All Chapters of 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜: Chapter 11 - Chapter 20

20 Chapters

意識しないわけない 1

あのキスの一件があってからというもの、セツ君を意識しないわけがない。思い出すと、胸にきゅんと小さな痛みがはしる。まあ、キス以外は何もされなかったんだけど。むしろ、あのあとすぐにセツ君は帰って行った。 これ以上進むのはまだ早いからって言ってた。仕事中でもそうでない時も、思い出しては恥ずかしくて、正直困る。セツ君の、あの言葉。「確実に捕まえに行くからね」それは覚悟しといてってことかな。覚悟も何も⋯⋯私には、ないよ。あの時の帰り、また雨だった。 でもセツ君、傘はいらないって言ってた。 迎えが来るから大丈夫だって。迎えってやっぱり、「若、お迎えに上がりました」みたいな?やっぱり、極道の世界の人だから車でのお迎えがあるのかしら。 そんなことを思い出していた、キスから1週間たった日曜日ーーお昼前からセツ君は私の家に来てくれた。セツ君はソファにゆっくり座り、片腕をソファの背もたれにかけると、ごく自然に足を組んでみせた。その姿はまるで、映画のワンシーンみたい。 家のファブリックソファに座らせるのが、なんだか申し訳ない気持ちにさえなる。部屋の空気でさえも、上品に塗り替えてしまうセツ君って一体⋯⋯?もっと豪華な本革のソファのほうが似合うよ。そして、前と同じ様に隣に私を座らせる。セツ君の傍にちょこんと居るしかない。だから、緊張しちゃうの。 隣で会話してると、彼の唇ばかり見てしまい、やっぱり意識してしまう。セツ君は、私が固まっているのが分かるのか声をかけてきた。まるでいたずらっ子みたいな、笑みを浮かべながら。「花ちゃん、どうしたのかなあ」私はすぐに答えられずに、口をつぐんだ。少し間があいて、やっとのことで返事をした。「う、ううん。なんでもないよ」「ふうん。そっか、なんでもない、ね」セツ君が、やけに楽しそうに私を見てる。意識してるの絶対バレてるよ。また、見てしまった。艶のある、綺麗な薄い唇。あんな唇と、キスしたなんて。そういや、キスってあんな感じでするものだっけ。 ドラマや映画で何度も見たはずなのに、自分がいざキスされた時は、テレビで見たキスシーンと違って、やけに情熱的だったように思える。もう意識するのやめなきゃ。 そう思えば思うほど、セツ君の策略にはまってるような。贈り物も、きっと作戦のひとつなのかしら。私
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意識しないわけない 2

だって彼は、極道の若頭で私と住む世界があまりにも違いすぎる。私にはひたすら優しい。 けど本当は怖い人なんだろうな。前にキスされた時の強引なセツ君を思い出す。跳ねたリズムを刻む心臓さえも、とろけてしまいそうな、身も心も奪われるんじゃないかってキス。彼の、優しさの裏に隠れてる激しさを知った時、怖いなと思った。隣のセツ君のことをちらっと見てみる。そっと目が合うと、花ちゃん可愛いと呟いた彼の声は柔らかく低い。立派な龍と儚い桜の入れ墨してるように見えない、愛おしそうな顔で私を見つめてる。瞳の奥に私を閉じ込めては一生外に出してくれないみたいに、ただひたすら愛が込められてる表情。若頭じゃなかったら、よかったのに。ーーもし、セツ君が普通の人間だったら、好きになれたのにな。でも、なにもかも普通じゃない。 セツ君は普通の人間じゃない。いけない、そう思えば思うほど好きになってしまいそうな自分が居る。危険な恋に、落ちてしまいそうになる。いやいや、若頭なんて好きになっちゃいけない。駄目ったら駄目!セツ君のためにも、今日こそはっきり言わなきゃ。私とセツ君は恋愛関係になれないということを。どんなに特別扱いされても、私には危ない恋愛をする覚悟がない。それに、何よりセツ君に大切にされても自分に自信なんて持てない。だって私にはなんの取り柄もない。ひっくり返ったって女性としての魅力なんか、少しもあるはずない。「セツ君⋯⋯もう、プレゼントはしてくれなくて大丈夫だよ。今までありがとう」「ん?どうしてそんなこと言うの。やっぱりまだ遠慮してるのかな」私は首を横に振りながら、違うのと言葉を続ける。セツ君の顔を見るのがなんだか怖くて下を向くしかなかった。「前にも言ったはずだけど、私、セツ君にこんなに贈り物される程、素敵な女性じゃない」 「花ちゃんは素敵だよ。他の誰かに渡したくないくらい、魅力的なんだよ」いつものように、柔らかい口調の優しい声が聞こえる。私は言いづらかったけど、傷つけないように言葉をどうにかこうにか探し、選んだ。「極道なんて怖い世界に居る人、私にはどうしたって好きになれないと思う」「⋯⋯そっか」「⋯⋯うん」「そっかあ。で?それがどうしたって言うんだい」  え?びっくりして、セツ君の顔を見た。微笑みはでなく、暗い笑顔を浮かべている。
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意識しないわけない 3

