「翔太お兄ちゃんが言ったんだ。僕のことがすごく嫌いで、星野おばさんと一緒にいるのも嫌だって。それで遊園地に来たのは、星野おばさんと仲直りするためだって。ママに甘えて謝れば、きっと言うことを聞いてくれて、僕なんか相手にしなくなるって。それに......それに......」そこまで言うと、怜の目尻が赤くなり、声もつまって震え出した。星は問いかける。「それに、まだ何か言ったの?」「翔太お兄ちゃんが......僕はただの代わりだって。星野おばさん、本当に僕は翔太お兄ちゃんの代わりなの?」怜の大きな瞳に涙が滲み、小さな捨て犬のように哀れで切なげに映った。星の胸に鋭い痛みが走る。同時に翔太への失望がいっそう深まった。――代わり?父親と同じだ。あの男も替えを作るのが得意だった。やはり親が歪めば子も歪む。「あなたは誰の代わりでもない。あなたはあなたよ」星は真剣に怜を見つめた。「安心して。おばさんは必ずあなたの味方になる」ひと呼吸置き、言葉を継ぐ。「謝ってもらうだけじゃ足りないなら、ほかに望みがあれば言って。私ができる限り叶えるから」怜はおそるおそる彼女を見上げ、不安げに答えた。「ほかには何もいらない。ただ、ずっとそばにいてくれればいいの」星の心は締めつけられた。出会って以来、怜は不運ばかり背負わされ、翔太にいじめられることもしばしばだった。それでも一度も恨み言を言わず、自分や翔太を責めることもなかった。星は大きく息を吸い込み、傍らで静かに立つ影斗に視線を向ける。「榊さん、あなたの望みは?何かあれば聞かせて」影斗はじっと彼女の瞳を見据えた。「星ちゃん、覚えておいて。子どもはお前ひとりの子じゃない。この責任を全部背負うのは間違いだ。子どものことをすべて自分で抱え込むから、雅臣は家や子に責任を持とうとしない。まるで子育てなんて簡単だと思っている。お前の努力が見えないからこそ、あいつはお前を軽んじるんだ」星は言葉を失い、しばし呆然とした。彼女はずっと、子どもに関わるすべてをひとりで背負ってきた。雅臣は大きな会社を切り盛りし、忙しく疲れている――そう思えば思うほど、雑事を彼に任せず、全部自分でやろうとしてきた。夫に一切
Read more