Semua Bab 【完結】銀の少女: Bab 51 - Bab 60

64 Bab

第8章 揺れる想い 7/8

  夏祭り前日。 柚希〈ゆずき〉と早苗〈さなえ〉は、紅音〈あかね〉の家に来ていた。 柚希は書斎で、明雄〈あきお〉と話をしている。 そして早苗は、紅音の部屋にいた。「では……参りますよ、早苗さん」 晴美〈はるみ〉の声がして、扉が開いた。「おおおっ! 紅音さん、やっぱ可愛いー!」 早苗が歓声を上げた。 紅音は明日、夏祭りに着ていく紺の浴衣を身に纏っていた。「さ、早苗さん……そんな、あんまり見ないでください……恥ずかしいです……」 紅音が頬を赤らめ、恥ずかしそうにうつむく。「いやいや、そのリアクションは柚希に取っとかないと。私相手にそれするのって、何か勿体無いから」 早苗が冷静に突っ込む。「でも……」「むふふふっ。お嬢様、これで準備は整いました。明日は柚希さんを、是非射止めてくださいませ」「ええっ? は、晴美さん、変なこと言わないでください」「……紅音さん」 早苗が静かに紅音の前に立ち、肩に手を乗せた。「私……今日ほど女に生まれたこと、後悔したことはないわ」「……それってどういう」「私の嫁になって!」「きゃっ」 勢いよく抱きついてきた早苗に、紅音が思わず声を漏らした。「もう、早苗さんまで……」「あはははっ。でも本当、紅音さん可愛いよ。柚希も明日、きっとそう思うよ」「柚希さんにこの姿を……」 紅音が改めてそう意識し、再び顔を染め上げた。「浴衣姿の美女二人、これで何も感じなかったらあの馬鹿、今度こそ本当にチョークスリーパーで落としてやるんだから」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-13
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第8章 揺れる想い 8/8

 「早苗〈さなえ〉さん、最近元気がないように見えます」「え? いきなりどうしたの」 浴衣を脱ぎ、いつものドレス姿に戻った紅音〈あかね〉が、ぼんやり頬杖をついている早苗にそう言った。 晴美〈はるみ〉はキッチンに戻っていた。「何か悩みごとでもあるのでしょうか」「どうして? 私ってば、いつも通りだと思うけど」「はい。確かに早苗さんはいつも元気で、明るく私と接してくれています。でも、最近の早苗さんは……うまく言えませんが、元気な振りをしていると言うか」「あはははははっ。紅音さん、そんなことないって。私は元気印の健康優良児、悩み知らずの能天気娘なんだから」「早苗さん」 紅音が顔を近付け、早苗の目をまっすぐ見つめた。「ちょ、ちょっと紅音さん……顔、近すぎるって……」「……早苗さん」「あか……」「私たち、お友達ですよね」「え……あ、はい……」「早苗さんが言ってくれました。私のことを友達だって。私、本当に嬉しかったんです。 友達って、どんな悩みも打ち明けあえる仲なんだって、そう本に書いてありました。私、早苗さんの力になりたいんです」「本……ね、ははっ」「私、いつも早苗さんや柚希〈ゆずき〉さんにご迷惑をかけています。そんな自分がもどかしくて……自分もお二人の力になりたい、そう思ってるんです。 早苗さん。私では早苗さんのお力になること、出来ないでしょうか」「そんなこと……そんなことないよ」 紅音が再び、早苗を見つめる。 そしてしばらくすると目を閉じ、早苗から離れて言った。「柚希さんのこと……ですね」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-14
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第9章 贖罪の十字架 1/9

