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Lahat ng Kabanata ng 銀の少女: Kabanata 11 - Kabanata 17

17 Kabanata

第3章 過去の傷跡 1/4

 「うそ……」 中間試験から一週間が過ぎたその日。 貼り出された主要9科目の成績優秀者を見て、早苗〈さなえ〉がそうつぶやいた。 この高校に入学して一年。実力試験を入れて過去に5回、トップを譲ったことは一度もなかった。 しかし今回、一番上に書かれた名前は意外な人物だった。  藤崎柚希〈ふじさき・ゆずき〉 895点  2位の早苗は864点。全科目満点に近い柚希に完敗だった。「藤崎くん、すごいじゃない」「やっぱ都会って、レベル高いんだな」 教室に戻ると、柚希の席をクラスメイトたちが囲んでいた。「そんなこと、ないよ……今回はたまたま……」「謙虚なところが、また格好いいよね」「ねえねえ、今度勉強教えてよ」「おい藤崎。お前だけは、お前だけは仲間だと思ってたのに……」「いやいや、万年赤点のお前と仲間って、俺でもお断りだぞ」 柚希を中心に、クラスが盛り上がっている。 その光景は新鮮で、心地よいものだった。 トップを奪われたことは悔しい。 しかし相手が柚希であることが、少し嬉しかった。 そしてそのことで話題の中心になっている柚希が、困惑気味に赤面している様を見ていると、悔しさもどこかに飛んでいくようだった。「柚希―っ、あんた、私を騙したわねーっ!」 早苗は柚希の席に近付くと、背後からチョークスリーパーをかけてきた。「ちょ……さなっ……小倉さん……」「なーにが小倉さんだー? あんたバカな顔してバカな振りして、よくも私の指定席を奪ったわねー」 早苗がそう言って首を絞める。一瞬、トップを奪われた早苗の乱入で静まった教室だったが、早苗の表情がいつもの物だと分か
last updateHuling Na-update : 2025-05-04
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第3章 過去の傷跡 2/4

 「適当に座ってて。麦茶入れてくるから」 早退した二人は一旦、柚希〈ゆずき〉の家に入った。 早苗〈さなえ〉の家には連絡がいってるだろうし、心配していると思った。しかし、早苗をこの状態で帰す訳にはいかない。 少しでも元気な顔に戻ってから帰ってほしい、そう思っての柚希の配慮だった。 帰り道、早苗は柚希と一言も言葉を交わさなかった。 柚希は何度か会話を試みようとしたが、早苗の雰囲気に言葉を飲み込んでいた。「うん、ありがと……」 眼鏡を外した早苗が、そうつぶやいた。  * * * 早苗が柚希の部屋に入るのは、これで二度目だった。 家には何度も入っているが、いつも一階の居間で用事を済ませていた。 こうして入るのは引越しの手伝いの時以来。そういう意味では初めてとも言えた。 柚希が部屋から出て行くと、早苗は鞄を置いてベッドに腰掛け、部屋を見回した。 そう言えば私、男子の部屋に入るのは初めてなんだよね。そう思うと、変に緊張した。「……」 殺風景な部屋だった。 男子の部屋って、こんな感じなのかな。それとも柚希が変わってるのだろうか。 そう言えば、テレビでよく見る男子の部屋は、大抵趣味が形になったような感じだったな。そう思った。 柚希の部屋は、今彼女が腰掛けているベッドの他に勉強机、ステレオと本棚がひとつあるだけ。 早苗の部屋の様に、ポスターが貼られていることもない。 無機質という言葉が一番しっくりくる、そんな感じの部屋だった。「そっか、柚希の趣味ってば写真だよね。確かそれって、隣の部屋に作った暗室でやってるんだっけ。 でもそれにしても、生活感のない部屋だな」 その時、机の上の小さな箱が目に入った。 箱の中には、父が仲のいい友人とたまにしている、花札のようなサイズの何かがぎっしりと並べられていた。 手前のひとつを手に取ると、それは写
last updateHuling Na-update : 2025-05-05
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第3章 過去の傷跡 3/4

