「えっと、僕が色彩の宝石なのは紅優の番だからで、紅優は瑞穂ノ神だけど、左目がなくて不完全な状態で、番もいなかったから、幽世はずっと声を届けていたけど、紅優まで届かなくて、本当はもっと前から紅優は瑞穂国の一部、って言ってたと思います」 志那津が口を開けて呆然としている。 前にそんなような顔をして叱られたなと、ぼんやり思った。「瑞穂ノ神は既にいたんだ。色んな偶然の重なりで見つからなかった神を、蒼愛という色彩の宝石が見付けたんだ。これぞまさに理が顕現した故の現象だと思わないか!」 大興奮の利荔の隣で、志那津が口元を抑えて黙り込んだ。「利荔の予測が、あたった。ずっと探していた神が、本当に、いた。しかも、こんなに近くに」 ぽろりと一滴、志那津の目から涙が流れた。 慌てて目を拭いて、志那津が顔を逸らした。「な、泣いてないからな。ただ、利荔が創世記を執筆し終えた後も研究を続けていたのは、知っていたから。正解って形で実を結んだのは、主として嬉しく思う、だけで」 利荔が志那津の頭を抱いて、髪に頬擦りした。「ありがとう、志那津様。実を結ぶかもわからない研究でも、応援して援助してくれて。一緒に怒ったり喜んだり泣いてくれるのも、志那津様だけだよ」「だから別に、そういうんじゃないって言ってるだろ」 さっきより涙があふれている志那津を、利荔が愛おしそうに撫でている。 その姿がとても温かくて印象的だった。「瑞穂ノ神が見つかった事実より、俺の研究成果を先に喜んでくれちゃうのは神様としてどうかと思うけどね。でもね、だから大好きだよ、主様」 志那津の肩がびくりと跳ねた。 まだ潤んだ目で利荔をじっとりねめつけた。「とにかく、すぐにでも淤加美様にご報告だ」「あの、待ってください!」 立ち上がろうとした志那津を、紅優が制した。「俺が瑞穂ノ神で決定のような空気ですが、俺は只の妖狐です。神ではありません」 志那津が利荔と顔を合わせて、腰を下ろした。「蒼愛は、紅優が瑞穂ノ神だって、幽世
Last Updated : 2025-08-05 Read more