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All Chapters of 【完結】銀の少女: Chapter 61 - Chapter 64

64 Chapters

第9章 贖罪の十字架 9/9

 「ありがとうございます、紅音〈あかね〉さん……そんな風に想ってもらえて、本当に嬉しいです」「柚希〈ゆずき〉さん……」「正直に言いますが、実は僕も、紅音さんに告白しようって、ずっと思ってました」「え……」「でも中々勇気が出なくて……だから僕も今、紅音さんに告白します。僕も紅音さんのことが、好き……です……」「柚希さん……」「駄目ですね、女の子にこんな恥ずかしいことを言わせるなんて。僕がしっかりと、先に告白するべきでした」「ふふっ、確かにそうかも。私はともかく、早苗〈さなえ〉さんにはそうしてあげるべきでしたね」「ええっ? 紅音さん、知ってたんですか?」「はい。早苗さんはお友達ですから」「参ったな……これじゃあ僕って、本当に空気の読めない唐変木〈とうへんぼく〉じゃないですか」「はい、晴美〈はるみ〉さんもそうおっしゃってました」「あはははっ……面目ない」「ふふっ……でもこれで、気持ちがすっきりしました」「……」「……この想いだけは、どうしても伝えたかったんです。でも出来れば、こんなことになる前に伝えたかったです」「紅音さん……」「早苗さんにはもう、お返事されたんですか?」「あ、いや……それはまだ……」「駄目ですよ。想いを告げられた殿方としての責務、ちゃんと果たさないと」「でも……」「でも、じゃないですよ、柚希さん。早苗さんは本当に素敵な方です。私がもし男だったら、間違いな
last updateLast Updated : 2025-06-23
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最終章 夏の終わり 1/3

  祭りの最中、突如として死の大地になった神社。 その衝撃的なニュースは、のどかな自然が広がるだけだったこの街を、一夜にして日本一有名な街へと変えてしまった。 毎日の様に空を旋回する報道ヘリ、街を歩けばカメラを向けられ、コメントを求められた。 また、この日を境にして忽然と姿を消した5人の行方もつかめず、週刊誌が「現代の神隠し」との見出しで騒ぎ立てた。 神社の境内では、今も調査が続いていた。 原因が全く分からない、この奇怪な現象。 土は死に絶え、向こう10年は何も育たないだろうとも言われた。 山の中腹に出来た楕円形の荒地には、神々からのメッセージなのではないか、UFOが降り立った跡なのではないか、などと言ったゴシップ的な噂も流れ、世間は無責任に盛り上がった。 しかしいくら調べても特に進展することもなく、二週間も過ぎた頃には世間の熱も冷め、報道する回数も日に日に減っていき、街は少しずつ平穏な日常に戻っていった。  * * * 柚希〈ゆずき〉や早苗〈さなえ〉も、元の生活を取り戻しつつあった。 あの日の後、柚希は早苗と孝司〈たかし〉に全てを打ち明けた。 最初の内は二人共、余りに荒唐無稽なその話を信じることが出来なかった。しかし、紅音〈あかね〉を失った柚希の真摯に語るその姿に、少しずつ受け入れる姿勢になっていった。 そして何より、クラスメイトの三人が神隠しにあったこと、神社で起こった、誰人にも説明出来ないこの異様な現象を、ある意味何の矛盾もなく説明出来る柚希の話は、受け入れるに値するものでもあった。 孝司は今、全てを信じることは出来ない。ただ柚希のことを信用している以上、この話を受け入れない訳にはいかない、そう言った。 そして柚希の願い通り、このことは一切他言しない、そう約束した。 早苗はショックを隠しきれなかった。 早苗がいつも感じていた、柚希と紅音の深い絆。そこにこれ程までの理由があったのかと思うと、体の震えが止まらなかった。 紅音が、そして柚希がこれまで背負っていた十字架の
last updateLast Updated : 2025-06-24
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最終章 夏の終わり 2/3

  風が少し、強く吹いた。「え……」 早苗〈さなえ〉が顔を上げ、柚希〈ゆずき〉を見つめる。 そこには早苗の大好きな、穏やかな笑顔があった。「早苗ちゃん。好きです」 聞き間違いじゃない。 柚希は今、自分のことを好きだと言った。「あ……」 早苗が声にならない声を漏らし、その場にへなへなと座り込んだ。「だ、大丈夫? 早苗ちゃん」 柚希が早苗の腕をつかみ、慌てて自分も腰を下ろした。「私の耳……変になったかも……」「早苗ちゃん、変になってないよ……って言うか、どう聞こえたの?」「柚希が私のこと、好きって……付き合ってって……」「うん。僕、今そう言ったよ」「本当? でも、どうして……」「僕が早苗ちゃんのこと、好きだから」「そんなこと……だって柚希は、紅音〈あかね〉さんのことが……」「確かに僕は、紅音さんのことが好きだった。今も好きだよ。この気持ちは、これからも変わらないと思う」「だったら」「僕は早苗ちゃんから気持ちを伝えられた時、少し時間がほしいって言った。それは僕の中に、早苗ちゃんと紅音さん、二人の女の子が間違いなくいたからなんだ。 だから僕は、自分にとって何が本当なのか、考えたかった。それをずっと、ずっと、考えてた」「……」「あの日、僕はこの場所で、紅音さんから告白されたんだ」「紅音さんから……」「嬉しかった。憧れの紅音さんからそんな風に想ってもらえて……でもね、同時に紅音さん、僕を振ったんだ。『でも、柚
last updateLast Updated : 2025-06-25
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最終章 夏の終わり 3/3

 「じゃあ柚希〈ゆずき〉、そろそろ帰ろうか。準備も出来てると思うし」「なんか悪いな。僕なんかの誕生日で」「ゆーずーきー」 柚希の耳たぶを、早苗〈さなえ〉が力一杯に引っ張る。「いたたたたたたっ、ごめん、ごめんってば、早苗ちゃん」「あんたねえ、たった今彼女になった私の前で、よくも僕なんかって言ったわね。それってさ、そんな男を好きになった私に対する侮辱だよ?」「いたたたたたたっ、だからごめん、ごめんって」「もう言わない?」「言わない言わない」「よし、許した」 早苗が耳たぶを離す。「はあっ……結構本気で痛かったよ」「じゃあ」 そう言って、柚希の頬にキスをした。「わっ……さ、早苗ちゃん、恥ずかしいよ……」「おまじないよ、おまじない。痛いの痛いの飛んでけーってやつ」「……でも今の、さっきのキスより恥ずかしかったかも……」「も、もう馬鹿柚希、そんなに照れないでよ。私まで恥ずかしくなるじゃない」「むふふふっ」 聞き慣れた笑い声。 二人が慌てて振り向く。 コウを連れた晴美〈はるみ〉だった。「むふふふっ。お邪魔だったでしょうか」「……し、師匠?」「いや、だから晴美さん、いつもなんてタイミングで出てくるんですか」「むふふふっ。別に私、隠れてお二人の愛の告白を一部始終、盗み聞きなんてしておりませんからご安心を」「師匠―っ!」 早苗が顔を真っ赤にして叫ぶ。「ははっ……全部、見てたんだ……」「いえいえ、これはあくまでもアクシデントでございます。コウを連れて早苗さんのお宅に伺う道中、偶然お二人の姿
last updateLast Updated : 2025-06-26
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