ーー桜みたいな儚い非日常が、私の退屈な日々にはらはらとおちてくる。それは狂いはじめる運命の螺旋かーー4月上旬だというのに、外はなんて肌寒いのだろう。今朝に見た天気予報で今日は1日中雨で冷えると言っていたから、服装はどうしようかと迷った。自宅から少し離れたスーパーに出かけるだけなのに、なんでおしゃれをするのか。だって身なりから明るくいかないと、なんだか気分が乗らない。休みの時くらいは私服で自分らしさを出していかないとね。 結局は季節と肌寒い温度感に合わせた。少しあったかめの、それでも春らしい淡い白のプルオーバーパーカーに決めた。ボトムスは雨粒みたいな白いドット模様が可愛い、ブラックのロングスカート。部屋にある全身鏡で見てみれば、我ながらセンスいいなと得意げになって笑みが零れた。今日は土曜で週末セールをやってたし少し安くなるから、ちょうどよかった。買ったものは歯磨き粉とティッシュ。 特に変わったものではなくただの日用品。 私は必要なものが少しでも足りなくなると不安になる。無くなってからじゃ駄目。 安心感も一緒に買ってるような感じだ。 少しでも気が楽になればいいと思いつつも、いつも『何か』足りない。その足りないはどうしたら完全に満たされるのかは、分からない。でも不足しないように私にはどうしても予備が要る。完全じゃなくてもいい。無いより少しでもあれば、マシな気持ちにはなれるから。 ストックが少なくなってるのに気づいて買いに行き、今は帰るところ。 私は透明なビニール傘をさして歩いていた。自宅にはまだちょっと時間がかかる。小学校の通学路でもある幅のきいた道を通り、途中歩きながらふと見上げた。満開に咲いてから少し経った桜。桜の木は雨風にあおられたのか、まるで桃色のため息をはいてるみたいに花を散らしていた。枝からは少しばかり緑がちらついてた。ついこないだまで咲き誇っていたはずのに、たやすく散ってしまうのがあまりにも綺麗で、ひたすらに切なさがこみ上げてきた。家の近くのこの学校は母校ではないけど、それでも小学生の頃をぼんやりと思い出す。 いい思い出ばかりではなかった。 でもまあそれなりに楽しかったかも。⋯⋯あの出来事さえ、なければ。ーー昔の記憶が蘇る。まるでマグカップの底に溜まった溶けきらないコーヒーみたいな、苦い痛みを伴って。もう
Last Updated : 2025-05-06 Read more