そして更に不毛な押し問答(どこで食べるか)のあと、結局我が家へ上がってもらうことになり、私は今カツ丼を前にして少々悩んでいる。特盛カツ丼なのでカツは全部で四枚あるけれど、ご飯は普通盛りが二杯だ。三人で分けるには足りない気がする。私は冷蔵庫から冷やご飯の入ったタッパーを出しレンジで温め、そこに分けたカツをのせた。 ついでにキュウリとなすを塩揉みして、めんつゆをかけただけの即席漬物も添える。「うわぁ、美味しそう!」なぎさちゃんが喜びの声を上げるも、買ったものをうちの食器に盛り付けただけなので、少し複雑な気持ちだ。カツは確かに美味しそうよね。「市販品だから美味しいよ」「これは?」「これは私が作った浅漬け」なぎさちゃんは目を丸くして私を見た。 何だかとてもキラキラとした眼差しだ。「姫乃さんすごい。美人だし優しいし料理もできるし」「ええっ? そんなことないよ、これくらいなぎさちゃんもできるよ」「なぎさは卵焼きひとつ上手く焼けないからな」「余計なこと言わないで」「本当のことだろ」「樹のバカ!」突然始まる大野くんとなぎさちゃんの言い合いが面白くて、私はクスクスと笑った。「ふふふ、兄妹って賑やかでいいね」二人は意味がわからないといった顔をして、こちらを見る。「私は一人っ子だからそんな言い合いしたことなくて。それに毎日一人でご飯食べてるから、今日みたいな賑やかなの久しぶり。一緒に食べてくれてありがとう」私はカツを口に入れる。 何だかいつもより美味しい気がした。「姫乃さん、いつも一人でご飯食べてるんだ?」「うん」「ふーん」素直に返事をする私に向かって、大野くんはいやらしくニヤニヤと笑う。はっ! もしかしてもしかして、これって、彼氏がいないと言っているようなものじゃない?! やばっ。 私は慌てて口元を押さえた。「あの、えっと……」「じゃあ毎日一緒に食べましょう」一瞬何を言われているのか、わからなかった。 私は目を丸くして聞き返す。「え?」「買ってもいいし、俺が作ってもいいし」「お兄ちゃんずるい! なぎさも一緒に食べたい」「お前は家に帰れよ。母さんが心配するだろ」「むー。姫乃さん、たまには私も食べに来ていいですよね?」「えっ、う、うん」よくわからない流れに巻き込まれ、そのままなしくずし的に頷いて承諾してしまっ
Terakhir Diperbarui : 2025-05-22 Baca selengkapnya