二人は話をしながら病室のドアを開けた。病衣を着たお爺様は、背を向けていた。物音に気づき、ゆっくりと振り返ると、鄞の後ろに立っている静音を見て、目を丸くした。「お爺様」彼女が笑顔で挨拶するまで、お爺様は驚きのあまり、言葉を失っていた。お爺様は嬉しさのあまり、鄞を病室から追い出し、静音の手を握りしめ、「痩せたな......苦労したんだろう......」と言った。彼女は慌てて首を横に振り、彼の手を優しく叩いた。いくらなんでも、痩せたってことはないはずだ。黒木家から出て行く時、彼女は莫大な財産を持ち去っていたんだから。島の購入にかなりの金額を費やしたとはいえ、その後のリゾート経営では莫大な利益を上げていたのだ。今、何もしなくても、彼女の手元にある資産だけで一生暮らしていけるほどだった。「お爺様からいただいたお金で十分に暮らしています。苦労なんてしていませんよ」静音はベッドの脇に座り、お爺様に向かって笑顔で言った。「ほら、お爺様の大好物の魚のお粥。食べてみて」「ああ、嬉しい」お爺様は満面の笑みで、彼女がよそってくれたお粥を受け取った。良い香りが漂い、一口食べると、美味しさが口いっぱいに広がった。彼は何度も頷き、とても病人のようには見えなかった。お粥を食べ終えると、彼はベッドに横になり、静音の心配そうな顔を見て、手を振って言った。「歳を取ると、どうしても体が弱くなって、病気になりやすいんだよ。でも、大したことないから心配するな。ネットの噂は嘘だ。わしはピンピンしている。それより、お前はどうして急に帰って来たんだ?何かあったのか?」静音は慌てて手を振り、心配そうなお爺様を見て、罪悪感に苛まれた。お爺様は、幼い頃からずっと彼女を可愛がってくれていた。彼女が黒木家を出て行く時も、反対することなく、莫大な財産を譲ってくれた。おかげで、彼女は生活の心配をすることなく暮らすことができた。しかし、彼女は?鄞や他の人間から逃れるために、5年間も島に引きこもり、一度もお爺様のお見舞いに来なかった。彼女の罪悪感に気づいたのか、お爺様はため息をつき、優しく彼女の頭を撫でた。「静音、わしも後になって鄞がした馬鹿げたことを知ったんだ。それでお前がきっぱり出て行ったのも無理はない。これは黒木家の落ち度だ。だからこれからも、わしのために鄞の
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