Lahat ng Kabanata ng 『からくり紅万華鏡』—餌として売られた先で溺愛された結果、この国の神様になりました—: Kabanata 51 - Kabanata 60

67 Kabanata

51.創世の惟神クイナ④

「番になると、妖怪は食事が必要なくなる。それって、とっても大事な気がするんです。クイナがどんな気持ちでこの国を作ったのか、色彩の宝石を作ったのかわかれば、人間と妖怪はもっと、今より良い関係になれるんじゃないかって、思って」 自分の中に在る考えや思いを上手く言葉に出来なくて、もどかしい。 顔を上げたら、月詠見に頭を撫でられた。「そうか、そうか。蒼愛はやっぱり賢いな。賢いし、優しいね。どうして蒼愛が色彩の宝石なのか、わかった気がするよ」 賢いという言葉の後には、決まって不穏な言葉が続くのに、今日の月詠見の言葉は全部優しかった。「クイナがどんな気持ちだったのか、私にも仔細はわからない。けれど、良い国にするために力を貸してほしいと頼まれたのは事実だよ。人間と妖怪が、理を崩さずに、良い距離感で生きられるようにと、この幽世ができたんだ」「理を崩さずに……」 淤加美の言葉は難しくて蒼愛には充分には理解できなかった。 けれど、とても大事な話なんだと感じた。「もし興味があるのなら、書庫の本を読んでみるかい? この国の歴史や成り立ちが書かれた本や、この国に住む妖怪について書いてある本もある。蒼愛が知りたい真理が見つかるかもしれないよ」「良いんですか! 読みたいです!」 淤加美の提案に、蒼愛は一も二もなく食いついた。「あ……、でも僕、まだ読めない漢字も沢山あって。難しい本は、読めないと思います」「俺が一緒に読むから、大丈夫だよ。漢字の勉強にもなるよ」 紅優がくれた提案で、しゅんと丸まった背中が、ぴんと伸びた。「本当? 紅優、ありがとう。本が読めるのも漢字を覚えられるのも、すごく嬉しい」 まだ読んだことがない本を読めるのは、蒼愛にとって何よりの贅沢だ。 紅優の屋敷の書庫で、芯と本を読んでいた時も、とても楽しかった。 淤加美の書庫に行くのが楽しみで、とてもワクワクした。「蒼愛が本を読める時間を作ろうね。ただし、試練も受けてもらうよ。まずは神々への御披露目だ」
last updateHuling Na-update : 2025-07-14
Magbasa pa

52.御披露目前の控室①

 淤加美の授業から二日の後、御披露目の日がやってきた。 日付の段取りや通達は総て淤加美が取り計らってくれたのだが、寄合の日と合わせたらしい。 水ノ宮に留まっている蒼愛と紅優は、淤加美の巫女たちに身支度から準備されていた。「なかなか似合っているよ、二人とも。やはり蒼玉の蒼愛には藍の着物が良く似合う」 整えた髪をなぞって、耳を撫でられた。 今日は蒼愛も紅優も藍色を主にした着物に藤色の羽織を着ていた。 足元にかけて藍から藤へのグラデーションが施された着物と藤の羽織の調和が美しい。 落ち着いた色味ながら流水の地紋が入っていて、御披露目には向いた着物なのだそうだ。「紅優も、思ったより私好みの着物が似合うね。いっそ紅優にも水の加護を与えようか?」「流石にそれは、:火産霊(ほむすび)様に申し訳が立ちませんので」 困った顔をする紅優に、淤加美が愉快そうに笑った。「冗談だよ。着物くらいじゃ火産霊は怒ったりしないだろうけど、加護を与えたりしたら怒り狂いそうだからね」「このように立派な着物を誂えていただきまして、ありがとうございます」 頭を下げようとする紅優の顔を、淤加美が両手で包み込んだ。「この際だから、はっきり言っておくけれどね。私は以前からお前を気に入っているんだよ。今は蒼愛の次だけれどね。蒼玉の番になったのだから、紅優も私のモノだ。忘れないようにね」「……え?」 紅優が本気で驚いている。疑いを隠しようもない声だ。 蒼愛としては、あまり意外でもなかった。 淤加美の加護を何度も受けている蒼愛は、その気持ちも感じ取っていたから。「紅優を手に入れる良い口実ができたよ。ねぇ、蒼愛」 同意を求められて、蒼愛は苦笑いするしかなかった。「有難いお言葉とは思いますが、このタイミングで念を押しますか」 何とも言えない顔をして、紅優が零した。「このタイミングだからだよ。いつでも私に頼りなさい、という話だ」 淤加美の笑みが色を変えた
last updateHuling Na-update : 2025-07-15
Magbasa pa

