「桐島さん、なんであんなに強いのかなー? 何か格闘技系やってるとか、麻衣は何か聞いてる?」 佳菜ちゃんはズバリ、わたしが今感じたのと同じ疑問を口にした。やっぱり彼女はわたしと友だちになる運命だったのかも。ちょっとシンパシーを感じてしまった。「ううん。だって、まだそういう踏み込んだ話は聞いてないもん。でも、小川先輩に訊いたら教えてくれそう。あとは……会長への愛なんじゃないかな」「愛、ねえ。あたし、まだそこまでできるような相手には出会えてないわー。麻衣もでしょ?」「うん……」 実はすごく恥ずかしいのだけれど、わたしはこの二十三年間でまだ一度も本気で恋をしたことがないのだ。たとえば、クラスメイトのイケメンの男の子を「カッコイイな」と思ったことはあるけれど、その程度。それが恋なのかどうかはわたしにも分からない。「でも、あたし思うんだけどさぁ。麻衣はともかく入江くんは絶対、麻衣に気があるよね」「…………えっ?」 わたしはまたビックリして、佳菜ちゃんを二度見した。というか、もし本当だったら、今日初めて会ったばかりの佳菜ちゃんにまで見抜かれてしまう入江くんの分かりやすさって……。「それは……、わたしもだいぶ前から何となく気づいてはいたけど。そんなんじゃないと思う。入江くんがわたしに何かと世話を焼いてくれるのは、ただわたしが危なっかしくて放っておけないからで」「そうかもしんないけどさぁ」「わたしと入江くんは、ただの友だちだよ。少なくともわたしはそう」 今までだって、わたしと彼はそういう距離感でやってきたからうまくいっていたのだ。彼のわたしへの気持ちを知ってしまったら、そして、わたしも彼に恋心を抱いてしまったら、その絶妙な距離感が崩れてしまいそうで怖かった。「……う~ん、麻衣がそこまでキッパリ言うなら、あたしもこれ以上はツッコまないことにするよ。外野のあたしがやいやい言うことじゃないしねー」「うん……。佳菜ちゃん、ゴメンね。気を悪くしちゃったかな」「ううん、そんなことないよ。気にしないで。――あ、あたしここだから降りるわ。じゃあ、また後でラインするね」 気がついたら、エレベーターは三十階に着いていた。「うん。じゃあ、午後のお仕事もお互いに頑張ろうね」 わたしがそう言うと、彼女は軽くファイティングポーズをしてエレベーターを降りていった。「――入江
Terakhir Diperbarui : 2025-05-14 Baca selengkapnya