────プロローグ:砕け散った神の神話──── 遥かなる古。 万象が未だ若く、世界が清浄な静寂の中で息づいていた時代の物語──。 かつてこの地上において、人々はただ一柱の神に祈りを捧げていた。 その神の慈悲は、陽光の如く世界の隅々にまで行き渡っていた。 乾いた大地には豊穣の約束を。 日照りに苦しむ地には恵みの雨を。 病に蝕まれた者には癒やしの光を、そして果てなき争いに疲れ果てた者らには、安寧の秩序を。 生きとし生けるものすべてに、その愛は等しく、深く注がれていた。 人々は神の御業に心からの畏敬を捧げ、親愛を込めてこう呼んだ。 「魔神様」 絶対なる庇護者。この世で唯一無二の、完全なる父として。 しかし──その永劫に続くかと思われた平穏は、唐突に破られることとなる。 一人の男によって。 彼にとって神とは、崇めるべき信仰の対象ではなく、解き明かすべき「研究対象」でしかなかった。 男は巧妙に神の信頼を騙り、聖域の奥深くへと忍び寄る。 その目的はただ一つ。神が持つ奇跡の力、その根源を我が物とすること。 その心には、一片の敬虔さも、感謝も宿ってはいなかった。 そして、純粋なる裏切りの果てに── 魔神様は、砕けた。 いかなる怒りも、いかなる悲しみも浮かべることなく。 まるで長き役目を終えたかのように、静かに、音もなく崩れ落ちたのだった。 次の瞬間。 天と地を覆い尽くさんばかりの、凄絶な爆発が世界を包んだ。 神の聖なる身体から溢れ出た無尽蔵の魔力の粒子は、目に見えぬ風に乗って色鮮やかな光の雨となり、世界中へ降り注いだ。 大地に染み込み、広大な海を渡り、蒼穹の果てまで届いて── やがて、世界そのものと不可分に混じり合っていった。 永い刻が流れ、世界が神の遺した魔力で満たされた後──。 その混沌たる力に適応し、新たなる理をその身に宿した者たちが、歴史の表舞台に現れ始める。 彼らの血は神の残滓に触れて熱く滾り、その肉体は人ならざる強靭さを獲得し、魂の奥底には失われた神の記憶の欠片が微かに、しかし確かに宿っていた。 彼らは疑いようもなく”人”でありながら、同時に”人”という枠を遥かに超越した存在へと変容を遂げていたのだ。 この世の理を超えた絶対的な力──魔法を自在に扱
Terakhir Diperbarui : 2025-05-19 Baca selengkapnya