53.御披露目前の控室②

「やぁ、早かったね。良かったよ」 案の定、月詠見と日美子が待ち構えていた。 月詠見に会う時は、こういうパターンなんだなと、蒼愛は理解した。「御披露目の前に打ち合わせをしようと提案したのは、月詠見だろう。他の神々は、まだ来ていないかな」 どうやら月詠見と淤加美の間では、決まっていた打ち合わせらしい。 淤加美に問い掛けられた黒曜が、気まずい顔をした。「土ノ神、:須勢理(すぜり)様は既にお見えですぜ。御披露目の前に庭園の花の鑑賞と手入れがしたいとかで、お庭にいらっしゃいますよ」 黒曜が淤加美に向かい頭を下げる。「熱心だよねぇ。よっぽど:花|が気になるみたいだよ。黒曜が、かなり質問攻めにされたんだよね」 月詠見の目が、ちらりと黒曜に向いた。「蒼愛の蒼玉について、色彩の宝石ではないかと疑っているようでしたね。直接的な質問はされませんでしたが、あの様子だと、どこからか情報を得ているんじゃぁねぇかと」 心臓が、ざわりと鳴った。 隣に立つ紅優が手を握ってくれた。「やはり、蛇々でしょうか」 紅優の短い問いに、淤加美が考える様子で黙った。「他に洩れる可能性がねぇよなぁ。それに、須勢理様だけじゃねぇんですよ。昨日、お会いした火産霊様からも似たような質問をされましてね。須勢理様ほどしつこくはありませんでしたが、もしかすると一部には噂が広まっているのやもしれませんぜ」 黒曜の話に、怖さを感じた。 蛇々が紅優の屋敷を襲撃してきたのは、約一月前だ。 あの襲撃で、蒼愛は初めて霊能を使った。あの時、蒼玉の質を見抜かれていた可能性はある。  だが、あの時点では紅優と番になっていないから、色彩の宝石の質は出ていなかったはずだ。「紅優の屋敷の結界は並の妖怪では破れないだろ。それでも蛇々は入り込めるんだね」「探りを入れられてた可能性はある、か」 日美子と月詠見の言葉に、背筋が寒くなった。 番になった後の、黒曜との会話などを聞かれていたら、バレていても不思議ではない。
last updateHuling Na-update : 2025-07-15
Magbasa pa

54.神々への御披露目①

 しばらくして、淤加美と月詠見、日美子の三柱の神は、先に広間に向かった。 蒼愛と紅優は黒曜の先導で、声が掛かってから広間に入る段取りだ。「とんでもねぇ話になっちまったなぁ」 黒曜が気の毒そうな眼差しを蒼愛に向けた。「俺ぁ、紅優と蒼愛が幸せに暮らせりゃ、それで良いと思ってたんだが。色彩の宝石じゃ、そうはいかねぇのかねぇ」 黒曜のぼやきは、紅優と蒼愛の幸せを本気で願ってくれているのだと感じ取れた。「蒼愛の質を考えたら、いずれは今の状況になっていた。通らなきゃならない道だと思ってるよ」 紅優の静かな声には決意を感じた。(日ノ宮で月詠見様に話を振られた時や水ノ宮では迷ってる感じだったけど、紅優は気持ちを決めたんだ) 蒼愛が色彩の宝石である以上、窃盗犯が野放しになっている現状は、決して安全ではない。 紅優が言うように、いずれはこの状況になっていた。「僕は、紅優と幸せに暮らしたい。だから、僕も頑張る。二人で幸せを探せる毎日が送れるように、ちゃんと解決しよう」 握っていた紅優の手を更に強く握った。「二人で生きるこれからを考えたら、きっとあっという間の時間だよ」 紅優が微笑みかけてくれた。「俺にぁ、もうすっかり幸せそうな二人に見えるぜ。番になって、良かったな。何かありゃ、俺にもちゃんと頼れよ」 黒曜が頭を撫でてくれて、照れ臭いけど嬉しくなった。 小さな白い竜が扉をすり抜けて入ってきた。 黒曜の肩に触れると水の飛沫になって弾けた。「淤加美様からお呼び出しだ。じゃ、行くとしますかね。二人が幸せでいるための試練の始まりだ」 控えの間の扉が開く。  互いに手を握り直して、蒼愛と紅優は大広間に向かった。  大広間の扉が開くと、光が視界を遮った。 目を開けると、目の前に淤加美がいた。 ゆっくり辺りを見回す。 広い座敷に、六柱の神々が車座に坐している。 神々の中央に、蒼愛と紅優は立っていた。
last updateHuling Na-update : 2025-07-16
Magbasa pa

