「げほっ、げぼっ……おば……さん?」 奴は咳混じりにその女性に弱々しい声をかける。異形の化物の癖に、過去にアナテマの腕を切り落としている奴の癖にまるで被害者かの様に振る舞う。 「ちょっ、そこを退いて!! そいつは人を殺す……化物なの!!」 庇う理由は分からないが、一般人が間に立ち塞がる以上下手に攻撃ができない。 「まさか……テメェも人間に化けたイクテュスか? ウォーター気をつけろ!!」 アナテマの一言で私達はまさかの可能性に勘づく。 [気をつけてよ高嶺。また騙されて不意打ちされるかもしれないわよ] [あっ……そ、そうだね。気をつけないと!!] また前の様に油断した隙を突かれてブスりと刺される可能性だってある。同じ失敗をするわけにはいかない。 私は油断を捨て銃口をおばさんの方に向ける。 「や、やめっ……ゲホッ!!」 女性の後ろに隠れる奴は何か叫ぼうとするが、先程胸を殴られた影響か呼吸器官に異常が生じており上手く発音できていない。 「やめろっ!!」 だが私達が女性に近づくとうずくまっていた奴が声を張り上げこちらに二本のナイフを投げる。幸い距離はあったので私達三人は容易に躱わせたが奴はもう次の動作に移っていた。 「はぁっ!!」 地面を強く殴りつけて土煙を舞わせる。弱っているとはいえ奴の筋力から放たれたそれは私達の視界を覆い尽くす。 「みんな伏せろ!! ブラックホール!!」 アナテマが上空へ闇の塊を投げる。軽い土埃はそれに吸い込まれていき数秒もすれば視界は完全に晴れる。しかしそこにはもう奴と女性は居なかった。 「逃げられた……」 氷で高台を作り辺りを見渡してみるがどこにもあの二人の姿はない。完全に見失ってしまった。 「良いところだったのに……あの婦人に止められなければ……とにかく悔やんでいてもしょうがない。この場は警察に任せてわたし達は退こう」 この形態は体力の消耗が激しいのであまり長時間は変身していたくない。私達はキュアリン達と連絡を取り合って私達のアパートに集合する。 「ふぅ……やっぱ疲れるなこれ」 変身を解除した途端ズシりと疲労感が全身に乗っかってくる。波風ちゃんもふらふらで今にも倒れてしまいそうだ。 「大丈夫? とりあえず肩貸すから」 「ん……ありがと」 浮いているのも疲れるだろうし私
Last Updated : 2025-07-21 Read more