のことが気がかりでならなかった――その頃渚は食器を片付けながら、スマホを気にしていた。すると、案の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
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3-9 渚の幼馴染 3

「もしもし…」電話口から祐樹の声が聞こえてきた。『あ、渚! やっと電話に出たな? さっきは何で電話に出なかったんだよ?』「電話がかかってた時、居候相手が側にいたからだよ」『何だよ、別に構わないじゃないか。それ位……ん? 待てよ。もしかして居候相手って女か?』「……うん……」『お前、まだ懲りてないのか? あんな目に遭ったって言うのに。まだあの女と別れてなかったのか? ったく……あんな女の一体どこがいいんだか俺には理解出来ないぜ』「違う、全然別の人だよ」『そうなのか? まあ俺が口出ししてもしょうがない話だけどな。付き合うならもっとまともな女を選べよ』「彼女は祐樹が思っているような人じゃないよ」『まあ、いいさ。ところでお前のメールアドレス聞くの忘れたから、今から俺のアドレス教えるから必ずメールよこせよ。俺のアドレスは……』「ふう」ようやく渚は電話を切った。そこへ風呂から上がった渚の所へやってきた。「あ、千尋。お風呂あがったんだね」「うん、ごめんね。先にお風呂入っちゃって。渚君もお風呂どうぞ?」「そうだね。それじゃ入ってくるよ」 渚が風呂に入りに行くと、千尋は録画しておいたドラマを観るためにテレビをつけてソファに座った。近くには渚の携帯が置いてある。その時、突然渚の携帯が鳴った。「あれ、さっきも携帯なってたよね……?」悪いとは思ったが着信の相手を見てみた。「橘……祐樹? 誰だろう? 職場の人かな……?」携帯電話はしつこく鳴り続けている。(でも勝手の人の携帯電話に出るなんて絶対にやっては駄目なことだからね)千尋はそう自分に言い聞かせ、そのままにしておいた。その後、何度も携帯は鳴り続けた。(どうしよう……? もしかしたら急ぎの用なのかなあ? 渚君に知らせてきた方がいいかな? でもお風呂に入ってるし) その時、渚が風呂から上がってきた。「あ! 渚君。さっきからずっと何回も携帯に同じ人から着歴があるんだけど」「え……? また?」渚はうんざりした表情を浮かべる。「またって……一番初めにかかってきた電話も同じ人なの?」「うううん違うよ。でも千尋がお風呂に入ってるときに彼から電話かかってきたから話はしたよ」「またかかってくるかもしれないから、渚君から電話してみたら?」「いや、大丈夫だよ。大した用事じゃないと思うから」「でも
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-05
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3-10 疑いの目 1

「はあ……」 里中はリハビリステーションに貼ってあるカレンダーを見てため息をついた。「どうしたんだ? カレンダー見て、ため息なんて」近藤が声をかけてきたが、あることに気付いた。「ははあん。そう言えばバレンタインがもうすぐだったよなあ? あれ~何曜日だったけ?」「……金曜日ですよ」「そうだったっけな! う~ん。金曜日か……。残念だったな。まあ、元気出せ」近藤は里中の背中をバシバシ叩いた。「先輩、痛いです……。そういう先輩はどうなんですか? って聞くまでも無いですよね」「まあな~毎年バレンタインは彼女からの手作りチョコを貰ってるな。可哀そうな後輩の為に1個位御裾分けしてやてもいいぞ?」「結構ですよ、せいぜいそうやってのろけてればいいじゃないですか」里中はプイと背中を向けると備品の点検に行った。****「ねえ、千尋ちゃん。去年は誰にもバレンタインにプレゼントあげていなかったみたいだけど、今年は渚君にあげるんでしょう?」渡辺が客足が途絶えた時に千尋に話しかけにきた。「そうですね~。渚君にはいつもお世話になってるし、バレンタインのプレゼントは勿論あげるつもりですよ。あ、勿論渚君以外にも他の男性達にもあげる予定です」「ああ、義理チョコね?」