桐島主任は「分かった」というようにわたしに頷いて見せ、電話の保留を切った。 「――お待たせしました。お客様には、『矢神は本日お休みを頂いています』と伝えて頂けますか? あと、『お約束のない来客はお取り次げない決まりになっております』と。……はい、よろしくお願いします」 主任がわたしの拒絶の意味を汲み取って下さってホッとした。受付の人をどうにか納得させてくれて、彼は受話器を戻した。 「……主任、ありがとうございました。ご無理を言ったみたいですみません」 「いやなに、部下を守ることも上司の大事な務めだからね。矢神さんの怯えようが何だか尋(じん)常(じょう)じゃなかったから、会わせない方がいいと判断したまでだよ」 「……そうですか」 主任に助けてもらえたことは素直に喜ぶべきなんだろうけれど、巻き込んでしまったことが本当に申し訳ない。 「宮坂って人、矢神さんが会いたくない相手なんだよね? 詳しい事情は訊かないけど、もし困ってるなら小川先輩に相談するといいよ。男の僕には言いづらいことも、女性同士なら話しやすいかもしれないしね。彼女は君の指導係だから頼って損はないと思うよ」 「はい、ありがとうございます。そうします。……あの、主任。このこと、会長には……?」 「君が報告してほしいって言うなら、僕からお伝え
Terakhir Diperbarui : 2025-06-12 Baca selengkapnya