「怜、星ちゃん、これ食べな」星は笑みを浮かべながら「ありがとう」と言い、続けて冗談めかして言った。「最近甘いものを食べすぎちゃって、太ったりしないかしら」影斗はパリッとした皮を噛みながら、何気なく言葉を添える。「女性は多少ふっくらしていた方がいい。細すぎたら、むしろ見映えが悪い」怜が興味深そうに尋ねた。「星野おばさん、前は甘いもの食べなかったの?」「ええ、子どもを産んでからは、ほとんど口にしてないの」怜は一瞬きょとんとしたが、すぐに合点がいった。「もしかして翔太お兄ちゃんが乳糖不耐症だから、星野おばさんも甘いものを食べないの?」星は小さくうなずいた。影斗も何か思い当たったように口を開く。「こんなに長い間、自分を抑えてきたってわけか。雅臣と結婚して五年、あいつはお前が何を好きかすら知らなかったんだもんな」星は辛いものが大好きで、食卓に辛味が欠かせなかった。だがこの数年、雅臣や翔太の体を思い、彼女の作る料理はいつも薄味ばかりだった。「翔太に食べさせられないものは、私も口にしない。それが当然でしょう?自分は食べて、子どもにだけ我慢を求めるなんて、筋が通らないもの」その時、生意気盛りの怜が真剣な顔で言った。「星野おばさん、僕の前では好きなものをいくらでも食べていいよ。安心して。僕に食べちゃダメって言うものは、絶対ひと口も食べないから!」その様子を見ていた翔太は、冷たく吐き捨てる。「偽善だ」少し離れたところで、三人が楽しそうにアイスクリームを頬張る姿を見ながら、翔太はふと露店のアイスに視線をやり、無意識に喉を鳴らした。――僕も食べたい。けれど自分は乳糖不耐症。食べれば体に良くない。......やめておこう。そう自分に言い聞かせ、必死に欲を抑え込む。だが思い出すのは、清子の言葉。「今どきのアイスは添加物で作ってあるから、乳糖が入ってるとは限らないのよ。少しくらいなら大丈夫かもしれないわ」数口だけなら問題ないんじゃないか......?いや、だめだ。母さんが怜に禁止したものを、怜はきちんと我慢している。だったら、自分はもっと我慢できなくちゃいけない。怜なんかに負けるわけにはいかない。よだれを垂らしそうになりながらも、翔太は必
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