「はい。原さんやリハビリステーションのスタッフの方々にもあげる予定です。でもリハビリの人達は人数が多いから、手作りチョコを箱に入れて皆さんでって形にしようかと思ってます」「でもバレンタインの日は病院に行く日じゃないけど?」「そらなら大丈夫です。メッセージカードを添えて渚君に持って行ってもらうようにお願いします」けれど——渚にだけは特別にバレンタインのプレゼントを用意しておいた。3週間以上前から千尋は内緒で渚の為に手編みの手袋を編んでいたのである。あと少しで完成する予定だ。(渚君、喜んでくれるかな……)そのことを考えると、自然と笑みがこぼれた。「なあに? 青山さん。楽しそうな顔して」そこへ中島が会話へ割って入ってきた。「そうよ、どうしたの千尋ちゃん。あ、もしかして……渚君のこと考えてたでしょう?」「そ、そんな……。私、笑ってましたか?」「「笑ってた」」中島と渡辺が声を合わせた。「ま、いいんじゃない? 二人は恋人同士なんだから」中島がサラリと言った言葉に千尋は胸がズキッと痛んだ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
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3-11 疑いの目 2

 渚が電話で話をしている様子を里中は偶然目撃していた。丁度使用済みのリネン類をカゴに入れて中庭から入ってきた業者に手渡している時に、渚が電話で会話している声が風に乗って聞こえてきたのである。(え……? 明日11時に誰かと会うのか? う~ん……気になる!)里中は業者にリネンを全て手渡した後に自分のシフトを確認すると、近藤が休みになっている。(よし、代わって貰おう!)その後、昼休憩から戻ってきた近藤を拝み倒して何とか里中は翌日の休みをもぎとったのだった——**** その日の夜―—「ごめん、千尋。僕明日は早番だったのが遅番に変更になったんだ。だから帰り遅くなってしまうかも」二人で向かい合って食事をしている時に渚が言った。「え? そうだったの? 随分急な話だね」「うん、そうなんだ。どうしても遅番の人手が足りないらしくて……本当にごめん。明日は二人で仕事帰りに映画を観に行く予定だったのに」渚は頭を下げてきた。「大丈夫だよ、だって明日行こうと思ってた映画はまだ始まったばかりだから当分の間は終わらないもの。また今度一緒に行けばいいよ」「でも……」「気にしなくていいってば。私も明日は帰宅したらすることを思いついたから」「え? 何思いついたことって?」「フフフ……。内緒。今度教えてあげる」千尋は意味深に笑った——****——翌朝 今朝の渚も早起きだった。千尋が着替えをして起きてくると、もう朝食の準備をしていた。「おはよう、渚君。今日も早いね。たまには私が準備するよ?」「いいんだよ、だって僕が千尋の為にしてあげたいだけなんだから気にしないでっていつも言ってるよね」今朝のメニューは久しぶりの和食だった。大根と油揚げの味噌汁に、出汁巻き卵に納豆、漬物がテーブルの前に座った千尋の前に並べられる。「うわあ、今日も美味しそうな朝ご飯だね」千尋は笑顔になる。「うん。さ、食べよ?」渚も千尋と向かい合わせに座ると、二人で手を合わせた。「「いただきます」」そしていつも通りの食事が始まった……。「渚君、今日シフト変更になったんだものね?」食事をしながら尋ねる千尋。「うん。遅番だから少しゆっくり出るよ。その代わり帰りは遅くなっちゃうんだけどね」「それじゃ今夜の夜ご飯は私が作るから楽しみにしていてね。え~と……何がいいかな?」「僕は千尋が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-07
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3-12 疑いの目 3

