「ジョ、ジョン!? 一体貴方は……?」腰が抜けながら目の前に立つジョン? を指さした。「ユリア……やっぱりまだ完全に記憶が戻っていないんだね? まぁまだ60日経過していないから無理か……」ジョン? は妙なことを言う。「あ、貴方……一体何者よ!」しかし彼は質問に答えない。「そんなことよりもユリア! どうして屋敷に戻って来たんだ? 折角閉ざされた空間に穴を開けて逃がしたのに、また戻って来るなんて! 命が惜しくはないのか? 自分でも分っているんだろう? ユリアの命を狙っている存在がどれだけ危険か」「ええ、分ってるわ。危険人物なことくらい。だけど……だからこそ貴方だって十分私にとっては危険人物なのよ! 一体貴方は何者なの!?」腰が抜けて動けないけれども、それでも気丈にふるまって目の前のジョンを指さす。「僕はユリアに命を狙われているから助けて欲しいと頼まれた者だよ。森の中に住んでいる魔導剣士だ」「ま、魔導剣士……?」何それ? 初耳だ。私が依頼した? けれど……そう言えば何度か夢で森の中を歩いている夢を見た気がする。「魔導剣士と言うのは、魔法使いでありながら剣を持って戦える者を指す言葉さ。君は僕の話を聞きつけて、自らの足で訪ねてきたんだよ。と言っても覚えてはいないだろうけど……静かに!」突然私の口を塞ぐと静かにしているように目くばせする。すると何者かの足音がこちらへ向かって近付いて来る音が聞こえてきた。『ユリア……一体何所へ消えたんだ……』その言葉に背筋が凍りそうになる。あの声は紛れもなくジョンの声だ。でも未だに信じられない、いや。信じたくは無かった。まさかあの私の護衛騎士だったはずのジョンが命を狙っていた人物だったなんて……。「大丈夫だ、今のあいつにはユリアの気配はまだ感知することは出来ない」ジョン? が耳元で囁くように言う。私は返事をしない代わりに、素早くコクコクと頷いた。やがて徐々に足音が遠くなっていき……完全に聞こえなくなってしまった。「よし……行ったようだな。今、この屋敷はあいつによって外部との空間が閉ざされている。この空間を破るには奴を倒すか、傷を負わせて弱らせるしか方法が無い。僕は今から奴の元へ行く。ユリアはここに隠れているんだ」「ちょ、ちょっと! 一体貴方は何日ここで戦っているのよ! あれから10日も経過しているのよ!
Huling Na-update : 2025-07-17 Magbasa pa