  三人が待ちに待った、夏祭りの日がやってきた。 山の斜面の長い参道は、遠目に見ても華やかな灯りで彩られている。 祭りは18時から始まるが、紅音〈あかね〉の家には19時に行く約束をしていた。 それは紅音が早苗〈さなえ〉と柚希〈ゆずき〉に、少しでも二人だけの時間を過ごしてほしい、そう思っての配慮だった。 勿論そのことは伏せ、人混みに出る前に父の診察を受ける為と説明していた。  * * *「柚希―、準備出来たー?」 玄関から、早苗の陽気な声が聞こえる。 その声に、柚希は慌ててカメラバックを持ち、「今行くからー」 そう言って玄関に向かった。「あ……」 玄関を開けた柚希が、早苗の姿に言葉を失った。 赤を基調に彩られた浴衣姿の早苗は、これまで柚希が知っているどの早苗とも違う、艶やかな雰囲気を漂わせていた。 短い髪には簪が付けられていて、それが夕陽に反射して輝いていた。「……こんばんは、柚希」 早苗が恥ずかしそうにうつむく。「う、うん……こんばんは……」 いつも部屋では短パン姿で、それに比べたら露出度も遥かに少ない。それなのに今の早苗には、言い様のない色気と妖艶さがあった。「柚希、その……感想とか……言ってくれないの」「え……」「だーかーらー、感想よ、感想。女の子がこうしておめかししてるんだから、感想のひとつぐらい言うのが男の甲斐性でしょ」「あ、ご、ごめん、その……とっても綺麗だよ、早苗ちゃん」「ひゃんっ」 柚希の直球に、早苗は顔を真っ赤にして身をよじらせた。「も、もう……馬鹿柚希、あんたストレートす
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-15
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第9章 贖罪の十字架 2/9

 「こんばんわーっ」 紅音〈あかね〉の屋敷のインターホンに向かい、早苗〈さなえ〉が元気よく声を上げた。 そしてしばらくして、紅音〈あかね〉が晴美〈はるみ〉と共に玄関から出てきた。  一歩一歩と近付いてくる紅音の浴衣姿に、また柚希〈ゆずき〉の顔が赤くなった。 その柚希のわき腹を肘で殴り、早苗が意地悪そうに笑った。「げほっ、げほっ……早苗ちゃん、いきなりの攻撃は……」「馬鹿柚希。見惚れる前に褒めなさいって、さっき言ったよね」「そうなんだけど……」「何? 何か不満でも?」「ないですないです。その……紅音さん、こんばんは」「こんばんは、柚希さん」「あの、その……浴衣、とても似合ってます……」「そ、そんな……柚希さん、恥ずかしいです……」 紅音がその場で真っ赤になった。「紅音さん、やったね」「むふふふふっ。お嬢様、これでまた一歩、野望に近付きましたよ」「なんですか、晴美さんまで」「むふふふふっ。浴衣美女に囲まれて、柚希さん、男冥利につきますね」「ねえ師匠。折角だから私たち三人、撮ってもらえません?」 そう言って、早苗が柚希に手を出した。「は、はい……」 柚希は観念した様子で、早苗にポケットカメラを手渡した。「お願いしまーす」 紅音を呼び込み、柚希の隣に立たせると、早苗も反対側に立った。 晴美がポケットカメラを構え、ファインダーを覗き込む。「では参ります。お嬢様、ご発声を」「あ、はい……1+1は?」「にーっ!」 カシャ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-16
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第9章 贖罪の十字架 3/9

 「早苗〈さなえ〉さんの弟さん、だったんですね」「はい、昇〈のぼる〉くんって言います。確か今、小学6年です」「そうなんですか。可愛い男の子でしたね」「ですね。元気で明るくて、早苗ちゃんそっくりなんです」「ふふふっ」 テントの下に長椅子が置かれた休憩所に、二人は並んで座っていた。 買ってきた林檎飴を舐めながら、柚希〈ゆずき〉は紅音〈あかね〉を気遣って言った。「疲れてませんか?」「はい。なんだか今日は、とっても気分がいいんです」 紅音の嬉しそうなその笑顔は、柚希の胸をまた熱くした。 少し暑いのか、紅音の首筋に汗が流れている。 柚希はハンカチを取り出すと、それを首筋にそっと当てた。「きゃっ」「す、すいません……汗を拭こうと思って」「あ、いえ……ありがとうございます……」 そう言って紅音は、頬を赤らめてうつむいた。 柚希がハンカチを、首筋に優しく当てて汗を拭う。「……なんだかこうしてもらってると、柚希さんと初めて会った日のこと、思い出します」「初めて会った日、ですか」「はい。私、今でもはっきりと覚えています」「僕もです。出会いはコウが」「はい。コウが柚希さんの顔を舐めて……柚希さんの顔の傷、コウがつけたんだと思って驚いて……」「そして紅音さんが、僕の傷をこうして」「もう、随分前のことのようです」「そうですね。まだ出会って4ヶ月なのに、紅音さんのこと、ずっと昔から知っていた様な気がします。でも紅音さん、これからの時間の方が、ずっとずっと長いですからね」「はい。きっとこれからも、楽しいことがいっぱい待ってくれているんでしょうね」「楽しいことだらけですよ、きっと」「ふふっ、待
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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第9章 贖罪の十字架 4/9

