「棣棠先生、本当にこの極秘プロジェクトに参加されるおつもりですか?一つだけ説明させていただきますが、参加者は全員、名前も身分も抹消され、この世界から完全に消えることになります」棣棠朝美(ていとう あさみ)はしばし沈黙した後、静かで揺るぎない声で答えた。「参加します」電話の向こうで、わずかな驚きが沈黙の中に滲んだ。「了解しました、棣棠さん。一週間後、専属のスタッフがお迎えに上がります。国のためにご尽力いただけること、心より感謝いたします」通話が切れると、朝美の視線は再びテレビの生配信に戻った。画面には、雨宮暁景(あまみや あきかげ)の整った顔立ちが映し出されていて、穏やかな笑みを浮かべながら司会者のインタビューに応じていた。「雨宮さん、お仕事以外にも、視聴者の皆さんはあなたの恋愛事情に大変興味を持っています。よろしければ、少しだけでもお話しいただけませんか?」その問いかけに、スタジオの観客席がざわめいた。暁景は騒がしさなど意に介さず、細めた目で笑みを浮かべながら、左手薬指の指輪を右手でゆっくりと回した。その仕草の一つ一つから、深い愛情が滲み出ている。彼は少し自嘲気味に言った。「恋愛事情といっても、きっと皆さんにとっては退屈ですよ。だって......」声のトーンを変えて、続けた。「私の人生には、女性は一人だけです。七年前に結婚した、たった一人の妻だけ」抑えた愛情を一気に見せつけるようなその言い方に、観客からはどよめきとため息が漏れながら、生配信のコメント欄はあっという間に盛り上がった。「羨ましい......雨宮さんと奥さん、本当におとぎ話みたいなカップル......!」「大学の同級生でしょ?雨宮さん、プロポーズのために一年間も世界を巡って、行く先々で毎回プロポーズしてたって!」「結婚式にはエッフェル塔をバラで飾って、パリ中を驚かせたらしいよ!」「驚いたのがパリだけだと思ってるの?甘すぎるぞあんた!」「この前なんて、雨宮さんが奥さんに小惑星を贈って、『あさみ』って名付けたんだって!」「奥さんの名前は朝美(あさみ)でしょ?つまり名前の発音と一緒だよね!まさに宇宙レベルの愛だ!」みなが口々に羨望を語る中、朝美の心は微塵も揺れなかった。もし何か感じていたとすれば、それはただの冷笑にす
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