「見えないって……今は高嶺だけだろ? 何を言って……」 「いや本当に居るんです!! そうだ……他の誰か……生人君を……」 「待って」 ブローチを取り出しテレパシーで生人君を呼び戻そうとするが、その手は波風ちゃん自身によって止められる。 「これ以上……二回もみんなを悲しませたくない……だから……」 苦渋の決断だったのだろう。そして先程のキュアリンの話から、彼女も私同様に幽霊としては存在できても蘇れないことを悟ったのだろう。 波風ちゃんは下唇を噛み締めながらも、ポケットに半分突っ込んだ私の手を冷たい空気に晒す。 「……ごめんなさい。波風ちゃんの話は……また今度。いつか絶対に話します」 「正直納得はできないよ……でも、そうしなければいけない事情があるんだろ? 何か……何か俺にできることがあるならいつでもいいから言ってくれ」 「はい……」 彼女が下した判断だ。私はそれに従い、波風ちゃんの手を引き夜道をまた歩き私の家に帰る。 「お義父さんただいま」 「高嶺……!? 大丈夫だったのか!?」 「うん……もう大丈夫だから」 お義父さんの目線はほんの一瞬も波風ちゃんには向けられない。やはり見えていない。 下手に言及したら余計に波風ちゃんを苦しめるかもしれない。私は何も言わず、ぱぱっと支度を済ませて自室のベッドに向かう。 「ねぇ……何でみんなアタシのことが見えないのかな?」 「もしかしたら……ブローチを使用した者にしか見えないとか?」 波風ちゃんの姿が見えているのは私に橙子さんに健橋先輩、それにキュアリンと生人君だ。全員あのブローチを使用している。キュアリンの仮説を考えるにこの説が一番しっくりくる。 「あっ、それならキュアリンに頼んでちょっとだけブローチを貸してもらうか、事が済んでから私達のを……」 「やめて」 波風ちゃんは語気を強める。 「家族を……二回も悲しませたくない……」 「でも……」 それでも家族には何か伝えるべきだと言おうとした。ただ私には彼女の苦渋の決断を改めさせるほどの決意はなかった。 「ねぇ……今日は一緒に寝てもいい?」 波風ちゃんは私の真横に腰掛け、そっと手を重ねてくる。 「うん……私なら、ずっと側に居るから」 指と指の間に私のを入れ握り返す。これが彼女を死なせてしまった、こんな目に遭
Terakhir Diperbarui : 2025-07-01 Baca selengkapnya