ーー嫌だ。セツ君が、ヤクザだなんて。 「ごめんね、黙ってて。怖いよね」口調があまりにも優しいから、私は混乱してしまう。「い、いや⋯⋯」 「こんな僕から、逃げないでね。もし、逃げたら」 逃げたら、どうするの。まさか⋯⋯私に酷いことするとか?そんなん、セツ君がするはずない。ゆっくりと近づいてきて、手首を掴んできた彼に、思わず声をあげてしまった。「なーんてね。花ちゃんを傷つけたりしないよ。逃げられないように、今から捕まえてあげる」セツ君の顔が近づいてきて、恐怖のあまり目をつむってしまった。唇に柔らかい感触がして、キスをされたのだと分かった。 「僕は、花ちゃんの普通の日常を壊してしまうよ。僕を心底好きになる運命にしてあげる」 今までに見たことのない表情をしたセツ君。 本当に私を捕らえるような、妖しい微笑み。 なんだか、獲物を求めるケダモノみたいで。 いつもの優しさなんてほんの少しですらもない顔だった。再びキスをされそうになり、拒むと私の頭を引き寄せて、舌を入れてきた。嫌なはずなのに、身体が反応してしまう。拒むと尚更深いキスになっていく。 熱が下腹部に集まるような、きゅっとした甘たるい痛みを感じてしまう。ざらりとした舌が絡んでくるのが、気持ちよくて頭がぼんやりとしてくる。 でも、受け入れちゃ駄目。危ない人なんだから。分かっているはずなのに。セツ君の優しさに、甘いぬくもりに抗えば抗うほど堕ちていくみたいで、たまらなく怖い。私の全てを奪いにいく、そんな強引なキス。全てを委ねてしまいそうになる。
Dernière mise à jour : 2025-05-24 Read More