「こちらの装置と錬金術との関わりについて、でしたな」 ラムザスは寝台型の装置に手を添え、淀みなく語り始めた。 「まず、記憶は科学の粋を集めたこの装置によって読み取られます。ですが、実のところ、この装置だけで抽出が成立するわけではございません」 「……ふむ」 「取り出すには、その記憶を形あるものへ変えねばなりません。形のないものに、形を与える。それを担うのが──」 「錬金術、だな」 先に言葉を置いたのは、エレンだった。 ラムザスの口が、半ば開いたまま止まる。 エレンは構わず、寝台の脇に置かれた記憶結晶へ目を向けた。続けて、棚に並ぶ簡易型の装置を流すように見る。その眼差しは、剣の構えを読むときとよく似ていた。派手な驚きも、無駄な警戒もない。ただ、仕組みの継ぎ目を探っている。 「察しはつく。この機械どもは、結局のところ“窓”だ。覗き込み、読み取るための代物。記憶を結晶という形に落としているのは別の手──錬金術、というわけだろう」 「……」 「ラムザス。ひとつ聞きたい」 そこでようやく、エレンは彼へ視線を戻した。 「錬金術には、等価交換がまとわりつく。無から有は生まれない。それがこの世界の掟だ。ならば──その代償は何だ?」 沈黙が落ちた。 白衣の足音が遠ざかり、機械の唸りだけが低く残る。結晶の微かな明滅さえ、硝子の奥で息を潜めたように見えた。 ラムザスは口を閉じる。眼鏡の奥で、瞳がわずかに開かれていた。穏やかに保たれていた笑みは、形を作り損ねたまま唇の端に引っかかっている。 「ハズレか?」 エレンが軽く促す。 「──いえ」 ラムザスは、そこでようやく息を吐いた。 苦笑とも感嘆ともつかない響きが、その一息に混ざる。 「いえ、失礼いたしました。エレン様の聡明さに、少々、呆気に取られておりまして」 「世辞はいい。続けてくれ」 「ふふ。世辞ではございませんよ。本当に、舌を巻いた次第です」 ラムザスは姿勢を整え直し、改めてエレンへ向き直った。眼鏡の縁を押し上げる仕草には、先ほどまでの余裕とは少し違う色が混じっている。 「仰る通りでございます。錬金術は、必ず何かを差し出さねば成立いたしません。無から全てを生み出すことはできない。これは、この世界に貼られた掟ですから」 「だろうな」 「しかし──記憶の抽出に限
Last Updated : 2025-08-30 Read more