55.神々への御披露目②

「そろそろ、くだらない話は終わりにしませんか。大事な報告が、まだ済んでいないでしょう」 ずっと黙っていた若い男性が口を開いた。 人間で言うなら、二十歳前後、もう少し若いだろうか。 すっきりした涼しい顔の、いわゆるイケメンだと思った。 細身の体と色素が薄い感じが、冷たい印象を与える。 無表情だから、余計に氷のような印象になるなと思った。「慌てるモノではないよ、志那津。君も二人に名乗ってあげなさい」 淤加美に促されて、男性があからさまに顔をしかめた。「風ノ神、:志那津(しなつ)。君らとは特に関わりがない神だ。俺の宮には来なくていいよ」 蒼愛をちらりと眺めた志那津が、あからさまに嫌そうな顔で目を逸らした。(睨まれた、よね。初めて会うのに、嫌われてるみたい。そっか、嫌われるって、こんな感じなんだ) 何故、敵意を向けられているのかはわからないが、あまり気分の良いモノではないと思った。(けど、無関心に無視されたり、ゴミ扱いされるよりは、ずっとマシな気がする) それに何故か、志那津に対して悪い感情は生まれなかった。「確かに大事な報告がまだだねぇ。その前に聞きたい話があるんだけど。あ、俺は暗ノ神の月詠見。隣に座ってるのが日ノ神の日美子だよ。神々の中で唯一の番だ」 紅優と蒼愛は振り返り、月詠見と日美子に礼をした。 日と暗の加護を既に受けている事実は、秘密にする段取りだ。 何日も一緒に過ごしているのに初対面の振りをするのは違和感があって、顔がぎこちなくなりそうだった。「皆、蒼愛の質について知っているの? 誰に聞いたのかな? 俺と日美子はついさっき、淤加美に聞いて初めて知ったんだけど。その前には、どの神とも淤加美は会っていないだろ?」 月詠見が探るような目を全体に向けた。「そうだね。話したのは月詠見と日美子だけだ。志那津がいう大事な報告とは、その話だろう?」 淤加美の問いに、志那津が頷いた。「蒼愛の質って、色彩の宝石かもしれねぇってやつだろ。わざわざ蛇が報せに
last updateHuling Na-update : 2025-07-16
Magbasa pa

56.神々への御披露目③

「蒼玉の蒼愛は、元より火、水、風、土の属性を扱える術者だったそうだ。日と暗の加護を受ける紅優と番になったことで、六属性を得て、蒼愛自身が色彩の宝石になった。溢れるほどの霊力量が、一人でも宝石の霊現化を可能にしたんだ」 淤加美の説明に、神々が宝石と蒼愛を交互に見詰めた。「じゃぁ、紅優の左目で代用する必要は、もうねぇのか。この色彩の宝石に俺らが加護を与えて社に祀れば、瑞穂国は完全な状態になれる」 確かめるように話す火産霊は、未だに信じられない顔をしている。「強度の確認は必要では? 祀ってすぐに砕けたのでは意味がない。たったの一つしかないのなら、尚更です」 志那津の言葉に、淤加美がいくつかの玉を出して見せた。「これは練習で作った不完全な色彩の宝石だよ。蒼愛は何度でも宝石を作れる。一日に、二つくらいはできるかな?」 淤加美の問いかけに、蒼愛は考え込んだ。「只作るだけなら、三つくらいはできると思います。強度とか色々考えるなら、減っちゃうと思いますけど……」 紅優が蒼愛の肩に、そっと触れた。(余計なコト、話しちゃった。詳しい話は、ここではしちゃいけないんだった) 慌てて口を閉じる。  突然、須勢理に手を握られた。「すごい! 蒼愛ちゃん、凄いね! 可愛いだけじゃなくて、優秀! ますます仲良くなりたーい!」 頬にキスをされそうになって、紅優が慌てて蒼愛の体を後ろに引いた。「須勢理様、蒼愛は俺の番です。そういう行為は、おやめください」 「えー、紅優ちゃんて、人間みたーい。ちょっとキスするくらい、よくない?」 「お控えください」 同じ言葉を繰り返して、紅優が蒼愛を腕に抱いた。  その姿を見て、須勢理がクスリと笑んだ。「大好きなんだねぇ、蒼愛ちゃんのこと。前の番は忘れちゃった? 大昔の話だもんねぇ」 紅優が、あからさまに顔色を変えた。「普通は番って一人だけど、紅優ちゃんの場合は二人目だもんね。また間違って殺しちゃわないように気を付けてね」 紅優
last updateHuling Na-update : 2025-07-16
Magbasa pa

