夏祭り前日。 柚希〈ゆずき〉と早苗〈さなえ〉は、紅音〈あかね〉の家に来ていた。 柚希は書斎で、明雄〈あきお〉と話をしている。 そして早苗は、紅音の部屋にいた。「では……参りますよ、早苗さん」 晴美〈はるみ〉の声がして、扉が開いた。「おおおっ! 紅音さん、やっぱ可愛いー!」 早苗が歓声を上げた。 紅音は明日、夏祭りに着ていく紺の浴衣を身に纏っていた。「さ、早苗さん……そんな、あんまり見ないでください……恥ずかしいです……」 紅音が頬を赤らめ、恥ずかしそうにうつむく。「いやいや、そのリアクションは柚希に取っとかないと。私相手にそれするのって、何か勿体無いから」 早苗が冷静に突っ込む。「でも……」「むふふふっ。お嬢様、これで準備は整いました。明日は柚希さんを、是非射止めてくださいませ」「ええっ? は、晴美さん、変なこと言わないでください」「……紅音さん」 早苗が静かに紅音の前に立ち、肩に手を乗せた。「私……今日ほど女に生まれたこと、後悔したことはないわ」「……それってどういう」「私の嫁になって!」「きゃっ」 勢いよく抱きついてきた早苗に、紅音が思わず声を漏らした。「もう、早苗さんまで……」「あはははっ。でも本当、紅音さん可愛いよ。柚希も明日、きっとそう思うよ」「柚希さんにこの姿を……」 紅音が改めてそう意識し、再び顔を染め上げた。「浴衣姿の美女二人、これで何も感じなかったらあの馬鹿、今度こそ本当にチョークスリーパーで落としてやるんだから」
Terakhir Diperbarui : 2025-06-13 Baca selengkapnya