Semua Bab 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした: Bab 61 - Bab 70

95 Bab

第61話 10日後の目覚め

 私は夢を見ていた……。 夢の中の私は薄暗い森の中をカンテラを持って、何処までも歩いていた。前方には道案内の小さな光が飛んでいる。その光の後を私は必死になって、ついて歩いていた。森の木々がざわめき、時折不気味な鳥の鳴き声が聞こえてくる。今にも恐ろしい獣でも飛び出してきそうで恐ろしかったが、身を護る祈りが込められた護符を持っているからきっと大丈夫なはずだ。恐怖に震えながらも、歩みを進め……目の前が開けたと思うと、小屋が現れた。そして小さな光は小屋の中に吸い込まれていく。「やっと……ここまで辿り着いたわ」小屋に近づき、目の前の扉を緊張の面持ちでノックした。――コンコンすると軋む音と共に扉がひとりでに開いた。ゴクリと息を呑むと扉をくぐり、小屋の中へ足を踏み入れた――*****「……」突然私は目が覚めた。目を開けた途端に眼前には黄金色に輝く天井が飛び込んでくる。「……相変わらず趣味の悪い天井ね……。もう絶対に部屋を変えて貰うんだから……」ゆっくり身体を起こし、ふと考えた。「あれ……私、どうして私ベッドで眠っていたのかしら? 確か学校に行って、その後……」どうもその後の記憶があやふやだ。ただ、夢を見ていたことだけは覚えている。私はどこか森の中を歩いていて……。「ところで今、何時かしら?」太陽の光が部屋の中に差し込んでいる。しかも青い空まで見えるということは少なくとも夕方でないのは確かだ。「時計、時計……」部屋の中をグルリと見渡し、壁に掛けられた時計が目に止まった。時刻は10時を少し過ぎたところだった。「10時10分……ということは朝ね」見た所、私が着ているのはネグリジェのように見える。「起きましょう、まずは着替えね……」そしてベッドから身体を起こした時。――ガチャッ「え?」「ま、まぁ……お嬢様……」扉を開けて部屋の中へ入ってきたのはメイド長だった。手には大きな洗濯かごを持っている。彼女は私を見ると目を見開いた。ドサッ!メイド長は手にしていたかごを床の上に落とし、洗濯物が散乱する。「ユリアお嬢様! 目が覚めたのですね!?」メイド長は私の側に駆け寄ると、いきなり両手を握りしめてきた。「え、ええ……おはよう……でいいかしら? 随分遅い時間まで寝てしまったようだけど……」すっかり朝寝坊をしてしまった。するとメイド長が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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第62話 父と娘

 着がえを済ませ、ソファで私は考え事をしていた。「おかしい……。何かがおかしいわ……」何がおかしいと聞かれてもうまく答えられない。けれども、私の傍には常に誰かがいたような気がする。その誰かとは……一緒にいても、決して心が安らぐことが無く、近くにいれば苛立ちが募る。そんな人物だ。けれどもその反面、私はその誰かに頼り切っていた気がする……。「う~思い出せないって、こんなに苛立つものなのね……」クッションを抱えながら呟いたその時。「ユリア、入ってもいいか?」ノックの音と共に、父の声が聞こえた。「はい、どうぞ」すると扉が開かれ、父が部屋の中へ入って来た。「何だ……? 起きていたのか? もう身体は大丈夫なのか?」父が尋ねる。…相変わらず、まるで他人にしか思えない父。私は立ち上がると挨拶した。「お父様、ご心配おかけいたしまして申し訳ございませんでした」そして頭を下げる。「いや……心配したのは確かだが……まぁ、座って話をしよう」父が向かい側のソファに座ったので、私も再び着席した。「しかし、それにしてもよく無事だったな。もう一歩馬車が止るのが遅ければ、危うく崖下へ転落するところだったそうじゃないか」「え、ええ……そのようですね」しかし、その辺りの事情は何一つ記憶にないので私には何とも答えようが無かった。「……」父は私を暫く無言で見つめていたが……やがて状況を説明し始めた。「馬車には細工がしてあったそうだ。車輪は外れやすく、扉は開きやすく加工されていたらしい。それに肝心の御者の姿はまだ見つかっていないが、人相書きを見た処、この屋敷の御者では無かった。今行方を追っているが……見つけられない可能性がある」「そうですか……」やっぱり私は命を狙われていたのか。「すまなかった」突然父が頭を下げた。「え? お……父様?」「お前が命を狙われているので護衛騎士を付けて欲しいと言ってきたとき、ちゃんと信じて護衛を付けてやればよかったと反省している。またいつものように我々の関心を買う為の戯言だろうと決めつけてかかっていたのだ。あの時、お前を信じてやれば……そうしたらお前は馬車の事故に遭うことも無かったと言うのに……本当にすまなかった」え……? 父は一体何を言っているのだろう?「何をおっしゃっているのですか? お父様は私の為に護衛騎士をつけて下さっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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第63話 再び狙われた私