57.神々の祝福①

 一先ず全員が席に戻った。 紅優と蒼愛は淤加美の後ろに座っていた。 蒼愛の手をそっと握って、紅優が囁いた。「蒼愛、ありがとう」 その声が悲し気で、心配になった。「僕は何もしてないけど……。紅優は、大丈夫? 気にしてる?」 紅優の手が蒼愛の手を強く握る。「御披露目が終わったら、聞いてほしいんだ。前の番の話。蒼愛は、聞きたくない?」 蒼愛は少しだけ考えた。「紅優のことは、何でも知りたい。けど、紅優が話したくないことは無理に聞きたくない。紅優が話してくれるなら、全部聞く」 変わらず憂いた表情のまま、紅優が小さく笑んだ。「好きだよ、蒼愛」「僕も、紅優が大好き」 蒼愛の髪に頬ずりしてくれる紅優に、少しだけ安堵した。 目の前にいる淤加美の背中が、小さく笑った気がした。「さて、本題に入ろう。蒼愛が作った色彩の宝石に、六柱の神々の加護を与えて、臍に祀る。異論のある神はあるかな」 淤加美が神々を眺める。「俺は良いと思うぜ。砕けたって、蒼愛は何度でも作れんだろ。強度を試す意味でも、祀ってみたらいいんじゃねぇの?」 火産霊は色彩の宝石にも協力的な発言をしてくれた。「僕も賛成。折角、良い石があるんなら、使わない方が勿体ないよ」 意外にも、須勢理がすぐに賛成してくれた。 ちょっと不貞腐れた顔をしてはいるが、良かったと安堵した。(怒らせちゃったかと思ったけど、でも。あの顔はもっと違う感情にみえた) 何の感情も無いような表情だった。その顔の意味が解らなくて、気になった。「俺も賛成です。最初に持っていた懸念は払拭されました。何より、蒼愛が何度も繰り返し宝石を作れる事実に価値がある。今後も繰り返し作らせて、より完成度を上げるべきです」 志那津も賛成してくれた。 心なしか、蒼愛に向ける視線が最初より柔らかくなった気がする。 とはいえ、まだ睨まれているような気がするが。
last updateHuling Na-update : 2025-07-17
Magbasa pa

58.神々の祝福②

「志那津も、歓迎してくれるかい?」 淤加美に振られて、志那津があからさまに顔をしかめた。「風ノ宮にくる意味がありますか? 二人とも属性も加護も関わりがないでしょう」 どうにも志那津は蒼愛と関わりたくないらしい。「蒼愛は四つの属性を操れる。志那津には是非、加護を授けてやってほしいんだ。風の使い方を知りたいらしいから、指南してもらえると、助かるんだけれどね」 志那津が蒼愛を睨んだ。 どうしていいかわからずに、蒼愛は固まった。「この中では一番若いし、志那津なら蒼愛と話も合うと思うのだけれど。志那津と蒼愛が仲良くなってくれたら、私は嬉しいよ」 淤加美に微笑まれて、志那津が息を飲んだ。「淤加美様が望まれるのでしたら。仲良くなれるかは、わかりませんが、風ノ宮に挨拶くらいは、歓迎……、します」 全く歓迎していない顔で、志那津が苦しそうに言葉を吐いた。(そんなに無理しないと来ていいよって言えないくらい、嫌がられてるのかな) 流石にちょっと落ち込むなと思った。 だが蒼愛は、志那津と話がしてみたかった。(見た目的に年が近そうだし。神様だからきっと僕より長生きだろうけど、一番、友達になれそうな気がする) 思わず志那津を見詰めてしまった。 蒼愛の視線に気が付いた志那津が、一睨みして顔を背けた。「ウチもいいよぉ。俺と日美子は昼なら日ノ宮にいるから、いつでも遊びにおいで」 月詠見が片目を瞑って紅優に合図した。 合図を受け取って、紅優が頷いた。「では、火産霊様の所に窺ったあとに、月詠見様と日美子様の所に……」 紅優の言葉を遮って、須勢理が前のめりになった。「えー。ウチに来てよぉ。蒼愛ちゃんには土の属性もあるんでしょ? 加護、あげるよ。力の使い方も教えてあげるよぉ」「俺の所は最後でいいよ。来なくてもいいし」 須勢理の言葉に隠れるように、志那津が小さく呟いた。「順番
last updateHuling Na-update : 2025-07-17
Magbasa pa

