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104 Chapters

スピンオフ 天女は反逆者―義兄―の腕のなか《9》

   ゆずにい、と舌足らずな呼び方を改めて、山桜桃は於環の前で淋しそうに微笑む。「ゆずにいは、不能のご病気なのです……だからわたしの羽衣をけして奪えません」 山桜桃の羽衣を丹念に仕立てていても、彼の身体は微塵も反応しなかった。山桜桃が美しく淫らになっていくのを悔しそうに見つめている義兄は、ほんとうは真っ先に抱きたいと思っていたはずだ。  だからといって命乞いのために父親よりも年上の帝に義妹を捧げられるほど、鬼畜でもない。親族を悉く殺され、自分だけ取り残された彼にとっての唯一の希望が男を知らない天神の娘で自分の異母妹でもある山桜桃の存在だったのだから。「……そういうことか」 「一部の皇族が持つ魔術のなかには、感覚を共有させるものがあると聞きました。だから……羽衣を渡す代償として、僕にその身体を貸して欲しい」 「そのようなことが可能なのですか」 驚く山桜桃に、於環は軽く首を振る。「完全な感覚共有ではないが一時的にだが俺の身体で得る情報を第三者へ転写する魔術は存在している」 「じゃあ……!」 「そこまでしてお前たちはひとつに繋がりたいのか? 神の怒りを一身に受けることになっても?」 於環の言葉に柚子葉が驚き山桜桃を見つめる。彼女は恥ずかしそうにはにかんで、自分の気持ちを改めて口にする。「――わたしは、ゆずにいをお慕いしております」 「あぁ、ゆすら……僕の一方的な恋情ではなかったのだね」 「そうじゃなければ、羽衣をおとなしく仕立てられなんか、しません! ゆずにいさま……あなたが抱くことのできない身体だと理解しても、いつかこの先を致したいという気持ちは止められませんでした」 「ゆすら」 かの国の神々は近親相姦を是としていない。堅九里が口にしていたように血の繋がりを持つ男女がまぐあえば、怒りを買うと忌み嫌うのが常識だろう。  だが、柚子葉は自身が不能であるだけで、義妹を抱きたいと心の底から想っているし、彼女もまた同じ気持ちだ。  たとえ神々を敵にまわしても、互いに愛し合いたいと、かの国の神々の代理人である帝の息子
last updateLast Updated : 2025-08-12
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スピンオフ 天女は反逆者―義兄―の腕のなか《10》

    * * *「ゆずにぃ、ゆずにい……」「ああ、ゆすら……君の肌は柔らかくて、とても美味しい」「はずかしい、です……ああっ」「見られて感じるなんて、淫らな天女さまだ」 繰り返される丹念な愛撫と接吻で、山桜桃はぐずぐずに蕩けている。いままで拘束していた鎖ははずれ、自由になった腕は全裸の義兄の背中を必死になってつかもうとしていた。 地下牢のなかの寝台で、はだかの山桜桃と柚子葉が肌を重ねている。於環はふたりの濃密な行為を意識しないようにしていたが、ふたりの熱量が上がっていくにつれ、自然と身体は疼いていた。天女とはこんなにも淫らで美しい生き物だったのかと、最初に抱いた男が栄華を得るという伝承もあながち間違いではないのかもしれないと……神秘的な愛の交歓にすっかり酔わされてしまう。「もう、もういってしまいますぅう――いくのっ、ゆずにぃさまぁ――……ッ!」 監禁している間に柚子葉は義妹をずいぶん調教したらしい。互いの身体に溺れていく背徳的な光景を見せられながら、於環はぽつりと呟く。「そろそろ交代するか?」「待ってくれ。彼女をあと三回絶頂させる」「ぇ……!?」 柚子葉の片方の指は山桜桃の秘処を探っている。口ではちうちうと出ない乳を吸い、残された手で胸を揉みしだく。快楽を受け入れて甘く鳴く彼女は涙をこぼしながら身体をびくんびくんと震わせる。何度も彼の手と口で全身を愛でられて、ふれただけで快楽を拾い上げる山桜桃の淫靡な姿は宙に舞う天女だからか、それとも愛する義兄にふれられているからか。 於環は自分の下半身がずっしりと重たく、いきり勃っていることを痛感する。だが、柚子葉の下半身はうんともすんともいわない。ほんとうに反応しないのだなと於環は愛撫に夢中な柚子葉を憐れむように見つめる。勃起できないことを柚子葉は義妹に邪な想いを抱いた罰だと思っているようだがそれだけではない気がする。強いて言えば第三者による
last updateLast Updated : 2025-08-18
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スピンオフ 天女は反逆者―義兄―の腕のなか《11》

