「蓮司は、精神的にかなり参っていたんじゃなかったか。心理カウンセリングまで受けていたんだろう。もう平気になったのか」祥平の問いに、美佐子は書類を探しながら答えた。「ええ、見た感じではすっかり元気よ。以前と変わらないくらいだったわ」「回復がそんなに早いのか。おじ様のことで受けたショックはもう抜けたのか」祥平は自分で言いながらも、蓮司の不調は突然だったが、治るのもまた突然すぎるのではないかと思っていた。美佐子はあの日のことを思い出した。娘が自分でお粥を作って持っていった日のことだ。美佐子は病室の中には入らなかったというが、それでも蓮司が声を上げて泣くのを聞いたのだ。心を閉ざしていたはずの人間が、涙を流すほど感情を爆発させた。あの短い間に、何が起きたのかは分からない。きっと娘が蓮司に何か話したのだろう。美佐子は今になってそう察した。そうでなければ、あの時、病室に残るなどと言うはずがない。そう思うと、美佐子は小さくため息をついた。蓮司がようやく自分の殻から抜け出せたのが、娘のおかげだとして、自分はいったいどうすればいいのか。まさか、それを娘の手柄だと喜べるはずもない。美佐子は、蓮司が娘にまとわりつくような目を向けていたことを思い出し、心の底から願った。蓮司が立ち直った理由が栞でありませんように。自分は二人に、もう少しも関わってほしくなかった。美佐子が書斎で書類を探している頃、リビングでは――美佐子が出ていくやいなや、蓮司もすぐキッチンのほうへ移動した。キッチンのガラス戸がまた開き、理恵が中へ入っていく。蓮司は立ち止まって二秒ほど中をのぞいたが、結局は身の程をわきまえ、自分から声をかけることはしなかった。視線を戻すと、聡が黙々とさやいんげんの下処理をしている。そこで蓮司は挨拶もせずに近づき、そのまま理恵が使っていた小さな椅子に腰を下ろした。シャツの袖をまくり、ボウルの中のまだ処理されていないさやいんげんを手に取る。聡のやり方を見ながら、静かに真似を始めた。その様子を見た聡は、無表情のままちらりと一度だけ視線を向けた。蓮司は見られているのを知っていたが、顔も上げなかった。男二人はこうして奇妙なほど静かで、それでいて妙に調和した空気の中、互いに干渉しなかった。そこへ理恵が戻ってきて、自分の席がどこ
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