 里中は駅の改札付近で人混みを避けるように渚を待ち伏せしていた。自分がストーカーまがいの行為をしているのは自覚があったが、どうしても渚が話していた電話の相手が気になってしかたなかったのだ。(もし、今日会う相手が女だったら偶然を装って二人の前に現れて関係を問いただしてやる)そんなことを考えていると、渚が駅に現れた。自動改札機を潜り抜け、ホームへと降りていく。里中も慌てて後を追った。車内は混雑していて、渚は吊革に掴まって窓の外を眺めている。幸い人混みに紛れて里中には気が付いていない様子だ。(確か、国立公園って言ってたような気がするけど……。やっぱり公園で会うなんて相手は女か?)「次は国立公園前~国立公園前~」電車のアナウンスが流れ、駅に到着すると渚は素早く降りた。里中も見失わないように急いで降りると、物陰に隠れながら後を付けていく。**** 国立公園に着くと、渚は入園切符を買って中へと入って行く。里中も同じように切符を買うと後に続いた。渚は公園の真正面にそびえ建っている時計台に行くと、その真下に設置してあるベンチに腰を下ろした。それを遠目から見つめる里中。「ふ~ん……あそこが待ち合わせ場所なのか。相手はまだ来ていないようだな?」そこへ、さほど年齢が変わらない若者が渚に向かって歩いてくるのが見えた。「うん? もしかしてあの男が待ち合わせした人物なのか?」里中は見つからないよう渚に近づき、凝視した。男は茶髪にダウンジャケットを着ている。****「よお、渚。悪い、待ったか?」祐樹は渚の隣に腰かけた。「いや、僕もついさっき来た所だから大丈夫だよ」「ふ~ん……。ならいいけどな」「それより僕に話って何? わざわざこんな場所まで呼び出すなんて、そんなに大事な話なの?」「いやあ。ただ俺はもう一度、どうしてもお前とじっくり話をしたかったから呼び出しただけさ」「え? まさかそれだけで僕を呼び出したの? だったら帰るよ」立ち上がろうとする渚を祐樹は慌てて腕を掴んで引き留めた。「まあいいから座れって。う~それにしてもお前の言葉遣い慣れないなあ……ナヨナヨした話し方で気持ち悪いぜ」「……」しかし、渚は返事をしない。そこで結城は、ゴホンと咳払いした。「お前、女と暮してるて言ってたよな? 本当に妙な女じゃないだろうな? 大体昔からお前は女を見る
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-08
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3-13 話し合い 1

 渚と祐樹が同時に里中の方を見た。「何だ、お前……?」祐樹は渚を放すと里中を見て首を傾げる。「間宮は俺の友人だ。一体何をしてるんだ? お前こそ、誰だ?」「里中さん……? どうしてここに?」渚は驚い里中を見つめていた。「人に物を尋ねる時はまず、自分から名乗るべきじゃないか?」祐樹はフンと鼻を鳴らす。「俺は里中裕也。お前は?」「橘祐樹。渚の幼馴染だ」「え? 間宮の幼馴染……本当なのか?」「嘘言ってどうするんだよ。疑うなら渚に聞けよ」祐樹は渚に視線を移した。「うん。祐樹は僕の幼馴染だよ。しばらく会っていなかったんだけど、この間偶然再会したんだ」「勝手にいなくなったのはお前の方だろう? 渚。立ち話も何だ、どこか場所変えるぞ」祐樹の言葉に、渚は顔を曇らせた。「あの……僕はもう帰りたいんだけど……」「駄目だ、話は終わっていない」首を振る祐樹に里中は尋ねた。「……俺も同席してもいいか?」「好きにしろよ」****  3人は国立公園の中に併設されているカフェにいた。丸いテーブルに男3人座って互いの様子を伺っている。「「「……」」」暫く3人は無言だったが、渚が口を開いた。「ところで、里中さん。どうして今日はここにいたんですか?」急に話を振られて焦る里中。(う……ヤバイ。理由を考えてなかった。ど、どうしよう……)その時、里中の眼に国立公園の温室で開催されているサボテンフェスタのポスターが目に入った。「お、俺はサボテンを買いに来たんだ! ほら、あそこにもポスターが貼ってあるだろう?」「へえ~里中さん、サボテンが好きだったんだ。ちっとも知らなかったよ」「おう! そうだ、知らなかっただろう?」しかし、自分で言い出したものの里中は後悔していた。(あ~何がサボテンだ! もう少しまともな嘘つけば良かった!)「サボテンねえ……? 里中……だっけ? お前らはいつから知り合いなんだ?」祐樹は疑しい目で里中に尋ねる。「俺達は知り合ってそんなに経っていない。ここ2か月ってところだ」「僕たちは同じ敷地内で働いているんだ」「敷地内? それってお前も飲食店で働いてるってことか?」「いや。俺と間宮が勤務しているのは病院だ。俺は理学療法士で間宮は病院内にあるレストランで働いてる」「へえ~。レストランで働いてるって話は本当だったんだな?」「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-09