 「早苗〈さなえ〉さん、遅いですね」「そうですね。もうすぐ花火の時間ですし、そろそろ紅音〈あかね〉さんの家に向かわないと」「もう少し待ってから、探しに行きましょうか」 花火の時間が近付いてきたこともあり、皆いい場所を取ろうと動き始め、休憩所には柚希〈ゆずき〉と紅音、二人だけになっていた。「僕、ちゃんと花火を見たことがないんです」「そうなんですか。この街の花火はきれいですよ。それに大きくて、ひとつの花火で何度も何度も光って」「そうなんですね。楽しみです」「晴美〈はるみ〉さんも、ご馳走を作ってくれてます。いっぱい食べてくださいね」「はい」 そう言って二人、見つめ合って笑った。  * * *「これはこれは……こんなところで誰かと思えば」 声に顔を上げると、二人を見下ろし三人の男が立っていた。「藤崎。楽しそうじゃねえか」「や……山崎くん……」 柚希の口から、一気に水分が失われる。 瞳孔が開き、脈が急激に速くなっていった。 柚希は誓った。これからは絶対に逃げないと。 山崎たちとも正面から向きあい、乗り越えてやると決意した。 しかしこの不意打ちは、柚希の頭を真っ白にした。「柚希さん……」 柚希の手を握る紅音の手も、震えていた。 山崎たちから醸し出される異様な雰囲気に、紅音は怯えていた。 その紅音の姿に、柚希ははっとした。 そうだ。今は僕一人じゃない、紅音さんもいるんだ。 紅音さんを巻き込む訳にはいかない。紅音さんを守るって、僕は誓ったんだ。 紅音の手を握り返し、柚希が囁いた。「大丈夫です。紅音さんのことは、僕が守ります」「何ぶつぶつ言ってやがる。こんなところでいちゃつきやがって」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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第9章 贖罪の十字架 5/9

 「……」 頭が重かった。 遠くで花火の音が聞こえる。 そして歓声がする。 そうだ……今日はお父様と花火を見に、夏祭りに来ているんだ…… 紅音〈あかね〉がゆっくりと目を開ける。 少し眠っていたようだ。 早く起きないと、花火が終わってしまう。「……お父様……どこ? お父様?」 しかし父はどこにもいない。 迷子になってしまったんだろうか。 紅音の目から、涙が溢れてきた。 「……」 紅音の前に、うずくまっている男がいた。 その男は、怪我をしているようだった。「あの……大丈夫ですか?」 紅音がそう言って、男の肩をゆする。 しかし反応がない。 紅音は仕方なく、その男を仰向けにした。 顔も血塗れになっている。 紅音はハンカチを取り出し、近くにあったコップの水で濡らすと、その男の顔を拭きだした。「大丈夫……ですか?」 紅音が血を拭いながら、男に声をかける。 そしてしばらくして。 その男の顔に、何かしら言い知れぬ懐かしさを覚えた。「……」 紅音の頭の中で、あらゆる記憶が走り抜けていく。 仲間外れにされたこと、病院を探検したこと。 父の日に、晴美と一緒に料理を作ったこと。 そして。 「柚希〈ゆずき〉……さん……」 今目の前で介抱しているその男は、自分にとって何よりも大切な友達、柚希だ。 紅音の記憶が呼び覚まされた。「&helli
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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第9章 贖罪の十字架 6/9

  山を降りた柚希〈ゆずき〉が振り返ると、神社の一角が色を失っているのが見えた。 その規模を見て。 紅音〈あかね〉の力を改めて思い知り、身を震わせた。 道中、公衆電話を見つけた柚希は中に入り、10円玉を入れると桐島家に電話をした。 「はい、桐島でございます」「晴美〈はるみ〉さん、柚希です」「あらあらこれは柚希さん。随分と遅いご連絡で。花火、終わってしまいましたよ」「晴美さん、先生に代わってください」「……」 柚希の様子に異変を感じた晴美が、静かに言った。「少々お待ちください」 そしてしばらくして、明雄〈あきお〉が電話口に現れた。「柚希くん……」「先生……すいません、僕がついていながら……」「いいんだ、いいんだよ柚希くん。あまり自分を責めないでくれ」「今、紅音さんは行方が分からなくなってます。恐らく、力が解放された状態で」「そうか……」「家には戻ってませんよね」「柚希くん。君はもう家に戻りたまえ。後は私が」「僕も一緒に探します」「気持ちは嬉しいよ。だがこれは、父である私の仕事なんだ」「僕も紅音さんの友達です!」「柚希くん……」「お願いします。決して無茶はしませんから」「……分かった。ありがとう、柚希くん」「僕は今から、街の方を探すつもりです」「では私は、反対側を当たろう」「じゃあ先生、また後で」「うむ。気をつけるんだよ」  * * * 明雄が水平二連式の散弾銃を手に、玄関に向かう。 玄関には晴美が、厳しい面
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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第9章 贖罪の十字架 7/9

