「じゃ、帰る時間になったら連絡してよまた迎えに来るから」 「ありがとねたけ兄」 「いやいや大学生の夏休みはここからが本番だからね! 俺は出会いを探しに山を走ってくるよ!」 健さんに海水浴場まで送ってもらえることになり、私達はここまで車で来る。 大学生の夏休みはなんと十月の頭まであるらしく、まだ半分もいってないらしい。 「なんか夏休みになってたけ兄さらにはっちゃけてるわね」 「事故とか事件とか起こしそうで心配だね」 「まぁその時は縁切るわ」 話もそこそこに私達は海水浴場に入り辺りを見渡してみる。夏休み最終日だからか中高生は少なく、大学生や社会人以上の人が多い。 そして人混みの向こうには揺れ動く塩水が待ち構えていた。邪悪にも人々を波で拐いまた元の場所に戻す。 「大丈夫高嶺?」 「うん……歩けるし、海も直視できる……大丈夫だから……」 人々ははしゃいで海で遊んでいる。浮き輪でぷかぷか浮きながら波を楽しむ者や、奥の方でサーフィンをする者。それに砂浜で城を作る者や日光浴をする者。 誰も海を怖がっていない。そうだ。全員が全員トラウマを抱いているわけではない。あの震災は甚大な被害を出したが、私程のトラウマを抱いた人の方が少数なのだ。 私達は着替えるべく仮設小屋に向かいロッカーに服を入れ水着姿になる。 「どうしたの? じーっとこっち見て?」 波風ちゃんに視線が釘付けになっていたことに気づかれ、私はさっと目を逸らす。 彼女は濃い赤色のビキニを着ており、ヒラヒラが体を動かす度に揺れ胸に視線が誘導されてしまう。 「い、いや何でもないよ!」 私もささっと水着に着替える。波風ちゃんとは対照的にカラフルで子供っぽい水着だ。 (やっぱり私じゃ波風ちゃんには不釣り合いだよね……) どんどん大人びていく彼女に、未だ小学生気分の私。なんだか彼女が段々と離れていくような気がして胸が冷たくなる。 「さっきからどうしたの? 海を怖がってるってわけでもないし……何か悩み事でもあるの? ハッキリ言いなさいよ。アタシとの仲でしょ?」 それでも波風ちゃんは私に寄ってきてくれて独りぼっちにはさせないようにする。その優しさが胸に染み、本音を吐けるよう解凍される。 「なんだか波風ちゃんだけどんどん大人になってって、このままじゃ私は置いてかれちゃう
Last Updated : 2025-06-02 Read more