Semua Bab 高嶺に吹く波風: Bab 81 - Bab 90

117 Bab

81話 惨めな自分

「あははは!! 変身してないとこんな豆腐みたいに切れるんだね!!」 奴は無邪気に、テストで高得点を取った子供のように喜び跳ねる。神奈子は声すらも上げられず、その場に崩れ傷口を抑え苦悶の表情を浮かべる。 「これで二つ……あたし達の勝利も確実に……」 神奈子が殺される。だというのに体が動かない。庇うことも逃げることも。 完全に諦めてしまい殺される様子を見るだけかと思ったが、次の瞬間メサの体は吹き飛ばされて木に激突していた。 「いててて。げっ、この触手は……」 奴が居た場所には巨大な美しい触手が振り下ろされていた。その風圧で落ちた腕は転がり神奈子は力なく倒れ動かなくなる。 「神奈子!! この腕……」 生人さんがギリギリ間に合ってくれた。彼なら変身せずとも人間態のメサを撃破できるはずだ。 「ちっ、覚えてろよキュアヒーローども!!」 しかしメサは怪人態になることなく一目散に逃げていく。 「うぐぅ……」 神奈子が呼吸を荒くさせ小さく呻く。酷い出血量だ。すぐに手当てしなければ死んでしまう。 わたしも手伝った方が良いと、動けるわたしも彼女の手当てに向かうべきだと頭では分かっていた。だが足が動かない。未だに震えて立てない。 「神奈子!! 橙子!! 大丈夫なのだ!?」 リンカルが駆けつける。配信開始時点から全速力で向かっていたのだろう。すぐに手当てできるよう散布薬と痛み止めを既に手に持っている。 「薬じゃ治せない!! 今はいいから痛み止めを!!」 神奈子は錠剤をリンカルから飲まされて幾分か顔色がマシになる。それでも出血は止まらず死に追いかけられる。 「切り口が綺麗だからまだ十分繋がる……痛み止めがあってもキツイと思うけど、少しの辛抱だからね」 生人さんは腕の傷口に細い触手を数本入れ、それを溶接するかのように彼女にくっつける。 「あがっ……あぁぁぁぁ!!!」 溶接した瞬間神奈子は激痛に大声を上げる。傷口から鳴るグチュグチュという不快な音。こちらまで痛みが伝わってくる。 生人さんに体を抑えられ、足をバタつかせ必死に痛みと戦う。その甲斐もあり彼女はなんとか傷を治すが、あまりの痛みに気を失ってしまう。 「橙子……こっちは散布薬でなんとかなるのだ……良かったのだ」 わたしはリンカルに衣服をめくられ薬をかけられる。こ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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82話 怒りを掻き消す迷い

「ん……んぅ?」 どこかに置かれるように揺らされ、アタイは目を覚ます。 「おい大丈夫か神奈子!?」 アタイは見覚えのない山小屋に居て、目を覚ますなりキュアリンが近寄ってくる。 「お、おう……あれ? 腕がくっついて……そうか。生人が治してくれたんだな」 切り落とされた腕は元通りくっついており、ぶんぶん振り回しても支障はない。 「なんとか……ごめんねあんな痛い治療法しかなくて」 「いやいいって! 元通りになったんだしよ。それより今度こそメサをぶっ倒しに行こうぜ! そう遠くないだろ? アタイと生人と桐崎の三人で行けば逃さず確実に仕留められる……!!」 桐崎の名前を出した途端生人とキュアリンの表情が暗くなる。互いに顔を見合わせた後生人が口を開く。 「橙子はもう……戦えない」 「なっ……まさか何かヤバい怪我でもしたのか?」 「いや……そうじゃないんだ。多分あの感じは……完全に心が折れてしまっていた。戦える精神状態じゃない」 アイツは戦う前、戦う理由がもう分からないと、頑張る目的がないと嘆いていた。そこに追い打ちをかけるように惨敗し目の前でアタイの腕が切り落とされた。アイツの感情も分かってしまいアタイは怒れず寧ろ同情する。 「でもそうなると戦えるのはアタイと生人だけ……もう二人しか……」 つい昨日までは五人で街を守ると、どんなに強いイクテュスが出ても対処できるのだと根拠のない確信を抱いていた。 それがたった一日足らずでこのザマだ。 「ボクはまた高嶺の様子を見てくる。リンカルは橙子の様子を見に行ったから……神奈子は安全な場所で体を休めてて。せめて君は……心を壊さないで」 「分かってる。アタイが挫けるのは死ぬ時だけだ」 「強いね神奈子は……じゃあ行ってくるから」 アタイとキュアリンは取り残され、静かな山小屋で戦闘の傷を、特に心にできた怪我を静寂で癒す。 「神奈子……すまない。またこんな想いをさせてしまって……完全に俺達キュア星人の見当違いだ。事が済めば責任は取る。だから気に病まないでくれ……」 「誰のせいでもねぇよ。キュアリンのせいでも、高嶺や橙子や生人のせいでも……全部翠や波風を殺したイクテュスが悪りぃんだ……絶対に許さねぇ」 今自分の中にある怒り。これだけが心を守ってくれるものだ。 だがそんな中疑問が心に生ま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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83話 どのレールを走るのか

