「エレン!? 聖堂騎士のあのエレンか!?」 ウルサスが目を見開き、驚愕の声を上げる。 「なんだ? 私のことを知っているのか?」 エレンは静かに問い返した。相手の反応は、単に名を知っているという以上の驚きを含んでいるように見えた。 「あんた、獣人族の中では聖女エレナと並んで、かなり注目されている存在なんだぞ」 「私が? 獣人族の間で?」 予想外の言葉に、エレンは微かに眉を寄せる。 「やはり、あんたはそういう人間なんだな」 ウルサスはどこか安堵したように息を吐き出した。 「どういう意味だ?」 「あんたは、差別をする側の人間じゃないということだ」 「要領を得ないな。確かに、私は誰かを迫害するようなつもりはないが」 エレンの言葉に、ウルサスは真剣な眼差しを向ける。 「前回の接続者選抜戦を覚えているか?」 「……ああ」 「あの時、俺の同胞が参加していたんだよ。あんたと当たったとも言っていた。だが、なにより驚いたのは、あんたがまるで『人と同じように』接してくれたことらしい」 エレンは顎に手を当て、記憶を辿るように思考を巡らせる。 (……獣人族。接続者選抜戦……。むっ) 『エレン、そういえば……。居たよね……? ウルサスさんに、私たちはまるで初めて見たみたいな反応をしちゃったけど……』 精神の奥底で、エレナの柔らかい声が響く。 『……あ、ああ。そういえば居たな』 エレンは内心で同意しつつ、わずかに表情を崩した。 「おいおい……。その様子だと、忘れてたな?」 ウルサスが呆れたように肩をすくめる。 「……すまん」 エレンは短く謝罪の言葉を口にした。 「まぁ、それほどあんたの中で獣人族は気にならない存在だったんだろう。むしろ、それはありがたいことだ」 ウルサスの顔には、責める色ではなく、微かな笑みが浮かんでいた。 「それに、あんたとは一度会ってみたかったんだ!」 言い終わるや否や、ウルサスの逞しい尻尾がブンブンと激しく揺れ始める。興奮を抑えきれないように、口元が緩み、ハッハッと荒い呼吸が漏れ出した。まるで大型犬が主人を前にしたような、無邪気な喜びがそこにあった。 「……そ、そうか」 エレンは思わず一歩引きかけた。 「あんたの質問に答えよう。あの少女を狙った理由。それは依頼だったからだ」
Last Updated : 2025-10-02 Read more