食後――「あの〜わざわざ部屋で見張っていただかなくても大丈夫ですから……」部屋の角でこの屋敷の警備をしている男性に私は声をかけた。「いいえ、そのようなわけには参りません。旦那様からユリアお嬢様の護衛を頼まれておりますので、今夜は寝ずの番をさせていただきます」私の身を案じた父がこの屋敷の警備員である自分に今夜は私の護衛につくように命じられた、と警備員は言うのだが……。いやいや、逆にこの状況ってどうなの?年若い女性の部屋に、これまた年若い男性を同じ部屋に一晩中一緒にいさせるつもりなのだろうか? 倫理的に見てもこの状況は絶対におかしいと思う。何やら別の意味で身の危険を感じてしまう。「父の話ではこの部屋に魔法の防御壁を張ったと聞かされていますけど?」「いいえ、そのようなわけには参りません。やはり室内の警備は怠るわけには参りませんので」あくまで頑なに拒否する警備員。「はぁ〜……」思わずため息をついてしまった。もういい、勝手にさせておこう。どうせ寝る時は出ていってくれるだろうから……。再び勉強に励むことにした。「……」無心にノートにペンを走らせていると、突然警備員の男性が話しかけてきた。「ユリアお嬢様」「はい」緊張する面持ちで返事をする。何か異変でも感じたのだろうか? 素人の私には分からないが、彼はプロ? の警備員なのだから。「……随分熱心に勉強に励んでいるのですねぇ」「は?」「いやはや驚きです。ユリアお嬢様は勉強が嫌いで、学園内のお荷物と伺っていたので。ところがどうでしょう。こんなに熱心に勉強されているのですから驚きです」「……はぁ……そうですか」「一体何故、それほど熱心に勉強されているのですか? もしよければ理由を教えて下さい」何? この警備員はひょっとして退屈なのだろうか? そう言えば先程2,3回欠伸らしきものをしている姿を目にしたっけ……。今度は暇で話しかけてきたのかもしれない。「……言われたからですよ」「え? 何をですか?」「勉強するように言われたからです」「旦那様にですか?」「まさか……違いますよ。成績が酷くて退学になったら困る人がいて、その人に勉強する様に言われたからです」「その人って……誰ですか?」「それは……あ」そうだ……私、何言ってるのだろう? 誰にそんなこと言われた? 大体私にはそんなに親し
Terakhir Diperbarui : 2025-06-20 Baca selengkapnya