遙花は、それまでの嗚咽をぴたりと止め、呆然と昴真を見上げた。「愛してない、って?どうして……どうして、あなたが私を愛さないのよ!」その叫びは、まるで地獄から響く獣の咆哮のようだった。彼女は、この男に青春のすべてを捧げた。身体も、子どもも——なのに。彼の言葉は、すべてを真っ二つに断ち切った。狂気じみた遙花の姿を見た瞬間、昴真の脳裏に、あの日——隣の別荘で、不倫した夫に向かって怒鳴り散らしていた女の姿がよぎった。彼はゆっくりと腰を屈め、遙花の顎を乱暴に掴んだ。その力は容赦なく、彼女の顎関節が今にも外れそうなほどだった。「お前なんて、何様のつもりだ?俺に愛される価値があるとでも?紬音が子どもを産めないから、仕方なくお前を利用したんだ。でなけりゃ、お前なんて、あの夜の次の日に消してた」彼の目に浮かんでいたのは、あの日の記憶。あの夜のパーティー、取引先に飲まされすぎて、彼はゲストルームで一晩休むことにした。酒臭いまま主寝室に戻れば、紬音が嫌がると思ったから。そして、目覚めた朝——隣には、裸の遙花がいた。昴真は激しい怒りと恐怖に襲われた。まさか、兄弟の妹である彼女が、自分のベッドに勝手に入り込むとは思いもしなかった。怒りに拳が震える一方で、心の底では紬音にこのことが知られたらどうしようという恐怖が膨らんでいた。もし彼女が知ったら、きっと傷つく……離れていってしまうかもしれない。その思いが頭を支配し、彼はただ一つ、「この女を処理しなければ」と考えた。だが、遙花は床に膝をつき、涙ながらに縋りついてきた。ちょうどその時、実家の両親から電話がかかってきて「そろそろ孫の顔を見せてくれ」と催促された。だが——紬音は、子どもを授かることができない身体だった。電話を切った後、昴真は一人、部屋で煙草を吸いながら夜を明かした。ぼんやりと煙の向こうに浮かぶのは、遙花の顔だった。代わりにあいつに産ませればいい。子どもさえいれば、体裁は保てる。出産後、香坂家に相応の利を与え、遙花を国外に出す。そして、その子を自分と紬音の子として育てる——完璧な計画だった。あの時までは。昴真の冷酷な一言に、遙花はその場で力を失ったように肩を落とした。彼が自分を側に置いていたのは、愛でも執着でもなかっ
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