「今ならちょうど引き下がる口実があるんだ。ここで手を打っておけばいい」「今回の大会は録画されてネットにアップされる。自分の醜態が永久に残って、世間の笑い草になるのを望んでるのか?」「むしろ清子に感謝すべきだな。彼女のおかげで、あんたは大恥をかかずに済むんだから!」勇の厚顔無恥な言葉に、彩香は呆れ果てた。「つまり何?清子が星にコーヒーをぶちまけたのは正しいってこと?私たちが彼女にお礼を言うべきだと?」勇は得意げに言い放つ。「そうさ、礼を言いたければ受けてやる。だがな、自分の演奏が上手くいかなかったときに、うちの清子のせいにするのはやめろよ。その責任は負わないからな」そのとき、清子がそっと勇の袖を引いた。「勇、やめて。わざとじゃなかったにせよ、この件は確かに私の落ち度だわ......」「清子、お前は優しすぎるから、人に好き放題つけ込まれるんだ」勇は冷ややかに星を睨みつけた。「星、もういい加減にしろ。清子は謝ってるんだ。いつまでもしつこく蒸し返すな」「これ以上揉めて清子と翔太くんの演奏に影響したら、俺は絶対に許さないからな!」彩香は呆気にとられ、思わず星に囁いた。「星、こいつらって、いつもこうやって事実をねじ曲げるわけ?」星は平然と頷いた。もはや慣れきっている様子だった。彩香はため息をつく。「もし自分の目で見てなければ、絶対に信じられなかったわよ。この世に、見た目より心根の曲がり方のほうがひどい人間がいるなんて」だが勇は少しも悪びれず、むしろ居丈高に言い返す。「俺は事実を言ってるだけだ!」星は静かに告げた。「さっきの発言、録画したわ。ネットに流して、みんなに判断してもらおうか?」その瞬間、勇の顔色が変わる。「やめろ!ネットには上げるな!」星は首を傾げた。「どうして?自分の言い分が世間に叩かれるのが怖いの?」「そ、そんなわけあるか!」勇は慌てて反論する。「ただ......ここには子どももいるんだぞ。大人の揉め事に子どもを巻き込んで、変な噂を立てられたらどうする!」彩香は鼻で笑った。「安心して。子どもは一人も撮ってないわ。映してるのは大人だけ。あ、それとね、無関係の人は全員モザイク処
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