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3-14 話し合い 2

「だから、俺は渚に言ったんだ。お前は誰だって? 渚の知り合いで整形でもしたのか? 何たってこいつ顔だけはいいからな」渚は下を向いて歯を食いしばって肩を震わせた。「ち……違う。僕は……」「おい、はっきり言え! やっぱり渚の偽物か?」祐樹は再び怒鳴りつけた。「間宮、どうなんだよ? まさかお前、本当に……?」すると渚は顔を上げてはっきりと答えた。「僕は渚だよ。間宮渚、他の誰でもないよ」「なあ、間宮がここまで自分は渚だって言ってるのに、何を疑ってるんだ? だって姿も声もお前が知ってる間宮と変わりないんだろう? そこまで疑う根拠は何処にあるんだ?」里中は祐樹に尋ねた。「犬だよ」「は?」「だから、渚じゃないって疑ってる根拠は犬だってことだよ。お前は知らないだろうが渚は昔から犬をずっと嫌っていた。高校の時は近所で飼われている犬が煩いと言って石を投げつけて怪我をさせたことだってあるんだぞ? そんな男が犬を『可愛い』なんて言うと思うか?」「え……それだけの理由でか?」里中は呆れてしまった。「…」渚は黙っている。「何だよ、それだけの理由じゃ駄目なのかよ?」何か文句でもあるのかという目で祐樹は里中を見た。「いやいや、それだけの理由で偽物だって決めるのはあまりに変だって。第一突然昨日まで大嫌いだった食べ物が突然今日になって好きになるってことだってあるだろう?」渚の肩を持つわけでは無いが、あまりに無茶苦茶な理由だと里中は思った。「ふん、そこまで言うならもういいさ。今日の所は引き下がってやる。けどな、絶対俺はお前の正体を見破ってやるからな?」祐樹は、椅子から立ち上がった。「まだ僕を疑ってるの?」目を伏せる渚。「え? お前、帰るのか?」里中が尋ねた。「ああ、俺はこれから仕事なんだよ。え~と、お前何て名前だったっけ?」「里中だ。里中裕也」「じゃあ、里中。またな。そうだ、お前らに名刺渡しておくわ」祐樹は胸元のポケットから名刺カードを取り出して二人に渡した。「ショットバーBackus?」名刺を受け取った里中は読み上げた。「お前、ショットバーで働いてるのか?」「祐樹でいいぜ。雇われだけどな、夜だけバーテンとして仕事してる。ちなみに夕方から20時までは小中学生の塾講師をしてるんだぜ?」「ええ!? 塾の講師をしてるのか!」「何だ? そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-10
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3-15 話し合い 3

 後に残された二人は暫く黙っていたが、やがて渚が口を開いた。「今日はありがとう、里中さん」「え? 何が?」「里中さんがいてくれなかったら、見逃してもらえなかった」「間宮、お前……本当に間宮なのか?」「うん。僕は間宮渚だよ。間違いなくね」渚は寂しそうに笑った。「そっか……お前がそう言うなら、俺は信じるよ」「ありがとう」「ところで、これからお前はどうするんだ?」「実はね、今日、本当は仕事だったんだ。けれど急に祐樹に呼び出されたから臨時で休みを貰ってここに来たんだよ。でも千尋に心配かけさせたくなかったから、今日は仕事だって嘘ついてきたんだ。まだ家に帰る訳にはいかないし、何処かで時間潰してから帰るよ」「そっか……分かった。じゃあ俺も行くよ」渚も帰ろうと荷物を持った時に渚が声をかけてきた。「そうだ、里中さん。サボテン買いに行くんですよね?」「え? あ、ああ。