その透き通っていない、真っ黒な瞳で私を見ないで。ねえ、花ちゃんと呼ぶ声は顔を逸らしてるせいか、より鋭く聞こえた。ねえ花ちゃんともう1度呼んだあとあのね、と続けた。花ちゃんは知らないだろうけど、僕は独占欲が強いんだ。セツ君の言葉が重さを伴いながら静かに響く。 「花ちゃんをやっと見つけられた時、静かに見守ろうって決めてたんだけど、それだけじゃもう満足出来なくなってしまった。花ちゃんを誰にも取られたくないって思ったんだ。でも僕は極道の世界の人間、花ちゃんの日常を壊してしまう。それが怖くてたまらなかった⋯⋯でも」もう、花ちゃんの全てが欲しくてたまらない。だって、こんなにも大好きだから。セツ君の言葉の1つ1つが、痛い。どうして、ここまで私を好きなのが正直わからない。人って誰かを好きになったら、こんなにも激しい感情になるんだ。 私には、わからない感情がセツ君の心に宿っている。 私はセツ君に目を合わせないように、唇を見るしかなかった。すると、セツ君が私に触れようとしてきて、大げさなくらい身体がびくっと、反応してしまった。胸の鼓動の激しさが、身体中に染み渡るように響いている。セツ君の骨張った男性らしい指が、私の長い髪に触れるのが感覚で伝わってきて、少しくすぐったい。「この長い柔らかな髪も、綺麗で透き通ってる瞳も、細くてしなやかな身体も、花ちゃんのなにもかもを僕のものにしてやるって決めたんだよ」私は恐怖のあまり、どうすることも出来ずにいた。セツ君をおかしくさせてしまったのは、わたしのせいなのかな。だとしたら、申し訳ないよ。 「なんで⋯⋯」セツ君は目を大きく見開いて、驚いているような。一瞬そんなふうに思えたけど、気のせい? 「なんでちょっと泣きそうなの。花ちゃん。僕、ちょっと怖すぎたかな」続けて「ごめんね」と言ったセツ君の声は、ひたすらに優しかった。「セツ君ってやっぱり昔と違う」言うつもりのなかった胸の内がふと、言葉として落ちていく。セツ君は、そうだね、花ちゃんを好きすぎるからだよと少しだけ笑いながら言った。「ごめんなさい、私のせいでセツ君は壊れちゃったんだよね」私の言葉にセツ君は何も言わず、ただ静かに見つめるだけ。私は、またその目を見てしまった。心に強く刺さる、瞳。視線がやけに熱い。 深い闇に包まれた炎が揺らぐ黒い太陽みたいな
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意識しないわけない 4

