どうしても気になってしまって、私は飲み会を早めに切り上げて樹くんの部屋を訪ねた。 ガチャリと玄関が開いて出てきた樹くんは、首にタオルをかけて髪の毛がまだ濡れている。どうやらお風呂上がりのようだった。タイミング悪かったかなと思い、私は袋を差し出し早口で言う。「今日ごめんね、一緒にご飯食べなくて。これ、お土産。じゃあ」「待って。上がってって」すぐに去ろうと思って背を向けたのに、腕をつかまれて私の足は止まる。「一緒に食べよ」「……うん」いいのかなと思いつつも、樹くんが私を部屋の中へと引きずり込む。 テーブルの上にはビールの空き缶が二本。 飲みかけが一本。「一人で飲んでたの?」「姫乃さんいないからやけ酒してた」「やけ酒って。でも私だって友達と出掛けることはあるよ。樹くんもそうでしょ? 明日は一緒にご飯食べよう?」樹くんは私から視線を外すと深く息を吐き出す。「なんか、俺だけ余裕ないなってやけ酒。姫乃さんのせいじゃない」「どうかしたの?」「別に」樹くんは缶ビールを手に取ると、一気にグビグビと煽った。「樹くん、飲み過ぎじゃない?」止めさせようと腕を引っ張ると、逆に手を掴み返される。そのまま見つめられ、その真剣な眼差しに心臓がドキン跳ねる。「なんか俺だけ子供みたいだ。姫乃さんが取られたみたいで悔しかった」「大げさだよ。祥子さんも真希ちゃんも、仲のいい同僚ってだけ」「わかってるよ。困らせてごめん」掴んでいる手に力が込められる。 ぎゅっと握られる手から樹くんの体温が伝わってくる。 あたたかくて優しい温もり。
Last Updated : 2025-07-24 Read more