 その日の夕方のことだった。私は誰かに言い聞かされたかの如く、勉強に励んでいた。一人で教科書を読み、ノートにまとめ……時間が経過するのも忘れて猛勉強をしていたその時。――コンコン「ユリアお嬢様、夕食のお時間です。旦那様がダイニングルームでお待ちです」ノックの音とともに、声が聞こえた。「えっ!? お父様が!?」急いで扉を開けると、そこには私とさほど年齢が変わらないメイドが立っていた。「キャッ!」突然扉が開かれた事に驚いたのか、目を見開くメイド。「あ……ご、ごめんなさい」「い、いえ。大丈夫です。ではご案内いたします」「ええ、お願い」そして私はそのメイドに連れられて、父が待つダイニングルームへと向かった。 メイドの後について、長い廊下を歩く私。月明かりに照らされた廊下には私とメイドの長い影が落ちている。……おかしい。先程から言いしれぬ嫌な予感を抱いていた。……どうしてこんなに静まり返っているのだろう? こんなに廊下が長かっただろうか? そして……何故私はあのメイドに恐怖を抱いているのだろう……?足が震えて、喉はカラカラ。もう、恐怖の限界だった。「ね、ねぇ……い、一体何処まで歩くのかしら……?」怖くて怖くてたまらなかったが、前を歩くメイドに声をかける。するとメイドはこちらを振り向かずに答えた。「もう少し……もう少し先です……」その声があまりにも感情がこもっておらず、ゾッとした。だ、駄目だ……このメイドについて行ってはいけない……逃げなくちゃ……。本能が叫んでいた。「ッ!」勇気を振り絞って背を向けると、もと来た廊下を走り出した。その瞬間、周りの風景が一瞬にして変わり、ここが屋敷の廊下では無かったことに気付く。何と私は屋敷の外に出ていたのだ。そして今の自分は屋敷目指して走っていた。「そ、そんな……!」信じられない! 私はいつの間に外に出ていたのだろう? あのメイドにおかしな術でもかけられていたのだろうか!?その時、背後から風を切るような音が聞こえた。「え?」振り向くと、背後から無数の矢が迫っている。「キャアアアッ!!」思わず目を閉じて叫んだ時――バシッ!!まばゆい閃光が身体から放たれ、私の周りを覆うように銀色に光り輝く壁が出現した。そして飛んできた矢を全て一瞬で燃やし尽くしてしまったのだ。「あ……」思わず腰
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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第64話 暇な警備員