セツ君はただ黙っていた。私もこれ以上何も言えないと思い、静かにしていた。気まずい沈黙が少し続いたあと、セツ君が沈黙をやぶった。「 僕は恋愛なんて一生できない人間だって悩んだりもしたけど·····でもね」と、傷ついたような顔のまま少しだけ笑って言った。 「若頭だと、恋愛しちゃいけないなんて決まりはないよ。だけど大切な恋が叶うとは限らない。若頭の立場である以上は。それでもね、僕だって人を愛したい気持ちくらいある。至って普通の人と同じ」 そうかもしれないけど、私は若頭って普通に恋愛できるものなのかしら。そもそも、セツ君は普通を望めないはず。だって、極道の世界ってきっと甘くない。恋愛なんて、ましてや一般の人とだなんて許されるはずないと思うけど。 それに、全く極道と無関係の私がセツ君と付き合ったら、そういう危ないことに巻き込まれるかもしれないし。 「やっぱり僕じゃ駄目なのかな」「うん。だって、やっぱり怖いよ」「そっか」 ーーまた、静かな数十秒が流れる。セツ君は何か言いたげに、だけど言葉を詰まらせていた。 そろそろ諦めてくれそうかな。「·····もしかして花ちゃんって色々考えすぎて不安になってない?大丈夫だよ、花ちゃんと恋愛しても、君を極道の世界に巻き込んだりしないし」 えっ!セツ君、私を好きになるのやめてくれないつもり·····? 「僕は、花ちゃんと普通の恋愛がしたいんだ。だから、花ちゃんは僕を好きになってくれるだけでいいんだ。若頭としての僕じゃなくて、昔からのセツ君だと思ってくれていいんだよ。だから覚悟とかそういうのはいらないから大丈夫」そう言われたって困る。まるでセツ君を好きになるしかないみたいに展開を持っていかれてる。「でも、やっぱり駄目だよ。セツ君は分かってない」どうにか分かってもらわないとなのに、セツ君の意思があまりにも固すぎる。「どうしても僕を受け入れられないなら、ちょっとずつ、無理なくでいいんだ」 「無理なくっていわれてもな·····」「そんなに難しく考えないで。僕は若頭である前から花ちゃんの同級生だよ」「それはそうだけど·····」「うーん。そんなに不安なら、そうだな·····いっそ僕と、どこか出かけてみる?」「えっ、デ、デートするの」私と·····セツ君が?そんなことして大丈夫かな? 「うん。デートし
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ただのデートじゃない 1

セツ君とデートをする私は頭を悩ませていた。身支度をしながらずっと考えていたけど。·····セツ君に幻滅されるには何をどうしたらいいの!?好きにさせたままじゃいけないんだから。頑張って嫌われなきゃなのに。そうじゃないと私もセツ君を好きになってしまう。何も打つ手がないまま支度を終え、セツ君の部下が運転する車に乗った。車のドアを部下の方が開けてくれたけど、スキンヘッドで身体の大きい怖そうな人だった。驚いた私は失礼しますと小声になりながらも席に座る。隣にはもちろんセツ君が座ってる。いい加減この近すぎる距離感に慣れなきゃなのに、やっぱりほんの少しも落ち着かない。車なのにうちのソファより、ふかふかしていて尚更、居心地が悪いな。 セツ君が運転手に行き先を告げた。場所を聞いた私はえ!?と声を上げてしまった。だってカレイドリリーって言ったよね? 高級ブティック店じゃないの!セツ君が嫌だった?と聞いてきたので、そうじゃないけど、高いお店だよねと控えめに告げた。だけど「値段の心配なんてしなくて大丈夫だよ。僕がなーんでも買ってあげるからね」と私を甘やかす。もう、最初から不安でいっぱいになってきた。 カレイドリリーに着くまでセツ君は部下で運転手のカネさんの話をしてくれた。苗字は金子さんでセツ君が小さい頃から付き人として居たらしく身体が大きいわりに臆病な性格で、犬に吠えられるのが苦手らしい。セツ君の話が面白くてつい笑ってしまったけど、失礼だったかなとごめんなさいと言いかけた私に、「こうみえて犬苦手なんすよ。小さい頃大型犬に追いかけまわされたのトラウマで·····今の笑うところっす」と笑っていた。人って見かけによらないんだなと、おかげで少し緊張が和らいだ。カネさんのお子さんの話の途中でカレイドリリーに着いた。 お店の近くに着いて下ろしてもらった。セツ君は何の遠慮もなく高そうでおしゃれな服がディスプレイしてあるお店に私を連れて行く。出かけるにはお店が豪華すぎて、なんだか目の前がクラクラしてきた。私は庶民派だから、ブティックとか行かない。好きなものを選んで良いとセツ君は言うけど、服やジュエリーがどれも私にはレベルが違いすぎる。 大人可愛いをコンセプトにしてるカレイドリリーは、ファッション雑誌で見たことがあった。でも私には手の届かない値段ばかり。
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ただのデートじゃない 2

