それは突然のことだった。悲鳴をあげる間もなく、男の太い指が少女の細い首に巻きついていた。 どうにか逃げようともがくが、別の男に両腕を掴まれ、そのまま土の上へ押し倒されてしまう。「悪(わり)いな、お前さんに恨みはねぇんだが、死んでもらうよ」 男ふたりによって両手両足を拘束され、いたぶられるように呼吸を遮られ、着ているものを脱がされていく。息ができない。感じたことのない恥辱と溺れたときのような苦しさを伴って、少女の意識は霞んでいく。「もう抗わないのか? もっと楽しませてやろうと思ったのに」 「どうせ殺しちまうんだ、最後に俺たちで可愛がってやろうじゃねえか。惜しいと思わないか? こんなに別嬪なのに」 少女が着ていた襦袢はすでに血と泥で汚れ、ところどころが破れ、胸元も露になっている。絶望に満ちた虚ろな瞳を見せる黒髪の少女の哀れな姿は、陵辱したい男たちの欲情を加速させていた。 「――恨むなら、天神の娘であることを恨むんだな」 更に首を絞めつけ、双眸を白濁させ、ビクッと身体を仰け反らせた少女から、纏っていた衣をすべて剥ぎ取ろうと男が柔肌へ手を触れようとした瞬間。 「ゆすら!」 少女にとって馴染みの、声と。 立て続けに銃声が。 …………響き渡り、やがて静かになる。 * * * 甘い柑橘系の香りを漂わせながら、白い五弁の花々が混迷の夜闇を切り開くように舞い落ちていく。 殺されかけ、気を失った少女の身体の上へ。 そして、硝煙の匂いを漂わせる青年の頭上にも。 浄化するように。 同化するように。 天から散りゆく花弁はくるりくるくるまわりながら容赦なく血に塗れた世界を染め上げていく。 ――それはさながら、まわりはじめた運命の環のように。 * * * 女の説明は簡潔だった。 屋敷の主の不在を利用して、別邸に強盗が入ったことにすればいい。その際、鉢合わせした娘が不幸にも殺されてしまった。娘を殺した強盗は狼狽した結果、本来の目的を忘れて屋敷に火を放ち逃亡した……憲兵を欺くことなどあなたには容易いでしょう?「天神の娘が生きている限り、あなたに真の安息は訪れません。おわかりでしょう、それが意味することくらい」 無言のままの相手に、たたみかけるように女はつづける。「生まれたのが娘だったから、樹太朗(じゅたろう)も甘いのでしょう。ただ
Terakhir Diperbarui : 2025-05-19 Baca selengkapnya