「橙子……?」 毛布を被り果たしてどれほどの時間が経っただろうか? 向こうからリンカルの声が聞こえてくる。 「り、リンカル……なの?」 「そうなのだ。僕なのだ」 ゆっくりと毛布を上げて彼女の可愛らしい顔を確認する。声を真似たイクテュスとかではなさそうだ。 ホッと一安心するのと同時に、恐怖のあまり疑心暗鬼に陥っていた自分に嫌気が差しまた暗い気持ちになる。 「大丈夫なのだ? かなり辛そうに見えたから……」 「大丈夫……って言えるのかな? まぁでも自殺したり、そういうことはしないから。我が身が可愛いから……」 わたしはベッドから降りて鞄からブローチを取り出す。 「はいこれ」 「えっ……?」 「わたしはもう……戦えない。戦う資格なんてない……だからこれは返す。わたしなんかよりもっと資格がある人間に渡してくれ」 相手の返答を待たずわたしはブローチを押し付ける。無責任にも戦うことを放棄して肩が軽くなったことを感じ、それにより更に自己嫌悪に陥る。 だがそれよりも恐怖から逃げる自己保身に走ってしまい、わたしはリンカルを残して部屋から出て行こうとする。 しかし部屋の扉に手をかけた瞬間足が止まってしまう。逃げ出したはずなのに、何かがわたしの手を引っ張る。 (今まで通りの生活に戻るだけなんだ。この家を継ぐべく勉学に励み、人々を導く才覚を身につける。昔から何も変わらない。それでいいんだ。そうしてれば死ななくて済む……) 数ヶ月前に死んでしまった、初めて対等に話し合える友人である翠のこと。 やっと和解できた神奈子や高嶺の今後のこと……わたしが守ると誓ったこの街の人々。それらを見捨てるという最低最悪の決断。 今さら罪悪感を抱いてしまい、優柔不断な自分を殴りたくなる。 「橙子やっぱり……」 「だからわたしはもうキュアヒーローじゃない!!」 わたしはみっともなくリンカルを怒鳴りつけて部屋を飛び出る。 それから執事やメイドにもう大丈夫だと伝え、言われるがままに風呂に入り髪を乾かしてもらい、キュアヒーローとして活動したいた分遅れてしまった勉学のため家庭教師を来させて早速励む。 「橙子お嬢様最近あまり呼ばなかったから何事かと思っていましたが、何か優れないことでもあったのですか?」 キュアヒーローのことを
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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84話 守りたいもののために

