大輝は杏を睨みつけた。漆黒な瞳には怒りも温かみもなく、まるで亡き者を見るようだった。「いいだろう。今すぐ渡せば、今晩海外へ送ってやる。金も用意する」杏は床に手をつきながら起き上がり、激しい腹痛に耐えながら震える手でベッドの枕元を指した。「スマホは枕の下で、バックアップデータを入れたUSBメモリは......」ボディーガードは杏の指示に従い、スマホと5本のUSBメモリを探し出した。大輝はスマホを持ってトイレに行き、動画を確認した。動画の内容は、彼の神経を逆なでするようになものだった。本当は目を背けたかったが、それでも最後まで堪えて見届けなければならなかった。十数分の動画を見終えると、大輝の瞳には殺気がみなぎっていた......杏は自分のクラウドアカウントとパスワードを全て明かした。大介はすぐにログインし、検索した。思った通り、バックアップデータが見つかった。大輝は全て削除し、アカウントを抹消するよう指示した。全てが終わると、彼はスマホとUSBメモリを持って部屋を出て行った。残りのことは、大介が処理するだろう。大介は杏にパスワードのないカードを渡した。「ここに10億円入っています。そして、これがF国行きの航空券です。スマホとパスポートも返しておきます。小林さん、これからは自分の身は自分で守るんですね」......彼らが去るまで、杏は手にしたカードを見つめ、九死に一生を得たような気分だった。生き延びた。10億円。大金ではないけれど、海外でしっかり治療を受け、もう一度手術を受けるには十分な額だ。「ハハハ!新井!子供を二人も産んで、結局は?全く馬鹿な女だ!ハハハ――」杏は急いで荷造りを始めた。深夜11時。杏はスーツケースを引き、厚手のダウンジャケットを着込み、帽子、サングラス、マスクで顔を隠してマンションから出てきた。彼女は配車アプリで車を呼んでいた。路肩で待っていると、突然数人のチンピラに囲まれた。杏は警戒し、マンションに戻ろうとしたが、逃げられず、チンピラたちに引きずられるようにして近くの路地裏に連れ込まれた。「やめて!離して!ここに防犯カメラがあるのよ!警察を呼ぶからね!キャッ!カードはダメ!私の全財産なのよ!」「このアマ!噛みつきやがって!いい気味だ!大人しくしてろ!」
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