「――そういえば昨日、真弥さんから聞きました。去年の秋、絢乃さんが真弥さんたちと解決されたストーカー事件のターゲットって、桐島主任だったんですよね。絢乃さんは主任を守りたくて、ご自分から行動を起こされたとか」 わたしは付け合わせのサラダを食べながら、真弥さんから聞いた話を絢乃さんに確かめた。「あら、真弥さんしゃべっちゃったんだ? ……ええ、実はそうなの。動画では彼のハイキックが目立ってたから、わたしが守られた側みたいに思われがちなんだけど、ホントはわたしが彼を守りたくて動いたのよ」「へぇ、スゴいですね……。絢乃さん、カッコいいです。女性なのにそんなふうに思えるなんて。わたしには多分真似できませんから」「ありがとう。でもね、麻衣さん。大切な人を守りたいっていう気持ちに、男も女も関係ないと思うよ。貴女だってこの先、入江さんが困ったら助けてあげたいって思うようになるはずだから。人を好きになるってそういうことだとわたしは思うな」「……そう、なんですかね?」「ええ」 わたしはちゃんと恋をしたのが初めてだから、あまりピンと来ない。でも多分、絢乃さんのおっしゃるとおりなんだろう。というより、お二人の恋愛を見ていたらその言葉が正しいというのが分かる。絢乃さんと主任は理想的な関係なんだと思う。「なんか……、絢乃さんの方がわたしより大人の恋愛をしてらっしゃいますよね。考え方が大人、というか。わたし、この年齢になってやっと入江くんが初恋なんだって分かったんです。もう二十三歳なのに、遅すぎますよね」「そんなことないと思うけどなぁ。わたしだって桐島さんが初恋だけど、恋に気づいたのは十七歳の時だよ。それでも遅いくらいだと思ってたのに」「えっ、そうだったんですか?」「うん。初恋が早い遅いとか、誰々の方がいい恋をしてるとか、そんなの比べて落ち込む必要なんてないと思う。人それぞれ、恋愛の形は違って当たり前だもの」「……そっか、そうですよね」 絢乃さんは絢乃さんなりの、小川先輩は小川先輩なりの恋愛をしているように、わたしもわたしなりの恋を楽しめばいいんだと思えた。
Last Updated : 2025-08-12 Read more