59.月詠見の決意

 紅優と蒼愛の控えの間の扉を開けた月詠見は、呆れかえった。 部屋の中で、蒼愛が一人で:転寝(うたたね)している。 廊下で偶然会った紅優に、控えの間で一人でいる蒼愛に付いていて欲しいと頼まれて来たわけだが。「この場所で一人で眠れるって、なかなかに良い神経してるね」 さすがの月詠見も驚きだ。 「紅優が火産霊に連れていかれちまって不安だったろうに。余程に疲れたんだろうよ」 日美子が蒼愛の髪を撫でてやっている。 元が同じ人間のためか、日美子は蒼愛に親身だし、我が子のように可愛がっている。「紅優も、一緒に連れていけたら良かったんだろうけどねぇ。火産霊んトコじゃ、前の番の話になるだろうしね」「むしろ、その話をしに行ったんだろうね。蒼愛に話すための打ち合わせだろう」 蒼愛が望まなければ話す必要もないだろうが、紅優は巧く割り切れないのだろう。 適当に緩く生きていそうで実は真面目な紅優らしいと、つくづく思う。「もうちょっと簡単に考えて生きればいいのにねぇ」 人間の喰い方といい、生き方といい、不器用な紅優の気質は人間に近い。 それが月詠見には酷くもどかしく感じられる。 日美子が可笑しそうに笑った。「蒼愛は気にしちゃいないだろうにね。聞いたって、紅優が心配するような事態には、なりゃぁしないのに」 日美子の言う通りだと、月詠見も思う。 何を聞こうと蒼愛なら、紅優から離れたりしない。 紅優の心を大事に包んで守ってくれる番だ。 それは、御披露目の席でも十分に感じ取れた。 須勢理に意地悪な話を振られた蒼愛は、紅優の前の番について、少しも気にしている様子ではなかった。 むしろ気にしていたのは須勢理の内心だ。(あんな風に内面に突っ込んだ物言いをする子だとは思わなかったけど。火産霊や志那津に対しても、臆している様子はなかった)「ひょっとすると、蒼愛は本当に淤加美の探し物を見付けるかもしれないね」 月詠見の呟きに、日美子が不安な顔を向けた。
last updateHuling Na-update : 2025-07-18
Magbasa pa

60.火ノ神 火産霊①

 唇に柔らかくて温かい何かが触れている。 体の中に、同じように温かい力が流れ込んでくる。  優しくて強くて、少しだけ泣きたくなるような感情が乗った神力だと思った。「こぅ、ゆ、ぅ……ぁ、ぅん」 温もりが離れた瞬間に発した声は、また重なった温もりに喰われた。 何度も唇を食まれて、熱い舌が口内に入り込んでくる。  舌を舐めて吸われた瞬間に、霊力を吸い上げられた。 気持ちが善くて、腰が疼く。「流石に美味いな、酔いそうだ」 聞いたことがある声だ。だが、紅優ではない。 零れた声は蕩けて、既に酔っているように聞こえた。「だ、れ……」 うっすらと目を開く。 鋭くて赤い目が、蒼愛を見下ろしていた。「そのままでいろよ。火の加護を流し込んでやる。ちゃんと、俺を喰えよ」「ほむすび、さ、ま……、ぁんっ」 掴まえた顎を上向かせて、蒼愛の唇を塞ぐ。 さっきより強い神力が一気に流れ込んできた。 反動で背が反り、体が跳ね上がった。 胸の奥が焼けるように熱い。霊元に火の神力が沁み込んでいくのが分かった。「んっ、ぁ……、ぁぁんっ」 神力を感じるほどに体が疼いて、股間が熱く硬くなる。 抗えない快楽が全身を駆け巡るのに、刺激が足りなくて、もどかしい。 彷徨う手が目の前の赤い着物を掴んだ。「涙目で縋られたら、抱きたくなるだろ。こんな小せぇ体、俺が抱いたら壊しちまいそうだ」 熱くなった股間に、火産霊が自分の股間を押し当てた。 同じくらい熱くて、既に硬くなったモノが、蒼愛の男根を刺激する。「ぁぁ! ダメ、やめ、て……ぅんっ」 抱き寄せられて、火産霊の首に顔を寄せる姿勢になった。 勢いで火産霊の首筋にあたった唇を押し付けた。「欲しいなら、抱いてやろうか。疼いて
last updateHuling Na-update : 2025-07-19
Magbasa pa
PREV
1234567
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status