 (そう言えば柚希〈ゆずき〉、最近学校にカメラを持ってきてたよね。流石にテスト期間中はなかったけど、でもテストが終わるとまた持ってきて……授業が終わるとすぐ帰ってたし、それに最近、やたらと機嫌がよかったし……)「あ、これ」 綺麗に詰められていた筈のフイルムが、歪〈いびつ〉になっているのが柚希の目に入った。「ひょっとして見た?」「え? あ、あははははははっ。ごめんね、何かなって思って」「そっか。いいんだけど、ちょっと恥ずかしいかな」「ねえ柚希。そのフイルムなんだけどさ、どうして色がついてるの?」「これはちょっと変わったフイルムでね、ポジって言うやつなんだ」「ポジ?」「うん。正式にはリバーサルフイルム。普通のフイルムは色が反転してるんだけど、こいつは写真と同じ色の優れものなんだ。 そして、マウント仕上げって言うんだけど、こうして一枚ずつケースに入った状態にしたら、スライドで見ることも出来る。何より、普通のフイルムよりも色に深みがあるんだ。 普通のフイルムも使ってるけど、僕はこっちの方が好きなんだ」「二種類のフイルムを使ってるんだ。なんだかほんと、プロって感じだね」「そんなたいした物じゃないよ。好きなだけだから」「謙遜謙遜。それに柚希ってば、フイルムも自分で現像? だっけか、してるんだよね」「こっちは無理なんだ」「こっちって、そのスライドネガ?」「スライドネガね、ははっ……こっちのネガを自分で現像しようと思ったら、とんでもなく高い機械を買わないといけないんだ。近所の写真屋さんに持っていくんだけど、そこも機械を置いてないから、大きい現像所に持っていってるんだ」「そっかぁ。でも面白いフイルムだよね。ねえねえ、今度柚希が気に入ってる写真、スライドで見せてよ」「……だからこれは知られたくなかったんだ。スライドなんかで見られたら、恥ずかしさ倍増だよ」
last updateHuling Na-update : 2025-05-06
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第3章 過去の傷跡 4/4

 「ふうー」 早苗〈さなえ〉が大きく伸びをする。「ごめんね柚希〈ゆずき〉。今日は色々と取り乱しちゃったよ」 そう言って笑う。その笑顔は、いつもの早苗だった。「でもこれで柚希は、ある意味本当の弟分になった。隠してた秘密も見せたことだし」「弟分って」「何よ、不満? 確かに歳は上だけど、柚希は私の可愛い弟なんだからね」「ははっ、やっぱりそうなるんだね」「勿論よ。だからこれからも、お姉ちゃんを崇め奉りなさい。そして頼りなさい。 それから柚希、あんたほんとに山崎のこと、大丈夫? 今日の態度見てたらあいつ、これからも嫌がらせしてくると思うよ」「大丈夫だよ。気をつけようとは思ってるけど」「まあ、学校では私がしっかり守ってあげるから。何かあったらすぐに言うんだよ」「うん、ありがとう」「それから柚希」「何?」「もうひとつ、あんたに聞いておきたいことがあるんだけど」「え、何? 早苗ちゃん、ちょっと顔、怖いよ」「あんた! 私に黙ってたでしょ、頭がいいこと!」「え? そ、そんなこと」「そんなことあるわよ。あんたねえ、私が今までトップをキープするのに、どれだけ頑張ってきたと思ってるのよ。それをまぁ、あんなにあっさりひっくり返されて。しかも点数的にも完敗で……あんたに勉強教えてあげるって言った私の優しさ、今すぐ返せ」「いや、そんなこと言ったって……たまたまだよ」「たまたまで負かされてたまるもんですか。ちょっと柚希、あんた偏差値いくらよ。正直に言いなさい。ちなみに私は65よ」「……」「言いなさい!」「わ、分かったよ早苗ちゃん。言う、言うから……確か74……だったと思う」「74ってあんた……私、そんなやつに勉強教
last updateHuling Na-update : 2025-05-07
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第4章 穏やかな日々 1/6

  試験が終わってからも毎日、柚希〈ゆずき〉は紅音〈あかね〉と会っていた。 二人共会えば会うほどに、もっと自分を知ってほしい、相手のことを知りたいという気持ちが強くなっていった。 話は尽きることなく、いつも時計のアラームがなると、互いにがっかりとした表情を見せるのだった。 別れる時、紅音は毎回柚希を抱擁し、頬に口付けをした。 初めてされた時は困惑したが、それが紅音の親愛からくる行動だと理解し、受け入れるようになっていた。 流石に今でも気恥ずかしいが、受け入れた時の紅音の嬉しそうな顔が忘れられなくて、それが二人にとっての挨拶のようになっていた。  * * * 柚希の風景写真を見た時、紅音は感極まって涙を浮かべた。「柚希さんの写真には、柚希さんの心がそのまま写っています……私、構図とかはよく分かりませんが、柚希さんから見た私の街は、こんなに美しくて優しいんだ。そう思うと嬉しくて……そして、そんな街で生きていることが幸せで…… 柚希さんの写真は、見る人全てを幸せにしてくれます」 流石にここまで褒められると、穴を掘って隠れたくなった。 自分自身、写真の腕はまだまだだと思っていた。 シャッター速度や絞りのデータにしても、写真雑誌などで覚えたものをそのまま試し、試行錯誤している状態だ。 ひと言でデータと言っても、カメラやレンズの性能、その時の天候などの条件で大きく左右されるし、自分が思っているイメージをそのまま表現することの難しさに、日々悪戦苦闘している。 フイルムの現像や、写真を手焼きする技術もまだまだである。 そして何より、その時の自分の精神状態がそのまま映し出されることを、強く感じていた。 世界と時間を切り抜く「写真」の奥深さに、独学での限界を感じてもいた。 しかしここに越してきて、少し自分の撮る写真が変わってきたという実感は持っていた。 都会にいた時よりも、穏やかで温かみを感じる写真
last updateHuling Na-update : 2025-05-08
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第4章 穏やかな日々 2/6