 食後――「あの〜わざわざ部屋で見張っていただかなくても大丈夫ですから……」部屋の角でこの屋敷の警備をしている男性に私は声をかけた。「いいえ、そのようなわけには参りません。旦那様からユリアお嬢様の護衛を頼まれておりますので、今夜は寝ずの番をさせていただきます」私の身を案じた父がこの屋敷の警備員である自分に今夜は私の護衛につくように命じられた、と警備員は言うのだが……。いやいや、逆にこの状況ってどうなの?年若い女性の部屋に、これまた年若い男性を同じ部屋に一晩中一緒にいさせるつもりなのだろうか? 倫理的に見てもこの状況は絶対におかしいと思う。何やら別の意味で身の危険を感じてしまう。「父の話ではこの部屋に魔法の防御壁を張ったと聞かされていますけど?」「いいえ、そのようなわけには参りません。やはり室内の警備は怠るわけには参りませんので」あくまで頑なに拒否する警備員。「はぁ〜……」思わずため息をついてしまった。もういい、勝手にさせておこう。どうせ寝る時は出ていってくれるだろうから……。再び勉強に励むことにした。「……」無心にノートにペンを走らせていると、突然警備員の男性が話しかけてきた。「ユリアお嬢様」「はい」緊張する面持ちで返事をする。何か異変でも感じたのだろうか? 素人の私には分からないが、彼はプロ? の警備員なのだから。「……随分熱心に勉強に励んでいるのですねぇ」「は?」「いやはや驚きです。ユリアお嬢様は勉強が嫌いで、学園内のお荷物と伺っていたので。ところがどうでしょう。こんなに熱心に勉強されているのですから驚きです」「……はぁ……そうですか」「一体何故、それほど熱心に勉強されているのですか? もしよければ理由を教えて下さい」何? この警備員はひょっとして退屈なのだろうか? そう言えば先程2,3回欠伸らしきものをしている姿を目にしたっけ……。今度は暇で話しかけてきたのかもしれない。「……言われたからですよ」「え? 何をですか?」「勉強するように言われたからです」「旦那様にですか?」「まさか……違いますよ。成績が酷くて退学になったら困る人がいて、その人に勉強する様に言われたからです」「その人って……誰ですか?」「それは……あ」そうだ……私、何言ってるのだろう? 誰にそんなこと言われた? 大体私にはそんなに親し
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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第65話 夢の中での再会?

 ジョンは普段とは全く違う格好をしていた。フード付きの長いマントを羽織り、その格好はまさに魔法使いの姿のようにも見える。「ユリア……記憶は戻ったかい?」その声は今迄聞いたことが無いくらい優しい声だった。「ジョン……一体今まで何処に行ってたの?」するとジョンは首を傾げた。「ジョン? 誰のことを言ってるんだい?」バルコニーの手すりからひらりと降り立ったジョンが月明かりを背に尋ねてくる。「え……? だって……」                                      「ユリア。もう12日目になったけど…その様子だと、まだ殆ど記憶は戻っていないようだね? まぁ60日目になる頃には完全に記憶が戻ってくるとは思うけど」「え?」分からない、さっきからジョンが何を言っているのか私にはさっぱり理解出来なかった。それに目の前のジョンは本当に私が知っているジョンなのだろうか?顔はまるきり一緒だけども雰囲気も口調もまるきり違う。とても同一人物には思えなかった。「それにしてもアイツがここまで力を持っているとは思わなかった。完全に油断していたよ。まさか力を奪われてしまうとはね。僕の力が完全に戻っていないから、今はまだこういう形でしかユリアの前に姿を表すことが出来ないけれど、とにかく僕が完全に力を取り戻すまでは死ぬなよ? その指輪も絶対に外さないようにね。ユリアを必ず守ってくれるから」ジョンは私の右手を指さした。「え……?」その言葉に私は自分の右手に視線を落とし……目を見張る。いつの間にか右手の薬指に青白く光る指輪がはめられている。「今、ユリアが見ているのはただの夢だ。目が覚めたら今夜のことは完全に忘れること。いいね? それが今の君を守るただ一つの手段だ」ジョン? は指をパチンと鳴らし……そのまま私は意識を失ってしまった――***コンコン コンコン 扉をノックする音が聞こえてくる。「う〜ん……」「ユリアお嬢様? 入りますよ?」誰かの声が扉の外で聞こえる。ガチャッ扉が開かれる音が聞こえ、私の眠っているベッドに足音が近付き……。  「ユリアお嬢様! なんて格好で寝てらっしゃるのですか!?突然の大きな声で私の意識は覚醒した。「え? 何? 何?」そのとき気がついた。ベッドの足元に隠れるように転がって眠っていたと言うことに。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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第66話 一人目の兄