そうだな」(やべ~サボテン買いにきたって話すっかり忘れてた!)「僕にも今度お勧めのサボテンあったら教えてくださいね?」渚は笑顔で言った。「お、おう! そうだな」里中は引きつった笑いを浮かべるのだった。**** 渚と一緒に店を出た里中であったが、やはり渚のことが気になって仕方がない。(間宮が家に帰るまで、ちょっと後をつけさせて貰うかな?)里中はどうしても渚を疑う祐樹のことが頭から離れずにいた。今日、渚の後をつければ何か情報が得られるかもしれないのではと考えたのである。  前を歩く渚にバレないように里中は慎重に尾行を始めた。渚は駅に向かって歩いている。そして駅に着くとそのまま電子マネーで改札を通ってホームで電車を待つ。「やっぱり、ただ家に帰るだけなのか……?」柱の陰から渚の様子を伺う里中。やがてホームに電車が到着し、ドアが開くと渚は乗り込む。里中も慌てて二つ隣の入り口から乗り込んだ。そして里中の予想通り、渚は地元駅で降りたのである。「やっぱりこのまま帰るのか……?」しかし予想に反して、渚はあるバス停に向かって歩き出してた。「え? 間宮、一体どこへいくつもりなんだ?」里中も人混みに紛れながら渚が並んだバス停に一緒に並んだ。バスはかなりの長い列が出来ている。(一体、このバスは何処へ行くバスだ?) バスは意外に早くやってきた。バス停に並んでいた里中は何処に行くバ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-11
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3-16 バレンタインのプレゼント 1

——2月14日 今朝の千尋は渚よりも早起きをして朝食とお弁当の準備をしている。お弁当はサンドイッチ、朝食は野菜スープにボイルしたウィンナーにスクランブルエッグとスコーン。準備していると渚が台所にやってきた。「おはよう千尋。まさかお弁当と朝ご飯の準備してくれてたの?」渚が目を丸くする。「うん。たまには私が用意しようと思って。丁度良かった、渚君に渡しておきたい物があるんだ」千尋は隣の部屋から紙袋を持って来て渚に手渡した。「これ、バレンタインのプレゼント。良かったら受け取って?」「え? 僕に?」紙袋の中身を取り出すと、そこには紺色の手袋が入っていた「この手袋ってもしかして……手作り?」「うん、気に入ってもらえるといいんだけど」千尋が照れたように言う。「気に入るも何も、僕の一生の宝物だよ! ありがとう、大事にするよ!」渚は手袋を握りしめて嬉しそうに笑った。「大事にしてもらえるのは嬉しいけど、ちゃんと使ってね?」「うん、早速今日から使わせてもらうよ」渚は手袋をはめてみた。「すごく暖かいね。僕もホワイトデーに何か千尋にプレゼントさせてね?」「その気持ちだけで、いいよ。それより朝ご飯食べない?」「うん、そうだね」「「いただきます」」いつもの朝食が始まった。「うん、このスコーンすごく美味しいね。どうしたの?」渚がスコーンを食べながら尋ねた。「これはね、前に仕事が休みだった時に生地を作って冷凍しておいたの。良かった、渚君の口にあったようで」「千尋の作る料理は何でも美味しいよ。今日のお弁当楽しみにしてるね」「うん、期待に添えられると良いけど」 食後のコーヒーを飲みながら千尋が言った。「あのね、渚君にお願いしたいことがあるの」「何? お願いって?」「これなんだけど」千尋は紙バッグを渚に渡した。「これは何?」「手作りチョコが入ってるから私の代わりにリハビリステーションのスタッフの人達に渡してきてくれる? あ、勿論渚君の分もあるからね」「うん、大丈夫。ちゃんと渡してくるよ」渚は紙袋を受け取るとニッコリ笑った——**** 「はあ~」患者のマッサージを終えた里中がため息をついた。頭の中からは、病院のベッドで眠っている渚の顔が離れられない。あの日はあまりのショックに自分がどうやって家に帰ってきたのかも覚えていない位だった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-12
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