Lahat ng Kabanata ng Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─: Kabanata 101 - Kabanata 110

**────エレンの視点────**「結局、あたしらは……もう手遅れなんですね」男が自嘲するように笑った。血を流した顔に浮かぶその笑みは、諦めと絶望に満ちている。夕陽が石畳に長い影を落とし、辺りを茜色に染めている。その光が男の疲弊した表情を、より一層際立たせていた。「あたしはもう、じきに裁かれるんでしょう」男の声は掠れ、震えている。恐怖と後悔が入り混じった複雑な感情が、その言葉の端々に滲み出ていた。「せめて……やり直すことができるならねぇ……したいもんですよ」男の瞳に、一瞬だけ何かが宿った。それは偽りの涙なのか、それとも心の底からの懺悔なのか――私には判断がつかない。「…………」私は、このことについて返答をしてやるつもりはなかった。この男の言葉が、本心からのものなのか、それとも同情を誘うための演技なのか、長年の経験を持ってしても判断に迷う。人の心の奥底は、時として最も巧妙な謎となる。だが――（エレン……私が思う聖女というのはね。己の罪を認識して、悔い改めることができるのなら……）エレナの声が、意識の奥から静かに響いてくる。その声音には、彼女特有の温かさと、揺るぎない信念が込められていた。（それはきっと、許されるべきだと思うんだ）はぁ。つまり、彼女はこの男の狡猾なやり方にも、慈悲を与えたいということか。エレナの優しさは時として、私には理解しがたいほど深い。（こいつは、今まで同じ手を使って人を殺めてきた可能性だってあるんだぞ？）私は冷静に現実を突きつける。だが、エレナの答えは予想通りだった。（それはきっと、神様が罰してくれると思うの。だから、もし本人に本当に罪の意識とそれを償い悔い改める気持ちがあるのなら、私はその道を示してあげたい）（それが、私の思い描く聖女なんだ）エレナの声には、揺るぎない信念が込められていた。彼女の中にある慈悲の心は、どのような状況でも決して曇ることがない。それは時として危うくも見えるが、同時に彼女の最も美しい側面でもある。（……エレナがそういうのなら）私にとって、彼女の意志は何よりも重要だ。たとえ私自身が納得できなくとも、エレナが望むなら、私はその道を支えよう。（私はなんと言えばいいんだ？）（そうだなぁ……まず、自分に罪の意識があるか、聞いてみて）「……おい、情報屋」私の声が、夕暮れの静寂に響く

**────エレンの視点────**男と別れ、私は仲間たちが待つ場所へと足を向けた。夜の帳が完全に降り、街の灯りが石畳を温かく照らしている。遠くから聞こえる生活音が、日常の平穏を感じさせるが、先ほど得た情報の重大さを思うと、その平穏がいかに脆いものかを痛感する。約束の場所に到着すると、三人の仲間が既に集まって私を待っていた。それぞれの表情から、彼らもまた有益な情報を得ることができたのが読み取れる。「すまない、待たせたようだな」私が声をかけると、シイナが苦笑いを浮かべながら振り返った。「いや、俺たちも随分時間がかかってしまって……」「ですが、上々の情報を私たちは手に入れることが出来ました」シオンの声には、充実感が込められていた。ほう。私たちの方でも上々な情報量だからな。これは、四人で合わせた情報量はかなり多そうだ。互いの収穫を突き合わせれば、この国の真相により深く迫れるだろう。「まず、俺から」シイナが前に出て、整理した情報を報告し始める。「俺が集めた情報は、聖女に関してはそこまでなかったんだが…どうやら、この国には『ヘレフィア騎士団』という精鋭部隊がいるみたいだ」「その騎士たちの情報を中心に俺は集めてきた」騎士団の情報か。確かに重要だ。この国で何らかの行動を取る場合、彼らの存在を無視することはできない。「なるほど。詳しく聞かせてもらえるか？」（騎士団を相手にするの？）エレナが私に恐る恐る尋ねてくる。彼女の不安そうな声が、意識の奥から響いた。（いや。なにも事を構えるわけではないさ）私は内心でエレナを安心させる。（ただ、その情報を知っているか知らないかでは、大きく結果は違うものだ）（そうだね…）エレナの声に、理解と安堵が混じっているのが分かった。「ヘレフィア騎士団には、特に注目すべき四人の屈強な騎士がいるらしい」シイナの表情が真剣になる。彼が集めてきた情報は、かなり具体的で詳細なものになりそうだった。「まず一人目。騎士の中でも一番若く将来有望とされる、氷属性の使い手――グレンデル」「こいつは『氷の処刑人』って異名で呼ばれてる。性格は氷のように寡黙で、感情を一切表に出さない完璧主義者らしい。戦闘中は常に冷静で、一切無駄のない動きで敵を仕留めるって話だ」「二人目は、大地を自在に操る豪快な戦士、マグナス」「こっちは全く逆の