「2人の兄って一体どんな人達なのかしら……」魔法学の勉強をする手を止めて、考え込む。父の話では現在24歳の長男の名前は『アレス』、そして22歳の次男の名前は『シリウス』だという。「う〜ん……『アレス』といい、『シリウス』といい……何処かで聞いた名前のようにも感じるし……」だけど、いくら思い出そうとしても駄目だった。感覚的には何となくその名前に覚えがある気がするのだが、気の所為と言われてしまえばそれで終わってしまう。「でもこんな風に思える様になったのも……ひょっとして失われた記憶が少しずつ戻ってきているってことなのかしら?」考えてもしようがない。それより今は退学にならない為に一生懸命勉強する事を優先しなくては。そして再び私は教科書に目を落とした――**** 16時―― 私は相変わらず勉強を続けていた。今勉強しているのは歴史である。「え〜と何々?『魔法』が初めてこの世で確認されたのはインペリアル歴3年?」だけど実際にこの目でジョンやクラスメイト達が魔法を使う様子を何度も目撃しているのに、自分が魔法を使えない所為もあってか、未だに信じられなかった。どうしてこんなにも魔法がある世界に違和感を感じるのだろう? 私の頭の中では未だに魔法なんかあるはずないと否定し続けている。「兄達や父は魔法を使えるのかしら……」ポツリと呟いた時。――コンコン突然扉がノックされた。「あら? 誰かしら?」すると扉の外で声が聞こえた。『ユリア、俺だ。シリウスだ』「え!?」まさか、直接部屋を訪ねてくるとは思わなかった。てっきり夕食の席かどこかで顔合わせをするだろうと思っていたのに…。『ユリア? どうした? 開けてくれ』「は、はい! 今開けます」カチャ……扉を開けると、そこには見知らぬ若い男性が立っていた。少し癖のある巻毛のブロンドヘアーに紫色の瞳……。中々のイケメンである。「シリウス……お兄様……?」見上げながら恐る恐る、その名を呼ぶ。「ああ、そうだ。記憶を失っていると父から聞いていたが……何か思い出したのか?」「いいえ…それがさっぱり思い出せないのです」首を振って答える。「そうか……とりあえず中に入れてくれ。話がしたい」「あ、どうぞ」私は扉を大きく開け放し、招き入れた。シリウスお兄様はズカズカと部屋に入ると、テーブルの上に広げられた教
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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第67話 もうひとりの兄

「な、何者って……?」私の背中に冷や汗が流れた。「とぼけるな。お前本当は妹の姿そっくりに化けた別人だろう? 白状しろ!」兄が一歩近付いてくる。「そ、そんなこと言われても…」後ずさりながら、ジリジリ私は徐々に壁際に追い詰められていく。そんな兄は私を睨みつけながら迫ってくる。「あ……」ついに壁に追い詰められてしまった。ダンッ!!「ヒッ!」兄が両手を壁に付き、私は逃げ場を失ってしまった。「さぁ、答えろ。お前は何者だ? ユリアのフリをして一体何を考えている? 何が狙いなんだ? 本物のユリアを何処に隠したんだ!?」兄は私を睨みつけながら矢継ぎ早に答えを迫ってくる。無理だ、私は記憶喪失だと言うのに……答えられるはずがない。その時――バンッ!扉が突然開かれ、またしても見知らぬ青年が部屋の中に入ってきた。そして壁際に囲い込まれている私を見ると声を上げた。「シリウス! お前……ユリアに何をしているんだ!」大股で近づくとシリウスお兄様の肩をグイッとつかみ、私から引き離してくれた。「何をするんだ! 兄さん!」兄さん? それじゃ……この人が長男のアレス?「よせ! 父から聞いているんだろう? ユリアが馬車事故で10日間も意識が戻らなかったことを。お前は病み上がりの妹に何をしているんだ!」おお! アレス兄様は2番めの兄より理解力がある人なのかもしれない。「何が妹だ! あいつは妹のふりをした真っ赤な偽物かもしれないだろう!?」「何でそんな風に思うんだ? 何処からどう見ても俺たちの妹のユリアじゃないか!」「そんなこと信じられるか! 大体あいつは記憶喪失で何も覚えていないなんて言うんだぞ? それこそ怪しいじゃないか!」うんうん、確かに怪しまれても無理はない。記憶喪失なんですと言って、はい、そうですかと納得する人はそうそういないと思う、自分自身で怪しいと思うのだから、他の人から見れば余計怪しく見えるだろう。「まぁ、待て。落ち着くんだ。シリウス。いくら記憶喪失だからと言ってまるきり何もかも忘れているとは限らないだろう?」「え?」アレス兄さんが妙なことをいい出した。「あ、ああ……確かにそうかもしれないな。人間そう簡単に全ての記憶を無くすはずがないからな」シリウス兄さんが同意する。んん?「よし、それならユリアに簡単な質問をしてみればいいんだ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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第68話 息詰まる食卓

