Masuk2021年日本。異形の怪物イクテュスが現れ人々の生活が脅かされていた。しかしそんな怪物に立ち向かう勇敢な少女達が居た。 キュアヒーロー。唐突に現れ華麗にイクテュスを倒していく美麗なヒーロー。彼女達はスマホ等の電子機器にどうやってか配信動画を発生させて人々から希望と期待の眼差しを与えられていた。 日本のある街で中学校に通うどこにでもいる女の子である天空寺高嶺。彼女には一つ重大な秘密があった。それは彼女自身がキュアヒーローだということだ。 青髪の水を操るヒーロー、キュアウォーター。それが彼女の別の名前だ。 正義感が強い彼女は配信を通じて人々に希望を与えていき、先輩ヒーローや新たになった人達とも交友を深めて未来を築いていく。 人間とイクテュスと妖精の宇宙人。様々な思惑が交差しながらも高嶺は大好きな彼女と共に今を生きていく。 過去も未来もないこの今の世界を。 ギャグありシリアスあり百合要素ありのドタバタの魔法少女達の物語の開幕!!
Lihat lebih banyak「行った……か」 ナイフを躱そうとするが、どれだけ技術を凝らそうが向こうの方が速く幾度も皮膚を切り裂かれる。それに合間に入れられるハンマーもかなり脅威で、ギリギリで躱せているものの風圧が凄まじく生前よりも鋭い攻撃だ。 「うっぐ……!!」 触手を駆使し二人を捌こうとするが、後ろから飛び掛かってきた蛇のイクテュスが首筋に噛み付く。頸動脈が傷つき多量の血が舞い背の高い木をてっぺんまで赤く染め上げる。 (前にノーブルが倒した個体か……!!) 噛みつかれたまま奴の鳩尾に後ろ蹴りでドツきよろめかせる。吹き飛ばす気だったが重たくそこまではいかない。 (やっぱりどいつも強くなってる……) 気づけば高嶺達がかつて倒したイクテュスに囲まれており、逃げ場も封じられている。触手に変身して飛ぼうにもその些細な隙も見逃してくれないだろう。 「ぎゃりゃぁぁぁ!!」 メサが渾身の力を込めナイフを投擲する。それが他の奴らの攻撃にも重なりボクは防御もできない。 「うっぐ……!?」 視界の右側が真っ赤に染まり直後暗転する。ナイフが深々と突き刺さり脳にまで達している。人間なら即死だっただろう。 (ボクが化け物だから……) 助けた女性に吐き捨てられた言葉やボクの胸を撃った特殊部隊の人達のことがフラッシュバックする。 どれだけ助けようとしても、ボクがヒーローであっても周りは理解を示さない。こうやって肉を削がれ身体を抉られても人々は再生する化け物と恐怖する。 それにこことキュア星のために戦い続けたとしても、ボクの未来は今まで通り迫害と追放、良くて監視という名の監禁だろう。高嶺達は違うかもしれないが、彼女達が寿命で死んだ未来、似たような結末にいつか辿り着く。 (そしてボクの寿命的に力を失って最後は……) きっとここで力尽きて死んでも、生き残ったとしても末路はさして変わらないだろう。常軌から逸脱した生物は、尋常な死に方はできない。 「うっぷ……!!」 ついきは避けきれずハンマーが胴体を捉え、ボクの身体は吹き飛ばされ木々を何本も薙ぎ倒し岩に激突する。 背骨が粉々に砕け、血管もほとんど切れて破裂している。血を絶え間なく作成しているせいでまるで幾千もの死体でもあるかのように血の池ができている。 そんなボロボロになっても、周りから蔑ろにされてでもボクは
「こちらドローン偵察。そちらから前方に五百メートル程進んだところにMが鎮座しています」 「了解」 生人さんがトランシーバーを耳に当て特殊部隊の人達と応対する。 「ここからは慎重に行こう。とりあえず倒すのは二人に、逃がさないためにボクは鳥とかも使って上手く包囲してみるよ」 先程木からもぎ取った木の実をチラつかせ、それを道中の鳥達に食べさせ命令し一定間隔で配置し飛ばす。 「こちらドローン偵察! 緊急事態! そちらから東に七百メートルの地点に動きあり! ヘド……」 「もしもし……? もしもし!!」 トランシーバーから怒号のように叫ぶ声が聞こえてくるが、電波が届かなくなったのかノイズが入りプツリと音声が途切れる。 「かなり良い物のはずなんだけどな……ちょっとテレパシーの方でキュアリン辺りに聞いてみ……」 風切り音が響く。一瞬遅れてわたしとアナテマが身構えるのと同時にゴトンと重たい物が落ちる。 「生人さん手が……!!」 彼のトランシーバーを持っていた右手が地面に転がる。一歩右の地面にはナイフが突き刺さっており、時間が経つにつれ崩れ灰となって消えていく。 「東に六百メートル……何か着地した。こっちに向かってくる……!!」 言葉も交わさずわたし達は太陽の方へ向き直り数歩下がって気配探り警戒する。 「翠じゃない……何か来る!!」 草むらを掻き分ける複数の足音。そのうちの一つが猛スピードでこちらに向かってくる。 「ご……ぽぽ……」 口からヘドロを垂らし奴が姿を現す。黒の法衣を纏い、両手には鋭利なナイフを握っている。 「メサ……!?」 かつて倒した、爆散したはずのサメのイクテュス。彼女が虚な瞳で、黒い涙を垂らしながらこちらを捉える。 瞬きの間の後わたしの目の前で火花が舞う。地面を強く蹴ったので反射的に剣を構えたが、運良くそこに奴の突進が命中した。それほどに奴は速く生前とは段違いだ。 「こいつらまで……!! 今助け……」 競り合っている中アナテマが後ろから斧を振りかぶりその首を落とさんとする。 「アナテマ危ないっ!!」 しかしメサが飛び出してきた方向からハンマーが猛スピードで向かってくる。生人さんがアナテマにタックルをかまし、本来彼女が受けるはずだったそれを肩代わりする。 ぐしゃり。彼の後ろ姿が揺れ、辺りに血
