「うそ……」 中間試験から一週間が過ぎたその日。 貼り出された主要9科目の成績優秀者を見て、早苗〈さなえ〉がそうつぶやいた。 この高校に入学して一年。実力試験を入れて過去に5回、トップを譲ったことは一度もなかった。 しかし今回、一番上に書かれた名前は意外な人物だった。 藤崎柚希〈ふじさき・ゆずき〉 895点 2位の早苗は864点。全科目満点に近い柚希に完敗だった。「藤崎くん、すごいじゃない」「やっぱ都会って、レベル高いんだな」 教室に戻ると、柚希の席をクラスメイトたちが囲んでいた。「そんなこと、ないよ……今回はたまたま……」「謙虚なところが、また格好いいよね」「ねえねえ、今度勉強教えてよ」「おい藤崎。お前だけは、お前だけは仲間だと思ってたのに……」「いやいや、万年赤点のお前と仲間って、俺でもお断りだぞ」 柚希を中心に、クラスが盛り上がっている。 その光景は新鮮で、心地よいものだった。 トップを奪われたことは悔しい。 しかし相手が柚希であることが、少し嬉しかった。 そしてそのことで話題の中心になっている柚希が、困惑気味に赤面している様を見ていると、悔しさもどこかに飛んでいくようだった。「柚希―っ、あんた、私を騙したわねーっ!」 早苗は柚希の席に近付くと、背後からチョークスリーパーをかけてきた。「ちょ……さなっ……小倉さん……」「なーにが小倉さんだー? あんたバカな顔してバカな振りして、よくも私の指定席を奪ったわねー」 早苗がそう言って首を絞める。一瞬、トップを奪われた早苗の乱入で静まった教室だったが、早苗の表情がいつもの物だと分か
Huling Na-update : 2025-05-04 Magbasa pa