「番になると、妖怪は食事が必要なくなる。それって、とっても大事な気がするんです。クイナがどんな気持ちでこの国を作ったのか、色彩の宝石を作ったのかわかれば、人間と妖怪はもっと、今より良い関係になれるんじゃないかって、思って」 自分の中に在る考えや思いを上手く言葉に出来なくて、もどかしい。 顔を上げたら、月詠見に頭を撫でられた。「そうか、そうか。蒼愛はやっぱり賢いな。賢いし、優しいね。どうして蒼愛が色彩の宝石なのか、わかった気がするよ」 賢いという言葉の後には、決まって不穏な言葉が続くのに、今日の月詠見の言葉は全部優しかった。「クイナがどんな気持ちだったのか、私にも仔細はわからない。けれど、良い国にするために力を貸してほしいと頼まれたのは事実だよ。人間と妖怪が、理を崩さずに、良い距離感で生きられるようにと、この幽世ができたんだ」「理を崩さずに……」 淤加美の言葉は難しくて蒼愛には充分には理解できなかった。 けれど、とても大事な話なんだと感じた。「もし興味があるのなら、書庫の本を読んでみるかい? この国の歴史や成り立ちが書かれた本や、この国に住む妖怪について書いてある本もある。蒼愛が知りたい真理が見つかるかもしれないよ」「良いんですか! 読みたいです!」 淤加美の提案に、蒼愛は一も二もなく食いついた。「あ……、でも僕、まだ読めない漢字も沢山あって。難しい本は、読めないと思います」「俺が一緒に読むから、大丈夫だよ。漢字の勉強にもなるよ」 紅優がくれた提案で、しゅんと丸まった背中が、ぴんと伸びた。「本当? 紅優、ありがとう。本が読めるのも漢字を覚えられるのも、すごく嬉しい」 まだ読んだことがない本を読めるのは、蒼愛にとって何よりの贅沢だ。 紅優の屋敷の書庫で、芯と本を読んでいた時も、とても楽しかった。 淤加美の書庫に行くのが楽しみで、とてもワクワクした。「蒼愛が本を読める時間を作ろうね。ただし、試練も受けてもらうよ。まずは神々への御披露目だ」
Huling Na-update : 2025-07-14 Magbasa pa