セツ君の所に戻ると、私の異変にすぐに気づいて心配してくれた。私はさっきの女の子の話をすべきか迷ったけど、セツ君に迷惑がかかるかもしれないから黙っておいた。さっきの女の子は、私の身元なんて知らないはずだし、本当に何かしてくるわけじゃない、大丈夫なはずだよ⋯⋯ね。 セツ君はデートを切り上げて帰ろうかと言ってくれた。確かに気分の調子が悪いけど、せっかく誘ってくれたのに申し訳ないや。でも、もう帰りたくなってきた。セツ君にはっきり言わなきゃ。私なんか好きにならないでって。「花ちゃん⋯⋯何か嫌だった?」 「何か嫌だったというか、分かったんだ。やっぱりセツ君に私は相応しくない」「相応しくないなんて、僕達は同級生なんだから⋯⋯」「セツ君には私の感じてる気持ちは分からないよ。だってセツ君は昔とはもう違うし、プレゼントもデートの場所も庶民の私には全然合ってないよ。私にはハードル高すぎて、正直辛い。私なんかもう好きにならないで、お願いだから」「そう⋯⋯だったんだ。僕、全然気づかなくてごめんね」その傷ついた顔が見たくないからずっと我慢してたけど、もう駄目。「もう、私とは関わらないで。セツ君の気持ちが重くて、心が追いつかない」本当にセツ君は何もかも変わってしまった。変わらない私を置いていくんだ。 私が帰ろうとすると、心配だから送っていくと言ってきかなかった。でも、私はひとりで帰りたいとセツ君に強く言い返した。ちょっと遠いけど駅まで歩いた。電車に乗って帰る40分間、私はぼろぼろとみっともなく泣いた。席がガラガラで座って、流れる景色をじっと見ていたら、ふと、元彼を思い出した。千春君ならきっと、私を元気にしてくれる。千春君は今どうしてるんだろう。 やっぱり私はセツ君を好きになれない。若頭だからとか、感覚が合わないとか色々あるけど、完全に嫌いな訳では無い。だって悪い人じゃないから、極道の若頭ではあるけど優しいし。でも私は千春君をまだ、忘れられないから。千春君の前なら、混乱せずにいつもの自分らしくいられるのにな。⋯⋯久々に話したくなったかも。メッセージアプリに『会いたい』と千春君に送った。ためらいながらどうにか言葉を繋いだ。正直メッセージを送るのを止めようとしたけど今、たまらなく千春君に話を聞いてほしい。でも迷惑かな。ちょっとドキドキする。思い
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揺らめく恋の行方 1

ーー萩原千春。 高校の同級生。2年と3年の時同じクラスだった。席がよく隣になるから、その度に「またかよ」なんて笑いながら言い合ってた。 初めて隣の席になった時、千春君は優しい、ふんわりした笑顔で仲良くしようって言ってくれたっけ。 いつも近くに千春君が居た。好きなロックバンドが同じだったからよく音楽の話をした。それ以外の話も沢山。 千春君は話が面白くて上手で更に聞き上手でもあった。 だから私は千春君を好きになったんだ。 でも千春君は家族の話だけはしなかった。家庭が複雑だとは聞いた。 私も余計な詮索はしなかったし、出来なかった。3年の夏に千春くんに告白されて、付き合う。ずっと前から私も彼を好きだったから凄く嬉しかった。何気なかった毎日も今思えばキラキラしていて、人生で1番楽しかった。千春君のおかげ。まだ覚えてる。寒い冬の放課後の時だった。 千春君とイヤホンを半分こして、一緒に音楽聴いてたこと。千春君たらイヤホンがくちゃくちゃに絡まってたから私が直してあげたっけな。 高校卒業してからも大学が一緒だったから、しばらく関係は続いてた。でも大学1年の夏、千春君は急に大学を辞めて私とも別れた。『理由は絶対に聞かないで』って言われたから、何も知らないままで私の恋は終わった。それでも未だに時々メッセージアプリでやり取りはしてた。『久しぶり。なんでもないけど元気か?』『風邪ひかないようにな』『花はいつも心配症だから俺も心配』別れてからも、私を気にかけてくれる優しさ。 何も訳を聞けないまま。今もメッセージアプリでやり取りしてるのに、なんで私たち別れなきゃいけなかったんだろう。 千春君をまだ好きで居ていいのかな。千春君は背伸びしなくてもいい。 心の距離感が心地よい。⋯⋯セツ君と違う。千春君のさり気ない優しさ、セツ君の特別扱いの優しさ。セツ君はまるで嵐のように突然現れて、私の心を乱す。そんな激しい人。千春君は柔らかい笑顔で私を包んでくれる穏やかな人。 でも千春君にもきっと隠してる陰がある。付き合って一緒の頃、いつも笑っていて楽しそうにしてるのに、時々悲しそうな表情をしてぼーっとしてた。それに楽しくて大笑いしてたかと思えば、急に黙ったり。 私は千春君の何を知ってて、それでいて知らないんだろう。でもこんなに鮮
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揺らめく恋の行方 2