 そ、そんな……っ! 記憶喪失で自分のことも何一つ覚えていないのに、どうして母親の名前が分かるのだろう? 大体、何故母親が亡くなったのかも分からないのに!?「あ、あの……そ、それは……」背中に冷や汗が流れる。そう言えば父の話では私は兄達から嫌われているようだった。と言うことは……私を追い出す為にこのような質問をしているのだろうか?「どうした、ユリア。やはり答えられないのだな? だったら……」シリウスお兄様目が怪しく光る。「ああ、答えられないのだったら……」その時――バタンッ!突然扉が大きく開け放たれ、お父様が部屋の中に現れた。「アレスッ! シリウスッ! お前たち、ユリアの部屋で何をしているのだ!」「あ……父上……」「父上!」アレスお兄様とシリウスお兄様が驚いたようにお父様を見る。「一体お前たちという奴は……1年ぶりに帰ってきたかと思えば私の所へ顔も出さずにユリアの元へ行くとは……一体何を考えているのだ!?」えっ!? そうだったの!?「そ、それは……」「ユリアの様子を見に……長男としてユリアの様子が気になったので……」2人の兄はオロオロしている。「それにお前たち……ユリアは記憶喪失だと言っているだろう? それなのに母親の名前など答えられるとでも思っているのか!? 一体何を考えているのだ!」「「……」」あ! 黙ってしまった! やっぱり私が答えられなかったら難癖をつけてここから追い出すつもりだったのかもしれない!「……とにかくお前たち2人には話がある。荷物を置いたら速やかに私の執務室へくるように」「え? 荷物?」その言葉に驚く。何とよく見れば私の部屋の入り口に大きなトランクケースが2つ置かれているではないか。この2人は自分の荷物を持ったまま私の部屋にやってきていたのだ。「「はい……」」2人の兄は不満そうに返事をすると父に連れられ、トランクケースを引っ張りながら私の部屋を出ていった。「ふぅ……やっといなくなってくれたわ……」安堵のため息をつきながら、この先のことが非常に不安になってきた。「私……このまま何事もなく、この屋敷にいられるのかしら……」そして私は不安な気持ちを抱えつつ、再び勉強を再開した――****19時――カチャカチャカチャ……久しぶりに家族全員一家揃っての食事の団欒席……。それなのに、誰1人
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-24
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第69話 揺らぐ心

