玄関を開けた柚希〈ゆずき〉が、意外な来訪者に驚く。「柚希くん、具合はどうだね」 白衣をまとった長身の男性。 それは紅音〈あかね〉の父、明雄〈あきお〉だった。「先生……」「話は晴美〈はるみ〉くんから聞いているよ。来るのが遅れて申し訳なかったが、紅音の側から離れられなくてね」「紅音さんは、その……大丈夫なんですか」「ああ、おかげさまでね。今は薬で眠らせているが、状態は安定しているよ」「そうですか。よかった……」 柚希が安堵の息を漏らす。 その飾らない素直な反応に、明雄が満足そうに微笑む。「で、なんだが……よければ少し、お邪魔して構わないかな。傷の具合も気になるのでね」「すいません、気がつかなくて。どうぞこちらへ」「失礼するよ」 柚希は一階の居間に通そうとしたが、診察を受けるのならベッドがある方がいいかも知れない、そう思い、二階の自分の部屋に明雄を招いた。 * * *「ここが柚希くんの部屋か」「すいません。ずっと寝てたので散らかってますが」「いやいや、想像してた通りの部屋だね。正に君の城って感じだ」「城、ですか?」「ああいや、まずは診察するとしよう。上着、脱げるかな」 柚希は明雄の指示に従い、上着を脱いでベッドに横たわった。 包帯を取り、傷口を調べながら明雄は、怪我をした時の状況を柚希に尋ねた。「骨に異常もなさそうだし、傷も順調に回復してる。それに、誰が処置をしたのか知らないが、見事なものだ」「隣に住んでる、同級生がしてくれました」「晴美くんがやったとしても、そう変わりがないぐらいに的確な処置だ。その子にはしっかりお礼をしておくんだね」 そう言って鞄から錠剤を三種類ほど取り出すと、柚希に差し出した。
Terakhir Diperbarui : 2025-05-24 Baca selengkapnya