「で、本当に何があったんだ」セツ君のこと、なんて説明したらいいかな。……若頭だなんて言えないし。「じ、実は……」「彼氏でも出来たの」「えっ」 「いや、なんかダイヤのネックレスしてるからさ。花の趣味じゃなさそうだし」 しまった。セツ君とデートするからつけた方がいいかなって、そのまま外すの忘れてた。「いや、実は同級生から貰ったというか」「いや、同級生から貰うにしては特別大きくない?しかも高そうだし」「う、うん。なんか、その……」 「彼氏じゃないのか?」「うん、小学校の同級生だよ」「同級生って、男?」「そうだけど……」「じゃあ、その同級生君にとって花は特別なんだよ。好きでもない女の子にそんな高価なもの、特別でもないのにあげたりしないから」「そ、そうだよね。やっぱり好かれてる、よね」「嫌なのか?」「断りきれないというか」 「そいつの連絡先、知ってる?花が嫌なら代わりに言ってやるよ」 「あっ、そういえば知らない」「じゃあいつもどうやって会ってんの」「家に訪ねてくる」「わざわざ会いに来るんだな」「そう、プレゼント毎回持ってきてくれるんだけどブランドものばかりで……」「社長か何かなの、そいつは」「ちょっと言えない」「言えないような仕事なのはまずいな」「やっぱり、そうだよね」ね、を言い追えるかのタイミングでインターホンが鳴った。モニターを見ると…… セツ君が居た。セツ君だとわかった途端、私は固まって動けずにいた。 デート切り上げて帰ったから?だから家まで来たの?……心配してくれたのかな。ちょっと嬉しいかもと思ってしまった自分が許せなかった。 それに、千春君が居る。どうしよう。 「さっきのこと、謝りたくて。だって嫌われたくないし、花ちゃんは悪くない」モニター越しになんて言ったらいいか、言葉を考えていると千春君が代わりに返事をした。「あんたが花の小学校の同級生か」「そうですが」「花が迷惑してるんだわ、もう近寄んないで」「僕は花ちゃんに用があるので。ねえ、花ちゃん開けてほしいな。ちゃんと謝りたいし、このまま帰れない」「帰りな。あんた花の迷惑とか考えたことある?」「君、花ちゃんの友達かな」「元彼ですが」「ふーん。君と話したいなあ」 「話したいだって。いいか?花」うんとも、いいえとも言えずに首
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揺らめく恋の行方 3