「お姉ちゃんおかえりー!」 キュアリンと別れた後、どうするか分からなかったがとりあえずアタイは弟の顔を見るべく家に帰った。帰るなり四人の弟が出迎えてきてくれ、奥の方に居る赤ん坊もスッと手を上げて振る。 「ただいま……お前ら昼飯は食ったか?」 「ううんまだ!」 「そっか。じゃあ昼はハンバーグ作ってやるよ! 豆腐じゃなくて牛肉のな!」 「えっ!? 本当!?」 弟達が目を輝かせ、キラキラした期待を込めた眼差しがアタイの体に当たる。 「前にセールで買えたからな。良いもの食わしてやるよ」 両親が共働きな分アタイがこうやって弟達の世話をしなければ、守らなければならない。 そのためには学校をサボって本来ダメなバイトだってするし、もし弟達がイクテュスに襲われたならキュアヒーローになれなくたって、敵がどんなに強くたって立ち向かうつもりだ。 「そういえば面白い話があってね! この前お姉ちゃんが気にかけてたえっと……朋花? って子の弟居るでしょ? その子がお姉ちゃんの宿題間違えて持ってきてたの! 面白いでしょー!」 「あぁあの子か……」 アタイが初めて天空寺と海原に出会ったあの件で助けた子のことだ。 あの時自分は翠の死に囚われノーブルこと桐崎に際限のない怒りをぶつけようとしていた。そんなところを天空寺に諭されて、それから天空寺と海原の二人を見て自分を馬鹿馬鹿しいと、こんなことアイツが望んでいるわけがないと考えを改めることができた。 (でも海原は……) ひき肉をこねる手が止まる。あんなに明るい笑顔を浮かべていたアイツがつい先日、あんなにも簡単に死んでしまった。 翠もそうだ。前日はあんなにも明るく普通に話していたのにいきなり居なくなってしまった。みんな自分の前から消えていく。なんの前触れもなく急に。奪われていく。 (これ以上奪われてたまるか……!!) バンッ! と強くひき肉を叩きつける。 「お姉ちゃん?」 「ん? あ、あぁごめんな。ちょっとお姉ちゃんボーッとしてたよ」 (なにやってるんだアタイは……こいつら心配させたら元も子もないだろ……) こいつらを安心させて幸せに暮らさせるためには長女であるアタイが頑張らなければならない。なのにメンタルをやられてこいつらを心配させるなんて言語両断だ。あってはならない。 「ほらできたぞ昼
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-24
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85話 再起

「高嶺……何があったかは聞かない。学校からお前が朋花ちゃんに暴力を振るたって連絡がきて急いで帰ってきたけど……怖いことがあったんだよな?」 自殺しようとしたが止められ、生人君はどこかへ去っていった。 「もう大丈夫だ……お義父さんが居るからな」 お義父さんは魂が抜けたような状態の私を抱きしめてくれる。温かい優しさに包まれ、こんな素晴らしいものを与えてくれる人が近くに居たというのに、自殺なんてしようとした自分はなんて愚かなのだと思う。 だがそれでも波風ちゃんを殺してしまった自分が許せない。自殺なんて間違っているとは分かりつつも自傷したい気持ちで胸が一杯になる。 「ごめんなさいお義父さん……自殺なんてしようとして……でも……」 「謝らないといけないのは俺の方だ。十年前からなんにも成長していなかった」 十年前。震災があったあの年。私が初めて波風ちゃんと出会いお義父さんの娘になった時だ。 「あの時のお前も同じような症状が出ていた。居ないはずの両親と会話して、治るまでに何ヶ月も……どう接したら良いか分からず何もできなかった」 私の蓋をしていた記憶が掘り返される。あの時も私は今のように幻覚を作り出してお義父さんや波風ちゃんを心配させていた。 私も同じ過ちをしてしまっていた。過去に囚われて前に進めず足踏みしてしまっている。 「でももう逃げないからな……何があったとしてもお前は俺の大事な一人娘だ。だから自殺なんて考えちゃだめだ。お義父さんが守るから……お前は元気に、笑顔で居てくれ……!!」 消え入りそうな声でこちらに訴えてくる。彼も波風ちゃん同様に私が笑顔で居ることを願っている。そうは分かっているものの笑えない。自然と涙が出てくる。 「ごめっ……なさい。私……のせいで波風ちゃんが死んで、どうしたらいいか分からなくでぇ……!!」 大好きな父の腕の中で胸中を曝け出し、涙が溢れ声も震え出す。年相応に泣きじゃくりこちらからも抱き返す。 「うわぁぁぁぁん!!」 我慢せず想いを吐露し遠慮なく涙を彼の服に落とす。ひたすらに泣きじゃくり、溜まっていたものを全て吐き出す。 「辛かったんだな……大丈夫だ。好きなだけ泣いていい……」 「う、うぅ……!!」 全てを吐き出し楽になり、水分がなくなり涙も収まったあたりで生人君が部屋に戻ってくる。 「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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86話 億年の旅路