    * * * 「あのとき早まらなければ僕がかの国の栄華を手にしていたかもしれない」 「莫迦なことをおっしゃらないで」 反乱軍による革命は帝の暗殺後、第一皇子によって制圧され、志半ばで終了した。温厚な第一皇子は父帝が武力ですべてを解決しようとしたことで起こった反乱に心を痛め、巻き込まれた民間人だけでなく、革命を引き起こした首謀者たちにも恩情を見せた。反乱軍に所属していた華族にはそれぞれに処分が通達され、空我柚子葉も帝都にある侯爵家の土地を国へ渡すことと帝都追放の処分を受けた。処刑されずに済んだのは柚子葉自身が帝を直接害した人間でなかったからだ。革命時に柚子葉が浴びた返り血は魔術鑑定によって帝のものではなく別人のものだと判明した。そこには真相を知りたいという第三皇子於環の協力もあったため、柚子葉は於環にあたまがあがらない。  帝が血眼になって探し求めていた天神の娘については帝の死によってなかったことにされた。そもそも山桜桃の存在を知る皇族が於環以外いないのだから、いまになって明かす必要もない。  空我家の娘は死んだものとして扱われ、かの国に羽衣を持つ天女の存在は北大陸伝来のお伽噺として書物に記されることとなる。  だが、それに納得しなかった第二皇子が第一皇子と対立、緊迫した状況に陥るなか、帝都に厄介な病が流行り、ふたりとも帰らぬ人となってしまった。  結局、第一皇子の施政は一年ももたなかったのである。玉座は瞬く間に第三皇子於環のもとへと転がり込んだ。「……結果的に於環がいまのかの国の最高権力者、帝だものな」 天女の羽衣を肉体的に奪った於環はいまも独り身のまま、かの国の頂点に君臨している。そろそろ妃を迎えろとの声も出ているが、彼は聞く耳を持たないのだとか。複数の妃を侍らせ、異国の地から奪ってきた女も囲いながら、いもしない天女伝説に溺れた父帝の陰惨な最期を見ているからそう簡単には結婚できないのだろうと世間では囁かれている。あながち間違いではない。「於環さまにもいい女性(ひと)が現れるといいですね」 「――だな」 あの革命からもうすぐ一年が経過する。帝都を追放された柚子葉は山
last updateLast Updated : 2025-08-19
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スピンオフ 天女は反逆者―義兄―の腕のなか《12》

『――帝都を病が襲ったとき、多くの呪術師も死んでいる。そのせいか、呪いがとける事態があちこちで頻発している。お前の不能も低能な呪いの一種だったってことだよ』 病だとばかり思っていた柚子葉の不能は父侯爵に恨みを抱いていた者による呪いだったのだ。父親ではなく息子に不能の呪いをかけたのは、これ以上子孫を残させないためだろうか……真相が判明したところで自分に呪いをかけた人間がのうのうと生きているとは思えない。呪術師同様すでに鬼籍に入っているだろう。  柚子葉はいまさら考えたところで埒が明かないと思考を手放し、隣で横になっている妻へ視線を向ける。「ゆずにい?」 「もう、君の義兄じゃないだろ」 「……ゆずは、さん」 「まだまだ他人行儀だな、ゆすら」 「だってゆずにいはゆずにいで……!?」 「舌、出して」 「――ン」 ちいさな寝台がみしりと軋む。舌を絡ませるしっとりとした口づけを経て、ふたりは互いの服を脱がしあう。監禁していたときのように、柚子葉は山桜桃を丁寧に愛撫していく。「はぁ……ゆずは、さん」 「僕だけの天女。もう羽衣もないから逃げられないね。これからも手放さないよ」 「あつい、あついよぉ……早く、ゆずにぃ、挿入れてっ」 「まったく、せっかちだなあ」 くすくす笑いながら柚子葉は山桜桃の愛液が滴る蜜口へ自身の昂りを押し当てていく。  繋がることなどできないと、そう思っていた――けれど。「あぁ……っ! ゆずにぃのが、わたしの、なかで……!」 「こうされるの、好きでしょう?」 「すき、すきっ、気持ち、いいっ――……ひゃ、あっ、あんっ!」 パンパンと腰を打ち付けながら愛する女性を絶頂させられるようになって、柚子葉は心の底からしあわせを感じでいた。  快楽に溺れる山桜桃もまた、柚子葉の想いに応えるように言葉を紡ぐ。「ひとつになれて、うれしい」 「……こらっ! なかに出すぞ」 「は、はい……っ~~~!」 ふたりのあいだに子どもができたら。  女児ならまた、羽衣を持つ天神の娘がいると狙われるかもしれない。そのときはそのとき、悪いやつはやっつけるのみだと柚子葉は心に決めている。山梅桃が襲撃されたときに銃で容赦なく殺したように。 けれど、いまはまだこの腕に天女を閉じ込めて、ふたりの時間を満喫したい。
last updateLast Updated : 2025-08-20
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