しかし、二人ともその事実にはまったく気づいていなかった。優芽利の方はまだましだった。毎日必死に、怜央が潜んでいそうな場所を考え続けていたからだ。自由がないことを除けば、そこまで苦しんでいるわけではなかった。だが、明日香は違った。自分が雲井グループの令嬢であり、星の姉であることを盾にして、手がかりはおろか、まともな情報すら一切提供しようとしない。最初のうちは、仁志も多少の配慮を見せていた。だが時間が経つにつれ、彼の精神は徐々に崩れ始め――ついに明日香に手を下す決断をした。それから明日香は、毎日のように頭部への電気ショック「治療」を受けることになった。「忘れた」と言えば、思い出させるためにさらに刺激が加えられる。加えて、何度も嘘発見テストを繰り返された。その結果――彼女の精神は、限界寸前まで追い詰められていった。仁志は無表情のまま美咲を一瞥し、すぐに白衣の医師たちへ視線を向けた。「聞いただろう。彼女は雲井グループの令嬢だ。長期間の行方不明は許されない。あと数日で――完全に治せ」その声音には、一切の感情がなかった。医師たちは冷たい器具を握りしめたまま、恐怖で額に汗を滲ませる。「は、はい……最善を尽くします」やがて、彼らは見慣れない医療機器を取り出し、再び明日香の治療を始めた。「――あああっ!!」悲鳴が絶え間なく響き、部屋中に反響する。美咲はその場に立ち尽くしたまま、何か言おうとするが、声が喉で詰まり出てこない。かつてオーロラの催眠にかかる前に見たことがある――あの頃の仁志に近い、陰鬱で制御の利かない姿。だが、ここまで露骨なのは久しぶりだった。明日香の叫びは、およそ三十分ほど続き――ようやく止まった。仁志はその間、ただその場に立ち続け、冷たい目で見つめるだけ。微塵の動揺も見せなかった。美咲は、彼の整った顎のラインと、温度を感じさせない薄い唇を見つめながら、思わず体を震わせる。長年の知り合いのはずなのに――今はまるで別人のように感じられた。やがて医師が報告に来る。「溝口さん、雲井さんが意識を失いました」「水をかけて起こせ。続けろ」即答だった。「で、ですが……」医師は思わず口ごもる。「この状態で続けるたら……確実に正気を失います」一瞬、空気が凍りついた。そして――
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