「ていうか、花から離れろや」千春君の言葉を無視してセツ君は厄介だなと笑いながら言った声が聞こえる。更にため息も。「ため息ついたら幸せ逃げるぞ。まあ、あんたに幸せなんてやってこないか」 千春君の言葉、さっき私に言ってたのと違う。「幸せだよ、花ちゃんが僕の世界に存在してるからさ。花ちゃん大好き、ふふ」恥ずかしげもなく、大好きだなんて言えるセツ君ってロマンチストなんだろうか。「……僕の世界って、メルヘンワールドか?僕と花ちゃんだけの世界みたいな。そんなもの存在しないから諦めな。あんたの花じゃねえし。花、こいつから離れないと危ないから、こっちきな」千春君の所へ行こうにも、彼だって極道の人なんだよね。怖くて動けない。それに……どうにも信じたくない。でも、名刺に書いてある。京極千春って。私、そんな千春君知らない。 セツ君は、千春君に遠慮なく言った。「君の方が危ないでしょ。京極さんのところって女にも容赦ないから」 「まあ、京極の名を汚そうものなら女だろうとガキだろうと関係ない」ふっ、と乾いたような笑い声はやっぱり千春君らしくない。 「わあ……怖いね。安心して花ちゃん。僕が守るからね。もし花ちゃんが願うなら、僕はこいつを消してやる」 「そんな簡単に消されるかよ馬鹿か。夢見がち野郎のお遊びに花を付き合わせるわけにはいかねえよ。いい加減離してやれよ、花はあんたのものじゃない」「まだ、今はね。それに君のものでもないし」「……2人とも止めて」 私は気がつくと2人にそう言っていた。 声が震えてるのが自分でも分かった。「2人は、極道の人なんでしょ」千春君は俯いた。「花……黙ってて悪かった。」セツ君は私の顔を覗き込むように見て、微笑んだ。「大丈夫だよ。花ちゃん」 「何が大丈夫なの」 「僕は若頭である前に花ちゃんの同級生だから。危ない目にあわせたりしないよ」「なんで、そう言い切れるの」「だって、若頭だから」「若頭って、やっぱり極道じゃん!千春君だってセツ君だって危ない人じゃないの。無理、そんなの無理だから!2人とも早く帰って……」「花ちゃんからのお願いでもそれはだーめ。帰らないよ。この危険人物と2人きりにさせたくないし」セツ君はどうしたって帰ってくれないみたい。 「悪いけど……藤堂の若頭が居るのに、俺だって帰る訳にはいかねえや」
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本当の嵐 1

ーー嘘みたいなことばっかり続いてる。 千春君まで、極道の人だったなんて、ショックな事実を突きつけられた。更に、セツ君とキスした……というかされてしまった所を見られるし。普通だけが取り柄のはずだった私の日常はどこかへ行ってしまった。それからというもの、月曜になっても私が私じゃないみたいで。おかしいくらい、なにもかも上手くいかない。 まず仕事に行くのに電車に乗り遅れた。何故なら、寝坊したから。 それだけじゃない。スマホで時間を見ながら必死に走って間に合いそうだったのに、電車の扉の3歩手前くらいでスマホを落とした。スマホは見事に画面がバリバリに割れて、唖然としてる間に電車は行ってしまった。遅刻して、怒られた。寄りにもよって苦手なガミガミ言ってくる上司に。怒られた怖さのあまり目を見れなくて、上司のネクタイを見つめるしかなかった。極めつけは仕事でミスを連発。 散々周りにも迷惑をかけてしまった。いつもならお弁当を作るのに、今日はお昼ご飯を用意する時間もなく、コンビニでおにぎりを買ってぼそぼそと食べた。 美味しくないから口に無理やり詰め込んだ後、お茶で流し込んだ。 仕事をミスしたせいで、残業になったから帰りも遅くなった。やっとのことで仕事を終えたのに。20時手前の電車に乗って帰るつもりがそれすら間に合わなかった。 何故なら忘れ物をしていたのに気づいて、取りに帰ったから。壊れたスマホを会社に置いていっていってしまった。もう、私何やってんだか。長いため息が勝手に出てきて、皆が帰って誰もいない会社で少し泣いた。頬に涙のぬるい温度が伝わって気持ち悪い気分になった。修理してもらうのに、ショップに行かないといけない。休みの土日じゃないとダメだ。 帰りにダメ元でショップに寄ったら、閉店時間を過ぎていた。仕方なく、とぼとぼと帰り道を歩くと初夏の空気の匂いがした。こんな明るい時期にくたびれてる自分は一体何をやってるのだろうか。つ、疲れた……もうやってらんな……!? わっ!!い、痛いっ……! 急いでもないのに転んでしまった。 いつも仕事に行く時に履いてるパンプスのヒールの踵が折れたからだ。 ああ、もう!私が何したっていうの!転んで地面に座り込んだまま動けずに、意味もなく空を見上げた。いや、本当は最悪な1日に本気で泣いてしまいそ
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