その時——静かな部屋に、突然スマホの着信を告げる音楽が鳴り響いた。「キャッ!」千尋は突然の音楽に驚き、肩をすくめた。「な、なに……? このスマホの音は? 私のじゃないし……」一体どこから聞こえてくるのか? 千尋はスマホを探すと、ベッドサイドのテーブルの引き出しから鳴っていることに気が付いた。恐る恐る引き出しを開けると、見知らぬスマホから着信を知らせる音楽が鳴り続けている。相手は……。「橘祐樹? 誰なの?」けれど怖くて携帯に出ることが出来ない。そのうち、相手も電話をかけ続けてるのが面倒になったのか、それとも留守番電話に切り替わったのか、音がやんだ。それから程なくして今度はメールの着信を知らせる音が鳴った。「メールだけなら……いいよね……?」千尋は恐る恐るメールを開いた。『おい、どういうことなのかちゃんと説明しろ。渚の目が覚めたと病院から連絡があったぞ。お前もしかして本当に消えてしまったのか? もし消えていないなら俺に連絡よこせ』「え……? 渚……?」渚——どこかで聞いたことがある名前だ。その名前を呼ぶだけで胸が締め付けられるような切ない気持ちがこみ上げてくる。「この人は渚っていう人物を知ってる……? 渚……?」すると突然千尋の目から涙が溢れてきた。渚という人のことを知りたい、会って話をしてみたい。スマホを手に取ると、先程のメッセージの相手に千尋はメールを打った。『初めまして、私は青山千尋と申します。このスマホの持ち主である渚という人物のことでお話聞かせていただけませんか? よろしくお願いいたします』すると間髪入れずにすぐに携帯が鳴った。今度はすぐに電話に出た。『もしもし、青山さんですか? 俺は橘祐樹と言う者です』男の声が受話器越しから聞こえてきた。「はい、青山です。あの、橘さんにどうしてもお聞きしたいことがあるのですが……渚と言う人物をご存じなんですか?」『え!? まさか、本当に……!』相手がかなり衝撃を受けている。「橘さん、教えてください」千尋は食い下がる。『え~と……。かなり込み入った話になるので青山さんがよければ何処かで会って話したいんだけど……大丈夫ですか?』「はい、大丈夫です」**** 祐樹は地元駅前にあるファミレスを指定してきた。一番窓際の奥のテーブル席で待つように言われている。先程から千尋は落ち着
Terakhir Diperbarui : 2025-05-23 Baca selengkapnya