そう言って、勇は翔太へと視線を向け、責任を押し付けようとした。「翔太くん、この勝負で負けたのは、主に君が足を引っ張ったせいだ。あの怜を見てみろ、どれだけ見事に演奏してたか。清子が0.1点減点されたのは、全部君のせいだぞ」その時もなお、翔太の脳裏には舞台に立つ母――星の姿が鮮烈に焼きついていた。あれは、今まで見たことのない母親の姿だった。眩しく、どこか別人のようで、それでも目を離せなかった。――あれが本当に、自分のママなのか?いつから、あんなにすごい人になっていたんだ?清子おばさんよりも、ずっと。音楽のことはまだ分からなくても、その幼い感覚でも分かった。母の演奏は、清子おばさんの演奏よりもはるかに美しかった。そして怜のことも......認めたくはないが、自分より上手だった。しかも母との息はぴたりと合い、ほとんど完璧な演奏だった。それに比べて自分の出来は。翔太は反論できず、うなだれて小さな声で言った。「ごめんなさい、僕が清子おばさんの足を引っ張っちゃった......」勇は頷きながら言う。「そうだろう。君がいなければ、清子はきっと満点だったんだ。だから清子は負けたことにはならない」その言葉に、綾子は烈火のごとく怒った。「馬鹿も休み休み言いなさい!そんなの、翔太みたいな五歳児しか騙せないわよ!本気で皆が耳も頭も悪いとでも思ってるの?!」勇は綾子の剣幕に気圧され、勢いを失った。彼自身も、綾子の前で「翔太が無能だった」などと言うのはまずかったと気づく。軽く咳払いし、取り繕うように言った。「綾子さん、そんなつもりはなかったんです。ただ星にいい気にさせたくなくて。翔太くんが優秀なのは、皆わかってます。でもご存知でしょう、さっき清子は星と賭けを......」綾子は冷たく遮る。「清子が賭けに負けただけ。翔太とは何の関係もないでしょう」勇は慌てて言い返す。「でも、清子は翔太くんと一緒に出たんですよ......結果的に一位を取れなかった。その一位を星が取ったんですよ。清子の負けを認めたら、それはつまり翔太くんの負けも認めることになる。「綾子さん、星がこの後、得意げにふんぞり返るのを見たいですか?しかも翔太くんは彼女の実の息子です
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