**────エレンの視点────**私たちは、リディアから借りたあの隠れ家へと足を向けた。夜の帳に包まれた街並みを縫うようにして歩く中、仲間たちとの情報交換で得た収穫に対する充実感があった。だが、その感情は一瞬にして恐怖と絶望に変わることになる。角を曲がった瞬間、私たちは目を疑うことになった。「これは……！」私の声が、夜の静寂を破って響く。（え！？ふ、二人は大丈夫なの！？）エレナの震え声が意識の奥から響いてきた。彼女の動揺が、私の心にも波のように伝わってくる。「こ、これは一体何事ですか！？」シオンの驚愕の声が、炎の音に掻き消されそうになりながらも耳に届いた。屋敷が激しく燃えていたのだ。天を焦がすかのような猛々しい炎が、建物全体を包み込んでいる。赤々とした火柱が夜空に向かって踊り狂い、その光景は地獄の業火を彷彿とさせた。黒い煙が立ち昇り、辺り一帯を覆い尽くしている。煙の臭いが鼻を突き、目を刺激して涙を誘った。そして、その炎に照らされて浮かび上がる影がある。屋敷の周囲を取り囲む、大勢の騎士たちの姿だった。彼らの鎧が炎の光を反射し、不気味に輝いている。「ミスト！！グレン！！」シイナの絶叫が夜空に響いた。仲間への想いが彼を支配し、冷静さを完全に失っている。「待て！シイナ！」私は制止の声を上げたが、既に遅かった。あのシイナが冷静さを欠いて、燃え盛る屋敷の方へと駆け出してしまったのだ。そうなるのも仕方がない。私も内心では、二人が無事なのかそれだけが気がかりだった。ミストとグレンの安否への不安が、胸を締め付けるように痛む。「見つけたぞ！！」騎士の一人がシイナを認めるやいなや、鋭い声で仲間に合図を送った。一斉に剣が鞘から引き抜かれ、金属の擦れる音が夜気を震わせる。「あなた方……！やり過ぎですよ……！」シオンまでもがトンファーを構え、騎士たちへと突撃していく。彼の声には、理不尽な行為への怒りと義憤が込められていた。激しく火花が散る音が辺りに響いた。剣とトンファーがぶつかり合い、金属同士の衝突音が炎の咆哮と混じり合う。……目つきで分かる。グレンもこの国に入った直後に言っていたが、騎士の一人一人が精鋭と呼んでも差し支えないほどに洗練されている。剣を持つ構えにスキがなく、たとえスキがうまれたとしても、それを補える高度な剣術を身に着けている。

