――桐島主任は翌日からも、平日には毎日出勤時と退勤後にわたしの送迎をして下さった。 帰りには必ず「矢神さん、お腹減ってない?」と訊いて下さって、時々は一緒に夕飯を付き合って下さることもあった。 その時はたいてい牛丼屋さんやラーメン屋さん、回転ずしなどのごく一般的なお店。絢乃会長とはいつも高級なお店でお食事をしていると思ったら、「わりとこんなもんだよ」とおっしゃっていてビックリした。それも、会長のリクエストでそうなるらしい。 わたしは入江くん一筋で主任に恋心なんて抱いていないし、主任だって会長と相思相愛なので、これは決してデートなんかじゃないのだけれど。宮坂くんも果たしてそう思っていたかどうか……。 * * * *「――おはようございます」「おはようございま……、どうしたんですか?」 今日も、わたしは主任と一緒に出社してきたのだけれど。秘書室の皆さんの様子がどこかおかしい。小川先輩がスマホを覗き込みながら、眉根をひそめている。「矢神さん、桐島くん、おはよう。――ちょっとこれ見て」「えっ?」「何ですか?」 わたしと主任、二人揃って先輩のデスクに近付きスマホの画面を見せてもらうと、そこに表示されているのはSNSのある投稿だった。『この女は俺のカノジョですが、つい最近別のオトコと浮気してるっぽい。 オトコはカノジョの会社の上司だって。どうせコイツがカノジョを誘惑したんだ。 俺のオンナに手を出すな~~!!(怒) #篠沢商事 #浮気相手に制裁を』 その投稿には、ウチのマンションの前で話し込むわたしと主任を横から撮ったと思しき2ショット写真が添付されている。撮られた覚えなんてないので、きっと隠し撮りだろう。「何、これ。いつの間に……」「またか……」 わたしは気づかないうちに盗撮されていたことに呆然となり、主任はSNSで攻撃されたのがこれで二回目だということにウンザリしているようだ。「業務の一環で、〝篠沢商事〟のタグでこの会社に関する投稿を検索してたらたまたま見つけたの。――私は桐島くんが会長とラブラブなこと知ってるし、矢神さんにも他に好きな人がいるらしいことは分かってるから、別に何とも思わない。でも、何も知らない人はこの投稿を見て、文面どおりに解釈するでしょうね」「あ……、そうですよね」「矢神さん、桐島くん。この投稿した人に心当
Last Updated : 2025-07-12 Read more