星の瞳に、こぼれ落ちそうなほどの喜びが宿った。怜央が見つめる先へ駆け出そうとして――けれど、ふいに何かを思い出したように足を止める。そして振り返り、怜央を見た。「早く行って」怜央は、ほんのわずかに笑った。胸の奥には、じくじくと嫉妬が滲んでいた。それでも同時に、かすかな満足もあった。彼には分かっている。彼女が自分に早く消えろと言うのは、ただ仁志のためだ。それでも――彼女がまだ、自分の死を望んでいない。それだけで十分だった。星は彼が動かないのを見て、眉をひそめる。「何ぼーっとしてるの。早く行ってよ!」怜央は深く彼女を見つめ、やがて背を向けてヘリに乗り込んだ。機体が空へ浮かび上がった瞬間、星の張り詰めていた神経がようやく緩む。まるで夢みたいだった。――やっと、帰ってこれた。そのとき、不意に視界の端に細身の人影が飛び込んできた。まっすぐ自分に向かって走ってくる。胸が大きく跳ねる。「仁志――」そう呼ぶより早く、星は強く抱きしめられていた。たった一か月ぶりの再会のはずなのに、星には何年も離れていたように感じられた。「星……」耳元で、男の低く掠れた声が落ちる。「やっと見つけた」仁志は、壊れそうなほど強く彼女を抱きしめていた。乱れた鼓動がそのまま伝わってくる。腕の力は強すぎて、少し痛いくらいだった。それでも星は押し返さず、そっと彼の腰に腕を回す。ふいに何かを思い出したように、仁志は彼女を離し、全身をくまなく見た。「星……怪我はしてないか?」そのときになって星は、彼の目の奥に赤く血が滲んでいるのに気づく。ただ寝不足なだけじゃない。ずっと、まともに眠れていなかったのだ。星は首を振った。「うん。大丈夫」その言葉に、仁志の表情がほんの少しだけ緩む。だが次の瞬間、背後で回るプロペラ音を聞き、彼は顔を上げた。その視線は、まっすぐ怜央とぶつかる。ヘリはすでに海の上へ出ていたが、まだ高度はそれほど上がっていない。互いの表情がはっきり見える距離だった。いつの間にか空は曇り、さっきまでの晴天が嘘みたいに重たい雲に覆われている。今にも雨が落ちてきそうだった。風は強く、波は絶えず岸へ叩きつけられる。さっきまで穏やかだった海は、獲物を呑み込む獣みたいに荒
閱讀更多