あのキスの一件があってからというもの、セツ君を意識しないわけがない。思い出すと、胸にきゅんと小さな痛みがはしる。まあ、キス以外は何もされなかったんだけど。むしろ、あのあとすぐにセツ君は帰って行った。 これ以上進むのはまだ早いからって言ってた。仕事中でもそうでない時も、思い出しては恥ずかしくて、正直困る。セツ君の、あの言葉。「確実に捕まえに行くからね」それは覚悟しといてってことかな。覚悟も何も⋯⋯私には、ないよ。あの時の帰り、また雨だった。 でもセツ君、傘はいらないって言ってた。 迎えが来るから大丈夫だって。迎えってやっぱり、「若、お迎えに上がりました」みたいな?やっぱり、極道の世界の人だから車でのお迎えがあるのかしら。 そんなことを思い出していた、キスから1週間たった日曜日ーーお昼前からセツ君は私の家に来てくれた。セツ君はソファにゆっくり座り、片腕をソファの背もたれにかけると、ごく自然に足を組んでみせた。その姿はまるで、映画のワンシーンみたい。 家のファブリックソファに座らせるのが、なんだか申し訳ない気持ちにさえなる。部屋の空気でさえも、上品に塗り替えてしまうセツ君って一体⋯⋯?もっと豪華な本革のソファのほうが似合うよ。そして、前と同じ様に隣に私を座らせる。セツ君の傍にちょこんと居るしかない。だから、緊張しちゃうの。 隣で会話してると、彼の唇ばかり見てしまい、やっぱり意識してしまう。セツ君は、私が固まっているのが分かるのか声をかけてきた。まるでいたずらっ子みたいな、笑みを浮かべながら。「花ちゃん、どうしたのかなあ」私はすぐに答えられずに、口をつぐんだ。少し間があいて、やっとのことで返事をした。「う、ううん。なんでもないよ」「ふうん。そっか、なんでもない、ね」セツ君が、やけに楽しそうに私を見てる。意識してるの絶対バレてるよ。また、見てしまった。艶のある、綺麗な薄い唇。あんな唇と、キスしたなんて。そういや、キスってあんな感じでするものだっけ。 ドラマや映画で何度も見たはずなのに、自分がいざキスされた時は、テレビで見たキスシーンと違って、やけに情熱的だったように思える。もう意識するのやめなきゃ。 そう思えば思うほど、セツ君の策略にはまってるような。贈り物も、きっと作戦のひとつなのかしら。私
Read more