私たちは、町の酒場へと向かった。木製の扉を押して、中へ入る。入った途端、アルコールの強い匂いが鼻をついた。それに、がやがやと賑やかな話し声が飛び交っている。「俺の女房がさぁ……」「この間、冒険者に依頼を出したんだけどよ……」「今年の小麦も、出来がよくってなぁ……」他愛のない会話が、そこら中の席から聞こえてきた。「おう! いらっしゃい!!」カウンターの奥から、ガタイのいい男性が声をかけてくる。「どうも~!」「失礼します……」私たちは、酒場のマスターさんに軽く会釈をした。「旅の人だな!」「なにか飲むかい?? リヴィアはいらねぇぜ?可愛いお嬢ちゃんたちには、俺からの奢りだ!」マスターさんは豪快に笑いながらそう言ってくれる。「ほんとですかぁ~!? じゃあ私はエール酒で!!」ミストさんがご機嫌に答えた。(こいつ…!!!私の前で…!!!)エレンが恨めしそうな声を発する中、「わ、私はミルクで……」と私は控えめにお願いする。「あいよぉ!」***数分後、それぞれの飲み物がテーブルに運ばれてきた。「ありがとうございます!!」ミストさんはグイッと一口、エール酒を飲み干す。(ミストさん……お酒、強いんだ……)「いただきます。」私も、ミルクを一口すくって飲んだ。甘くて、優しい味…。「そういえば、マスターさん。」ミストさんが、カウンター越しに声をかける。「ん? なんだい?」「この辺りで、困っている人とか見かけませんでした?」ミストさんが尋ねた。「困った人かぁ……それなら、ほら。あそこにいるぜ?」マスターさんが、奥の方で俯いている女性を指さした。「おっとぉ……あのどんよりした感じ……相当とお見受けしました!!」「ちょ、ミストさん!?」ミストさんはそのまま席を離れ、突っ伏している女性のもとへ歩いていってしまう。「なんだい?あんたたち、困ってる人を探してんのかい?」マスターさんが、私に尋ねる。「実は……」私は、これまでの経緯をマスターさんに簡単に説明することにした。***「なるほどなぁ。それで嬢ちゃんたちは、その瘴気の原因を探してるってわけか。」「はい……。」私が説明を終えたタイミングで、ミストさんが戻ってきた。「あの人は恋愛のもつれで、あんなふうになってるだけでした。」と、淡々と言い放つミス
Last Updated : 2025-08-30 Read more