 「症状は安定してるようだね。この調子なら、軽い運動ぐらいは大丈夫だ」「ありがとうございました」 上着を着て、柚希〈ゆずき〉が明雄〈あきお〉に頭を下げた。  * * * ある日曜日。 桐島医院で柚希が、初めての診察を受けていた。「折角の日曜にすいませんでした。僕一人の為に、病院を開けていただいて」「気にすることはないよ。この辺りにはうちぐらいしか病院がないからね、住人が調子を崩したらいつも診ている。それに、今日を指定したのは紅音〈あかね〉だろ? 柚希くんの方こそ、折角の日曜なのにすまなかったね」「いえ、診てもらった上に、今日は家にまでお邪魔させていただきます。本当すいません」「はっはっは、君は本当に礼儀正しいな。紅音が言ってた通りだ。なに、紅音が初めて家に、友達を招くんだ。こんなに嬉しいことはない」「僕にとっても紅音さ……桐島さんは、初めての友達なんです。だから僕も嬉しくて」「似たもの同士という訳だね。とにかくよろしく頼むよ。それで、なんだが……柚希くん。君は紅音の病状について、どこまで知っているのかな」「あ、はい。色素の薄い体質、なんですよね」「うむ。紅音はね、生まれた時は本当に真っ白な赤ん坊だった。体毛もほとんどなくて、正直長く生きられるのだろうかと心配したものだ。おかげで子供の頃はよく体調を崩して、同じ年頃の子供たちと遊ぶことも出来なかった。 元々素養もあったようだが、そういった環境が、紅音をどんどんと内向的な子供にしてしまった」「……」「だが、最近の紅音はよく笑うようになった。長年共に過ごしてきたが、あんなに楽しそうにしている紅音を見るのは初めてと言っていい。今日君と会って、その理由が分かった気がするよ。ありがとう、柚希くん」「僕の方こそ、桐島さんにお世話になりっぱなしで。それによく誤解させてしまって、泣かせてしまったこともありまして。申し訳なく思ってます」
last updateHuling Na-update : 2025-05-09
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第4章 穏やかな日々 3/6

  桐島家は、病院のすぐ裏手に隣接していた。 立派な門構えを見て柚希〈ゆずき〉は、漫画に出てくる大金持ちの邸宅のようだと思った。 屋敷に足を踏み入れると、大広間になっていた。 ここでなら、ダンスパーティーだって開ける。柚希はそのスケールに圧倒され、息を呑んだ。 「柚希さん!」 奥から、紅音〈あかね〉とコウが小走りで出迎えてくれた。 今日は鮮やかな、濃紺のワンピースを着ている。 髪には黒いリボンが結ばれていた。「お父様。柚希さんの具合はどうでしたか?」「心配ないよ。症状は安定している」「よかった……ありがとうございます、お父様」 そう言って紅音は明雄〈あきお〉を抱擁した。そして柚希の方を向くと、手を取った。「柚希さん、今日は来てくれてありがとうございます。折角の日曜なのにすいません」「いえ、僕の方こそ……ありがとう紅音さん。家に呼んでもらって、お昼までご馳走に」「二人を見てると」 明雄が割って入ってきた。「お見合いでもしてるみたいだね」「お見合い! お父様ったら……」 紅音が頬を染めてうつむく。柚希も思わず赤面した。 そうだった、今は紅音さんのお父さんと一緒だった……考えてみたらこの状況、かなり恥ずかしいぞ……「はっはっは。さあ、食堂に行こうか。晴美〈はるみ〉くんが待ってるよ」「そ、そうですね。柚希さん、食堂はこちらです」 紅音が柚希の手を引く。 柚希はうつむきながら小さくうなずき、紅音の後に続いた。  * * * 食堂も広かった。 何より天井が高い。 そして、10人は座れそうな長いテーブル。 紅音は自分の隣の椅子をひき、そこに柚希を誘った。
last updateHuling Na-update : 2025-05-10
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