「――ねえ麻衣、入江くん。今日の終業後さ、三人でゴハンとカラオケ行かない?」 それぞれの部署に戻るため、わたしたち三人は一緒のエレベーターに乗った。その中で、佳菜ちゃんがそんなことを提案してきた。「おー、いいな。行こうぜ。矢神、お前はどうする?」「えっと……、うん。わたしも行くよ」 いつまでもアイツのことにばかり囚われてはいられない。気の合う友だちと、パーッと気晴らしするのも悪くないかもしれない。元々人見知りの激しいわたしは大学の頃までそういうお誘いが苦手だったけれど、佳菜ちゃんとはこれからずっと仲良くしていきたいので、初めてお誘いに乗ってみることにした。「オッケー、んじゃ決定ね。就業時間終わったら二人にラインするわー」 ――入江くんは配属先の総務課がある二十四階で、「んじゃオレ、ここだから」と言ってわたしと佳菜ちゃんに手を振り、エレベーターを降りていった。「――ねえ麻衣、さっきはゴメンね。なんか根掘り葉掘り訊こうとしちゃって」「ううん、いいよ。気にしないで。ただ、わたしが佳菜ちゃんを巻き込みたくなくて、入江くんに口止めしただけだから」 佳菜ちゃんが唐突に謝った理由は多分、わたしのストーカー被害のことだろう。そう思ったので、わたしは彼女にそう言った。「あたし、麻衣のスマホがあんなことになってるのチラッと見ただけだからあんまり深い事情は分かんないけど。マジで何かあったらあたしに相談してね? 何か力になれること、あるかもだし」「うん。ありがとね、佳菜ちゃん」 友だちにそう言ってもらえるのはすごくありがたいことだとは思うけれど、宮坂くんという人は一筋縄ではいかない人物なので、果たして佳菜ちゃんにどうにかできるものだろうか……?「ところでさ、あたし、桐島さんのことどっかで見たことある気がするんだけど。やっと思い出したわ」「えっ? 実はわたしもそう思ってたんだ。どこだっけ?」 わたしは佳菜ちゃんも桐島主任に対して同じデジャブを感じていたことにも驚いたけど、その答えも分かっているなんて……!「SNSだよ。ほら、去年の秋、絢乃会長が俳優の男に付きまとわれてて、その男が蹴り飛ばされた動画が拡散されたじゃん。あの動画でその俳優を蹴り飛ばした会長の彼氏が桐島さんだったんだよ」「ああ、あれかぁ。そういえば、わたしもその動画見たことあったかも」 わ
Last Updated : 2025-06-27 Read more