「ねぇ……ボクは間違えたのかな? それともあれが最善だったのかな……?」 暗い夜道で廃ビルの屋上に腰をかけ手元にあるベルトのバックルに話しかける。全盛期の頃、ボクがまだこんなに衰えてない頃に使っていた変身道具だ。 これに触れているとかつての仲間や最愛の妻を鮮明に思い出すことができる。ただ今となって人々を助けるはずだったこの道具は、記憶を呼び起こすための思い出の品になってしまっている。 (本当に格好悪いよね……ボク) 高嶺やみんなの前では彼女達を想い強がったが、ボクだって心が挫けそうだ。誰よりも長寿なボクは仲間を失うことなんて数え切れないくらいあった。 その度に悲しみ同時に慣れていってしまった。もちろん悲しくないわけではない。だが波風が死んだと確信した時も真っ先に出てきたのは涙よりも『またか』という慣れの感情だった。 「随分と冴えない表情だな。悩み事か? 珍しいな」 キュアリンがひょこっと顔を出す。耳をピョコピョコと動かしボクの隣に座る。 「ボクだって人並みに悩んだりするよ。ボクは神様じゃない。この宇宙に生きる一人の生物なんだからさ」 ボクは全身を崩し触手状にする。人の腕サイズくらいの芋虫となり、触覚をクネクネ動かして言葉を発する。 これがボクの本来の姿、寄生虫としての姿だ。サイズは微生物サイズにしたりビル程の大きさに調整できるが、今は話しやすいようにこのサイズでいく。 「そうだな……それにしてもやっぱりお前の姿は何度見てもビビるな。初めて会った時なんて腰抜かしたぞ」 「あはは……初めて会った人はみんなそう言うよ」 「そういえばいつもは何であの子供の姿なんだ? 他にも色々動物や地球人に似た姿にもなれるんだろ?」 「あの姿が居なくなった妻と共に過ごした姿だからね。基本的にはあの姿で生きていくって誓ったから」 キュアリンと昔話を繰り広げ、荒んだ心が少しは丸くなる。 「そういえば高嶺達はどうだった?」 「ボクも可能な限り説得したよ。とりあえずは自殺したりなんてことはないと思う」 「そうか……いくらキュアヒーローがあの年頃の女の子しか変身できないとはいえ、これ以上戦わせるのは心が痛むな」 様々な生物に変身できるボクは、事前に取り込んでおいた地球人の若い女の子の血液からDNAをコピーして変身できたが、それ以外の訓練を受
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-26
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87話 答えのその先は

「はぁ……はぁ……ここか? って、アイツらは……」 アタイは全力で走り近くの川に辿り着く。そこに居たのはまさかのライとメサだった。ライが人間態のままスーツを着た男の人の胸倉を掴み上げて宙に浮かしていた。 「吐きな……アンタら政府がキュアヒーローと関わっているのは割れてんだ。あの技術はどっから持ってきた?」 「や、やめてくれ! 俺は下っ端で何も知らないんだ……!!」 「いひひ! 喋らないならしかたないよねー……じゃあまず指でも切っちゃおっかなー!」 メサは鋏を取り出してそれを男の指に当てる。奴の男性に向ける目は玩具にするそれであり、完全に楽しむだけに彼を拷問しようとする。 「やめろっ!!」 アタイは坂を走り降り二人の前に飛び出る。戦ってまでも誰かを守るために。 「あら? この前の斧使いじゃない」 「まーたやられにきたの?」 ライは男を放り捨て、彼は腰を抜かしつつも走り逃げ出す。 「倒しにきたんだよ……お前らをな!! キュアチェンジ!!」 「あははっ! 二人がかりであたしに勝てなかったのに、こういうのってむぼうって言うんだよね?」 「そうだね。せめて楽に終わらせてやるか」 二人は注射器を首元に刺し怪人の姿に変貌する。そして今戦いの火蓋が切られようと…… 「待てっ!!」 空から光の刃が降ってきてアタイ達の間の地面に突き刺さる。そして一筋の光の線となってノーブルが川に舞い降りる。 「これで二対二……だね」 「へぇ……今回はあのバケモンも居ない。こっちは万全な状態だ。ここで負けるのはアンタ達だよ」 ノーブルが来たものの戦況が悪いのには変わらない。だが心強い味方が参戦してくれたのは事実だ。 「戦えるのか?」 「戦えないと思うのかい?」 「ちっ……相変わらずだな。行くぞ!!」 アタイら二人は同時に突っ込む。ノーブルがメサを、アタイがライに攻撃する。 「思い切りは良くなったけど、それだけじゃワタシの力を超えられないよ!!」 奴の馬鹿力に吹き飛ばされ水面に背中を打ちつける。 「遅い遅い! そんなのあたしには当たらないよ!!」 ノーブルも剣を弾かれなんとか斬撃は防ぐものの鳩尾を蹴られアタイの方まで飛ばされる。 「相変わらず強いな……」 「もう弱音かい?」 「はっ! まさか……なんなら二人ともアタイが倒し
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-27
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88話 亡霊