「……偶然ですからね」 「分かってるよ流石に。で、全員で行くのか?」 「いえ……イクテュス、特に王がまた来るかもしれませんので最低限の戦力は、半分ほどは残しておかないともしもの場合壊滅的な被害が出てしまいます」 イクテュスだけでなく件のヘドロのせいで思うように戦力が割けない。分断はあまりしたくないが、しないという選択を取った場合のリスクがあまりにも大きすぎる。 「翠が居るなら、アタイと橙子は行かせてほしい。頼む」 「……分かりました。では念の為、不足の事態の場合を考え生人さんも同行してください」 「構わないけど、ここからその場所まで何分くらい?」 「最低限走れる車がありますのでそれを使って……十五分程。向こうの動向次第で変動すると思いますが……」 「それだけあれば大丈夫」 先程から生人君は長方形の機械をガチャガチャ弄っており、床には地球上のものとは微妙に違う工具が散らばっている。 「あ! それってこの前川で見せてくれた昔使ってた変身装置ってやつ!?」 「あーうん……そうだよ」 「あれ? でもそれって今の生人君の身体じゃ使えないんじゃ……?」 「い、いや改造して短時間だけど使えるようにしてて……後は車の中でパパッとやるよ。翠がいつ動くか分からないし、早く行こう!」 腕を触手に変えパパッと工具を拾い上げてまとめる。 「連絡してありますので三人は校門に着けさせておいた車までお願いします」 「じゃ、またな……みんな」 健橋先輩は部屋を出ていく前に、最後にみんなの顔を見回す。その先に波風ちゃんが映った瞬間目に見えて悲しそうな表情をする。 「ごめんなさい……アタシにはもう何も、思い出せない……でも、同じ志を持つ仲間として言わせてもらうわ。またね」 「わたし達も過去にケジメをつけてくる……二人も、悔いがないようにね」 二人はまだ何か言いたげだが、それを堪え部屋を出て校門へと向かっていく。 「ねぇゼリル……」 生人君もそれに続こうとするが、その前にゼリルの元に行く。 「後は……頼んだよ。周りを頼ることを忘れないでね」 「生人……?」 「じゃあね」 ゼリルがその一言に反応するよりも速く生人君は素早く駆け姿を消すのだった。 ☆ 「待たせてごめん!!」 わたし達が車のところまで到着するのとほぼ同時に生人君がす
「とりあえず治療は……終わったのだ」 乗っ取られた翠にやられてから十分後。すぐに駆けつけてくれたリンカルにより砕かれた骨はくっつき多少無茶をすれば戦闘できるまで回復する。 「なぁリンカル一つ聞いておきたいことがあんだけどよ……」 神奈子が重々しい口調で詰め寄るように問い始める。 「半年前のあの時、翠の死体って……どうなった?」 「それは……政府の判断で一時冷凍保存することになったのだ」 「つまり……親に死んだことも伝えず行方不明のまま、今後何かに使えるかもって私利私欲で冷凍してたってことか……?」 ポタポタと神奈子の握り締められた手から血の雫が垂れる。彼女の怒りの矛先はリンカルに向けられており、今にも殴りかかりそうだ。 「落ち着くんだ神奈子。政府の判断とリンカルは言った。リンカルにとやかく言えたり指示できる力はないんだ……」 「じゃあ橙子は許せるのかよ……!! こいつがずっとアタイ達にそのこと黙って隠してたことが!!」 「それは……」 翠の冷凍保存の件を一体何人が知ってたのだろうか? キュアリンや鷹野さんや生人さんでさえ知っていたかもしれない。 それなのに彼らが一言でもその件に触れたことも、触れようとする素振りすらなかった。 「そのせいで……こいつらが損得で翠を隠したせいで今もあいつは身体を操られてるんだぞ!?」 「ごめんなさい……なのだ」 リンカルは蛇に睨まれた蛙のように縮こまり、小さく謝罪の意を述べる。 「それで、翠は今どこに?」 「橋が崩れてから海岸の方に向かったけどそれっきり……どこかに消えているのだ」 人気の多い所に行かなかったのは不幸中の幸いか、それとも二度と見つからない可能性を考え最悪の事態と言うべきなのか。 「こんな状況で我儘言って申し訳ないが、もし次翠が現れたら……その時はわたしと神奈子に任せてくれないか?」 「他のみんなにも伝えておくのだ……」 先程は動揺し本領の半分程度しか出せなかったが、覚悟し二人で挑めば勝てない敵ではないだろう。それにこのケジメは他の人には譲れない。 「それと他の場所の状況は? こっちはとりあえず最初居たのは倒せたけど……」 「それならゼリル達は無事で、高嶺達の方は王に襲われたけど生人が間に入ってなんとか退けたらしいのだ」 「生人が……? やっぱ生きてたのか
Ulasan-ulasan