紅優に抱かれたまま、蒼愛は火産霊が飛んで行った岩山を呆然と眺めた。(そういえば、ここはどこなんだろう。なんで火産霊様がいたんだろう) しかも紅優が割と本気で火産霊を攻撃していた。 あれは、大丈夫なんだろうか。「紅優、あの……」「痛ってぇなぁ。もうちっと優しく止めらんねぇのかよ。番を喰ったのは悪かったけどよ、やり過ぎだろうが」 いつの間にか、火産霊が戻ってきた。 体や服が所々煤けて黒いが、怪我をしている様子もない。「強引に連れてきて、突然喰った火産霊が悪い。蒼愛の魅了はあれくらい衝撃を与えないと解けないみたいだから、仕方ないよ」 紅優が大変不機嫌な顔で、そっぽを向いた。 同時に蒼愛の体を、ぎゅっと抱き締めた。「魅了? 蒼愛は、そんな術も使えんのか? いつの間に使ったんだ?」 紅優の不機嫌な様子など気にも留めずに、火産霊が興味津々な顔を向けてきた。「霊力を喰われると、喰った相手が魅了にかかっちゃうみたいで。僕も、その、発情しちゃうんですけど。紅優にシてもらわないと、収まらなくて」 淤加美は月詠見に殴られただけで正気に戻ったから、岩山に投げつけるほどの衝撃は必要なかった気もするが。「なるほどなぁ。そういうのは先に教えとけよ」「教える前に勝手に喰ったんでしょ。喰っていいなんて許可は出してないし、加護を与えるなら与えるで、それこそ先に教えてほしかったよ」 紅優が火産霊を睨みつけた。(さっきから紅優が子供みたいだ。御披露目の時みたいに敬語も様付けもしてないし。兄弟みたいな感じ、なのかな) 月詠見や日美子とは、また違う距離感だと思った。 友達より近いような、遠慮がないような、不思議な感じだ。「だってよ、そんだけ良い匂いさせてたら、喰ってみたくなるだろ。予想以上に極上の美酒だったぜ。あの霊力が喰えるんなら、魅了くらい構わねぇな。相手は蒼愛だし、好きになっても愛してもいいだろ」 火産霊が爽やかに笑った。 ちょっと
Huling Na-update : 2025-07-19 Magbasa pa