「あはは! 弱っちぃ奴が二人から三人に増えたってどうにもならないよっ!!」 メサは見切り発車で先頭に居た私に包丁を振り下ろす。だが希望を強く胸に抱いた私には通じない。その速さに対応して銃で受け止める。 「私はもう挫けない……この想いは途切れさせない!!」 刃物を受け止め銃を振り上げて奴のガラ空きになった胴体に水弾を撃ち込む。 「ぐあっ!!」 回転に押し出され奴の外皮を削りながら後退させ、飛んだ先でライに受け止められ水弾は消える。 「なんかこいつ強い……」 「後ろの二人もさっきより圧が強くなってる……ちょっとまずいかもね」 風向きが代わり私達の背中を希望という追い風が押す。 「よっしゃアタイも行くぜ!!」 距離ができたこともあり、アナテマが大振りに構えを取り闇の力を溜める。 「ちっ、やばいね。攻めるよメサ!」 「うん!」 私が与えた希望の影響なのか、アナテマの込める闇の力はこの前通り、いやそれ以上の密度と大きさになっている。 それは敵も察知しており大技を放たせないために妨害しに来る。 「オーシャンウォール!!」 私はもう大量の水に、海には屈しない。 巨大な水の壁を創り出し、奴らはそこに突っ込む。 「スプラッシュ……ヒート!!」 私はその水の性質を変え、酸と沸騰する程の熱で奴らに不可避の攻撃をする。 「ライトバインド……!!」 私が壁を解除するのと同時に光の縄が飛ばされて二人に巻き付く。 「ちっ、こんなもの……!!」 しかしライの馬鹿力で寧ろ縄を持っているノーブルが放り投げられそうになる。 「私も支えるっ!!」 彼女の持つ縄を私も引っ張り踏ん張る。お互い一切の手を抜かず、地面が割れ川の水が舞う。 「よっしゃ!! ヘルスラッシュ!!」 闇のオーラでより肥大化した斧が奴らに振り下ろされる。縄のせいで避けることもできず、奴らはその一撃で外皮を大きく凹ませ血を吐くのだった。 「くっ……そ……!! 逃げるよメサ!!」 ライは力を振り絞り地面に殴りつけ土埃と水を舞わせて視界を塞ぐ。 追いかけようとしたが視界が晴れた時にはもうそこには二人は居なかった。この川は海に繋がっている。恐らくは…… 「海に逃げたな。まぁあの傷じゃ人を襲うことはしないはずだよ……な」 配信が終わり、奴らがもう居
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-28
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89話 オレの守るべき場所