**────エレナの視点────** 現状は、最悪と言っても過言ではなかった……。 ミストさんと、グレンさんが……何者かに襲われて倒れてしまった。意識を失った二人の姿を目にした瞬間、私の心は氷のような恐怖と、悲しみで押し潰されそうになった。月光に照らし出された彼らの傷跡が、まるで悪夢のように網膜に焼き付いてしまっている。 （恐らくあの騎士団の仕業だろうが……中に人がいるにも関わらず、火を放つとはな） エレンの声が、深く抑制された怒りに震えていた。彼の冷静さの奥底で、白熱した憤怒が静かに燃えているのが声で感じ取れる。 そして、それは私にとっても同じだった。 二人をこんな目に遭わせるなんて——！ 胸の奥底から湧き上がる、純粋で激しい憤りが私を支配していた。普段の私なら、人を憎むという感情を抱くことはほとんどないけど、今回はそうも言っていられなかったんだ。 （ミストは後頭部に強い打撃の痕跡。意識を奪うための、計算された一撃だった） （グレンの全身に刻まれた切り傷……あの傷口の形状、深さ、角度。相当の手練れによるものだ。しかも、ただの剣によるものではない。もっと鋭利で、殺害を目的とした刃で刻まれている） （さらには、長時間縛られていた痕跡。手首と足首の擦り傷、ロープを無理やり引きちぎった際の裂傷……） エレンの冷静な分析が、意識の奥から淡々と響いてくる。その詳細すぎる観察眼が、今回の事態がどれほど深刻で悪質なものかを物語っていた。彼らは私たちを、単に捕らえようとしたのではない。確実に排除しようとしていたのだ。 （私たちは何も悪いことなんてしていないのに……！） 私の声が激しく震える。石畳に響く足音も、夜風の音さえも、この理不尽さを嘲笑っているかのように聞こえた。なぜ、私たちがこんな目に遭わなければならないのか。ただ旅をしていただけなのに、なぜ大切な仲間たちがこれほど残酷に傷つけられなければならないのか。 （エレナ……落ち着くんだ） エレンの声に、私を慰めようとする深い優しさが込められていた。 あんな非道な行いは、断じて許されるものではない。 仮に、私たちを捕まえるだけが目的なら……まだ理解できる。王国の法に従い、正当な手続きを踏もうとしているのなら。 けれど、人を傷つけた上に……建物に火を放つなんて……

「リディアさん……巻き込んでしまい、心から申し訳ございません。どうか、私たちをお助けください」私の声は震えていた。聖女見習いとしての誇りと、仲間たちの命を守りたいという切実な想い。その狭間で揺れ動く心を、必死に言葉に込めた。「はい。もちろんです」リディアさんはそう言って、まるで暁の光のように柔らかで温かな微笑みを浮かべてくれた。その笑顔には、一片の迷いもない純粋な慈愛が宿っていた。＊＊＊「シイナさん、シイナさん」私は束の間の眠りについているシイナさんの身体を、羽毛に触れるように優しく揺らす。疲労困憊で眠りについている彼を起こすことに、胸が痛むような申し訳なさが込み上げてきた。けれど、一刻も早くこの危険な場所を離れなければならない。「うっ……どうした……？」シイナさんの美しい瞳がゆっくりと開かれる。睡眠不足と疲労で、普段の鋭い光がわずかに翳んでいた。「リディアさんが、私たちに新しい安全な隠れ家を提供してくださることになったの」「……なんだって？」シイナさんの表情が、驚きと困惑に染まる。「数日ぶりですね。急いでここを離れましょう」リディアさんの声に、緊迫感と決意が込められていた。「待ってくれ。あなたは既に我々を逃がすという、極めて危険な……反逆罪とも言える行為を成してくださった。これ以上は、さすがにまずいだろう」シイナさんも私と全く同じ懸念を抱いていた。その声には、リディアさんの身を案じる深い心配が滲んでいる。「先程、エレナ様にも申し上げましたが、我々の聖女様がこのような暴挙に出たと、あなた方の王国が知ることになれば……」リディアさんの声が、重い現実を告げる。「間違いなく両国は戦火に包まれることになります。それだけは、何としても避けねばなりませんから」「……！　エレナが聖女であることを知っていたというのか？」シイナさんの目が、鋭く見開かれる。「あなた方にお衣装をお届けした後、私なりに色々と調べさせていただいたのです。ベルノ王国の聖女様と特徴が一致していたので、十中八九エレナ様ご本人だと確信いたしました」リディアさんの声に、深い洞察力と確信が込められていた。「ま、まだ見習いですけれど……」私の謙遜めいた言葉を、リディアさんは完全にお聞き流しになった。（……ふふ。見習いとしてではなく、聖女として名が諸国に広まっているのだ