  今、どの程度の被害が出ているのだろうか。 家を出る前に聞いた青年団の無線によると、祭り会場の半分近くが、灰色の死の世界と化したようだ。 怪我人もかなり出ている。 覚醒した紅音〈あかね〉の能力は、明雄〈あきお〉の予想を遥かに超えていた。 明雄が立ち止まり、月を見上げる。 穏やかな夜だった。 虫の鳴き声が聞こえ、時折吹く夜風もまた心地よかった。 いつかこんな日が訪れる……妻を失ったあの日から、明雄には覚悟が出来ていた。 決して人に理解されない、異能の力。 決して人に支配されることのない、忌まわしき力。 それは、この世に存在してはいけない力だった。 それに気付いた時、決断すべきだったのかもしれない。 事実明雄は妻を亡くしたあの日、紅音をその手にかけようとした。 気を失った紅音の処置が済み、晴美〈はるみ〉が妻の遺体を片付けている時だった。 混乱していた気持ちが整理されていく内に、明雄の中に紅音への恐怖が生まれていた。 この子をこのまま、生かしておいていいのだろうか。 この異能の力を、私は制御出来るのだろうか。 この力は、決して世に出してはならないものだ。 ならいっそのこと、今自分の手で封じ込めた方がいいのではないか。そう思った。 明雄は震える手で、紅音の首を絞めようとした。 しかしその時。 明雄の中に、これまでの紅音との生活が蘇ってきた。 初めて抱いたあの日。天使の様に無垢で真っ白な我が子に涙した。 いつも自分の側から離れず、声をかけると嬉しそうに笑った顔。 父の日に、自分を描いてくれた時の真剣な眼差し。 明雄の手が紅音から離れた。 出来ない。私には、この子を殺めることは出来ない。 どれだけ邪悪な力を持っていたとしても。 今目の前で眠っているこの子は、私にとってたった一人の愛すべき娘だ。 例え世界を敵にまわすことになろうとも、私はこの子を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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第9章 贖罪の十字架 8/9

 「……」 誰もいない夜道を歩き、柚希〈ゆずき〉は紅音〈あかね〉を探していた。 山崎に会った後で、柚希は学校にも足を向けていた。 そしてそこで、山崎の仲間と思える二人の骸を見つけた。 これ以上被害が広がる前に、何とかしないといけない。そう思い紅音を探す柚希の耳に、一発の銃声が聞こえた。 それはあの、いつも紅音と会っていた川の方から聞こえた。「紅音さん……」 柚希が早足で、あの場所に向かう。 今なら。きっと今なら、まだ間にあう。 紅音さんを守ると先生に、そして自分に誓ったんだ。 柚希が何度も何度も、心の中でそう叫んだ。  * * * 満天の星空が川面に映り込み、輝いていた。 川の周りでは、蛍の光が辺りを彩っていた。「……」 その幻想的な世界の中、紅音が一人たたずんでいた。 妖艶で美しいその姿に、柚希が息を呑んだ。「紅音さん……」 土手を降りながら、柚希が声をかけた。 柚希の声に体をビクリとさせた紅音が、振り返らずに囁いた。「柚希さん……来ないでください」 その声は、風が吹けば聞き取れないほど、弱々しいものだった。 柚希の脳裏に、初めてここで会った時の記憶が蘇る。「それは……無理ですよ。だって僕は、こうしていつも紅音さんの側にいたいんですから」「でも……駄目です、柚希さん……私……今の姿を見られたくないんです……こんな醜くて、罪深い姿……」「紅音さんがどんな姿でも、僕にとって、紅音さんは大切な友達なんです。紅音さん、お願いです。こっちを向いてくれませんか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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