「あ! ゼリルだ! 帰ってきてたんだー!」 オレはブローチを届けるため故郷の海中都市に帰り、少しの間待機していろということで街を散策していた。 そんな中オレを慕ってくれていた最近ここに来たイクテュスの一人であるロブがこちらに寄ってきて両手のハサミをカチカチと鳴らす。 「ただいま。そっちは大丈夫だったか?」 「大丈夫だったよ! 人間も近くを通らなかったし、特に事件も起こらなかったよ!」 イクテュスについては自分達でも分からないことが多い。如何せん十年前に生まれたばかりの突然変異種だ。 人間は大丈夫だがオレ達には有毒なガス等が船から出ている可能性もある。警戒するに越したことはない。 「ゼリルはまた地上に行くの?」 「まぁな。人間と対等の立場に立つためにもまだやるべきことが山積みだからな」 キュアヒーローの始末と周辺技術の奪取。交渉の場に着くための、イクテュスの国を認めてもらうための準備が終わるのはまだまだ先だ。 「あ、そういえば王様がゼリルのこと呼んでたよ!」 「王が……? まぁ久しぶりだしな……分かったすぐに向かうよ」 オレはロブと別れ水中を泳ぎ王の自室へと向かう。とはいっても大きく豪華なものではなく普通の民家より少し大きい程度だ。 「王、ゼリルです。居ますでしょうか?」 「……入れ」 無礼がないように気をつけながら部屋に上がらせてもらう。中も至って普通の部屋であり、クソッたれの人間の上流階級の奴らみたいに下品に着飾ってたりはしていない。 王は石で造られた椅子に座っており、タコの触手を動かし手招きする。 「久しいな……どうだった地上は?」 「王の言った通り……人間の醜さを嫌と言うほど見せられました。同族なのに忌み嫌いながら差別と偏見にまみれ、常にどこかしらで戦争が起きている……とても同じ知能と文明を持った生き物とは思えません」 「やはりか……もし最初向こうを信じて姿を現していたら……」 「えぇ。きっとイクテュスは一人残らず殺されていたことでしょう。王の心配は見事的中していました」 あの日、通りがかった人間がイクテュスを殺した日。オレ達の中では人間に報復しようという意見も出たがそれを真っ先に止めたのが王だった。まずは様子を見ようと、調査に出かけようと提案したのだ。 そして結果は……予想通りというべきか最
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-29
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90話 また触れられる

「波風ちゃぁぁぁん!!!」 私は目の前に居る、確かにそこに存在する彼女を抱きしめる。明確な温もりが胸に伝わり、それが幻覚ではないと訴えてくる。 「どういうことだ……? 海原は確かに心臓を潰されて……」 「ちょっと失礼」 生人君は困惑する健橋先輩を押し退け、指先を触手に変えて半透明の波風ちゃんの体内に挿入させる。 「うぅ……なんだか変な感じねこれ」 波風ちゃんの体内を触手が動き回り、彼女は非常に微妙そうな顔をする。 「アタシ自身もどうなっているか分からないんですけど、これはどういうことなんですか? アタシは間違いなくあの時に……」 そうだ。波風ちゃんはあのイクテュスに心臓を握り潰されて海に捨てられたはずだ。今でも認めたくないが……彼女は間違いなく亡くなっている。 だがその揺らぎようもない事実と今の状況は真っ向から対立し矛盾している。 「……実態がない。物理的な存在が……ここにはない」 「えーと、どういうこと?」 「ボクはこの星の物質なら何でできているか調べることができるんだ。でも波風の体内からは……何も感じなかった。物理的に存在していない」 それを聞いても私と波風ちゃんは首を傾げることしかできない。物理的になんちゃらなど私には到底理解できない。 「つまり今の波風は精神的な存在……幽霊などの類と?」 「橙子の言う通りだ。表現するなら幽霊が一番近い」 「きっとキュアヒーローの力のせいだろう」 橋の上からぬるっとキュアリンが降りてきて水の上に着地する。 「一応キュアヒーローの力の悪用防止のために力の反応機を持っているんだが……今波風の居る位置に強い反応を示している」 「えっ……? 今アタシは変身もしていないのに?」 「ただ……反応の種類を見るにウォーターとイリオの力が混ざっている」 「私と波風ちゃんの力が……? え??」 さらに話がややこしくなり、もはや誰も話についていけていない。 「推測混じりだが簡単に言うと……最期に波風が高嶺に強い希望を向け、それがキュアヒーローに変身したことにより具現化した可能性が高い」 「確かに……アタシは最期に高嶺のことを……」 「言葉を選ばずに言うと……今の波風は幽霊と大差ない」 温まった空気に一気に亀裂が入り、不快な寒さが入り込んでく
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-30
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