 1人、部屋に戻った私は頭を抱えていた。「どうしよう……兄たちは一体いつまでこの屋敷にいるつもりかしら。あの大きなトランクケースを見る限り今日、明日帰るとはとても思えないわ……」こんな時、ジョンがいてくれたら相談に……。え?「ジョンて……誰だったかしら……?」駄目だ、時折見に覚えのない人物がシルエットとして私の頭に浮かんでくる。けれども顔が少しも思い出せない。「私……記憶喪失だけでなく、とうとう記憶障害まで起こしてしまったのかしら?」その時。――コンコン扉をノックする音が聞こえてきた。だ、誰!? まさか……兄達では!?「は、はい!?」上ずった声で返事をする。「私だ、ユリア。入っていいか?」その声は父だった。……ああ、良かった……。「はい、どうぞ」すると、カチャリと扉が開いて父が姿を現した。「ユリア、実はお前に話があったのだが……ん? ひょっとすると勉強をしていたのか?」父はテーブルの上に教科書やらノートが広げてあるのを見たのか、尋ねてきた。「はい、そうです。成績不振で退学になるわけにはいきませんから」「何? 成績が悪いと退学になる? 誰がそんなことを言ったのだ?」「えっと、それは……」あれ? 誰にそんなことを言われたのだろう?「まさか成績が悪いからと言って退学にはならないだろう? こちらは多額の寄付金を支払っているのだから。しかし、勉学に励むのは良いことだ。ユリアは記憶喪失になってからは……うん、良い娘になったと思う」「本当ですか?」「ああ、以前のお前よりも今のほうが好ましい」「ありがとうございます!」良かった。少なくとも父は私の味方をしてくれそうだ。しかし問題は2人の兄たちである。彼らは私が偽物ユリアだと思っている。私は今の今迄自分がただの記憶喪失者だとばかり思っていたのだが、あの2人の出現でゆらぎ始めていた。ひょっとすると私は……偽物のユリアではないのだろうか?「どうした? ユリア。具合でも悪いのか?」父が心配そうに声をかけてきた。「い、いえ。大丈夫です」「そうか? なら良いが……それで話は変わるが、実はお前の為に護衛騎士をつけてやろうと思っていたのだが……」父がそこで黙る。「お父様、どうかされましたか?」「いや……以前、ユリアに護衛騎士をつけてやった気がするのだが……どうも私の勘違いだったよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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第70話 12日目の出来事

「これはお父様が下さったマジックリングでは無いのですか?」「いや、生憎私ではないな。でも……そう言えば馬車事故に遭ったお前がこの屋敷に運び込まれたときには既に指輪をはめていた気がするな」父は記憶を呼び起こすかのように眉間に手を当てながら答える。「そう言えば、私をこの屋敷まで運んでくれた方はどのような方だったのですか?」「うむ……それがフード付きのマントで全身を覆っていたために、顔まで見ることが出来なかったのだ。しかし、声の感じからすると若い男性だった気がするな」「フード付きマントに若い男性……」その言葉に何故か一瞬満月を背に立つ男性のシルエットが脳裏に浮かんだ。しかし、それはほんの一瞬のことですぐに私の脳内からは消え失せてしまった。「まぁ、今はまだ記憶が戻っていないからしようがないだろうな。それでは明日から学校へ行くというわけだな? あまり無理しないようにな」「はい、分かりました」「それじゃ、おやすみ、ユリア」「はい、おやすみなさい。お父様」そして父は部屋から出ていき、扉が閉じられた。それにしても……。「今のお父様の話し方……いずれ記憶が戻るように聞こえたわ……」私はポツリと呟いた――**** その日の深夜0時――「アフ……もう寝ましょう……」今日のノルマ予定の勉強も終わることが出来たので、部屋の明かりを消すとベッドに潜り込んだ。「……」しかし、父との会話が頭から離れず中々眠りに付くことができない。「フードの男性……何処かで見た気がするのだけど……」その時、本棚の一部がキラキラ光り輝いていることに気がついた。「え?」ベッドから起き上がり、光る本棚を見つめた。「何だか前にも本棚が光っているのを見た気がするわ……」よし、少し……と言うか、かなり怖いけれどもあの光の正体を確かめてみよう。恐る恐る本棚へ向かうと1冊の本が光っていることに気がついた。「こ、これが光っているのね……?」震えながら本を手に取ると、中のページが光っていることに気付いた。ゆっくりと光るページをめくり……。「え……?」そのページにはたった1行、こう書かれていた。『12日目経過』「な、何これ……?」何だろう? 以前にも似たようなことがあった気がする。けれど思い出そうとすればするほど記憶が遠のいていく。「……駄目だわ。何も分からない。とり
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-26
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