出口の手前にはグッズ売場があり、迷うことなく私はそこに立ち寄った。特別展があるときは必ずグッズを見る。パンフレットを一冊と、あとはフラフラと物色だ。ふと、たくさんのポップで彩られ目を引くものがあった。 金印のレプリカのストラップだった。 私はそれを手に取る。小さく手のひらに収まるサイズなのに、思ったよりもずっしりとして重厚な作りになっていた。「ほしいの?」あまりにも凝視しすぎていたのだろうか、大野くんが不思議そうな顔をした。「うーん、迷ってる。だって使い道ないじゃない。だけど欲しくなっちゃうこの気持ちはなんだろう? 今、自分の物欲と戦ってるの」「あー、わかる、その気持ち。じゃあ俺がプレゼントするよ」言うが早いか、樹くんは金印ストラップを一つ取り会計に持っていこうとするので、私は慌てて止めた。「待って、自分で買うから」「俺が買ってあげたいの」「だけど……」譲らない樹くんは金印ストラップを放さない。困った私はもう一つ金印ストラップを手に取る。「じゃあ私は樹くんの分を買ってあげます」「俺? 別に姫乃さんほど金印ほしくないけど」「記念だよ。初デートの記念。あ、初なのは私だけか。ごめんごめん」自分の発言に照れ笑いすると、樹くんはキョトンとしたあと、ふわりと笑った。「うん、俺もほしい。初デートの記念」あ、そんな風にも笑うんだ。 なんて一瞬見とれてしまったことは内緒だ。 ドキンドキンと鼓動が速くなっているのは、気づかないふりをした。お互い会計を別々にしてから、金印ストラップを交換した。
Terakhir Diperbarui : 2025-06-20 Baca selengkapnya