「――入江くん、どうぞ、上がって」 わたしは彼を部屋の中に招き入れた。彼とはまだ付き合っているわけではないので、もしかしたら宮坂くんを刺激してしまうかもしれないけれど。入江くんはそんなことを百も承知だと思う。 「じゃ、遠慮なく。おジャマしまっす。……へえ、ちゃんと片付いてるじゃん」 「ありがと。とりあえず、こんなものしかないけど……」 わたしはとりあえず、よく冷えた麦茶を二つのグラスに注ぎ入れ、一つを入江くんに勧めた。 「サンキュ。……あのさ、矢神。オレ、さすがに朝まで一緒にいるワケにはいかねえからな?」 「分かってるよ。明日も出勤だし、わたしもそこまでは望んでないから。わたしが落ち着くまでいてくれたらいい」 それまでにどれくらいの時間がかかるかは分からないけれど。朝まではかからないと思う。 「そっか、分かった。じゃあ、お前が落ち着いたらオレ帰るからな。宮坂もさすがに部屋まで押しかけては来ねえと思うし」 「うん」 彼は何だかんだ言って、わたしのことを心配してくれているんだと思う。本当は朝まで一緒にいられたらいいのに……なんて思ってくれていたらいいのだけれど。それはきっとわたしの願望に過ぎない。 「――あ、入江くん、お腹すいてない? ウチでゴハン食べていく? 冷蔵庫に何もなかったから何かデリバリー頼もうか」 それでも彼をどうにか長くこの部屋に引き留めておきたくて、そんな提案をしてみる。どのみち彼もそろそろお腹が空いている頃だろうし。 「あー……、うん。そうだな、そうしようかな。そ
Last Updated : 2025-08-24 Read more