直哉は完全に固まった。一対一で楽斗が負けたなら、星に実力があると認めるしかない。でも二対一でも抑えられないとなれば、星の実力は普通のプロ選手をはるかに上回っているということになる。星がずっと初心者のふりをして虎を演じていた羊だったと気づき、直哉の中に苛立ちが燃え上がった。「あの食えない女、何も知らないふりをしてこっちを油断させやがって。朝陽と明日香があいつに手こずったのも納得だ。腹の底が黒すぎる。俺の顔を踏み台にして今日一発かまそうとしてるなんて、笑わせんな!」直哉の目が冷たくなった。「二人で無理なら、侑たちも呼べ」勇輝は数秒止まってから、思わず叫んだ。「は?直哉、正気か?何人がかりで一人を囲むんだよ、めちゃくちゃ格好悪いじゃないか!」直哉は冷たい声で言った。「今のところ大半の観客は気づいてない。だからレース後に、彼女を守るための護衛だったと説明すればいい。お前たちは俺の頼みだと思ってくれ。プロ選手側も……俺が言えば誰も文句は言わない」楽斗と勇輝は耳を疑った。星を抑えるためとはいえ、もはや面目丸つぶれだ。でも直哉が「頼む」と言い出したら、長年の仲として断れるはずもない。「……わかった、やる」車の中で星は楽斗と勇輝の挟み込みに気づいていたが、特に驚く様子はなかった。最初から予想していた。直哉が動かなければ、こんなに大勢で走る意味がない。星は焦らなかった。次のセクションは幅が広い。二人程度の挟み込みなら、抜け出せると計算していた。星はすでに頭の中で最善の突破ルートを組み立てていた。しかし次のセクションに入ろうとした瞬間、前の車のスピードが急に落ちた。前が遅くなったことで、後ろの車がすぐ追いついてくる。星の目つきが変わった。瞬時に何が起きているかを悟った。二、三台の挟み込みなら突破できる。でも六台が作る壁は、どんな腕があっても突き破れない。しかも周りは全員プロだ。本来この囲い込み戦術はチームレース専用のものだ。個人戦でやれば反則であり、チートだ。でも今は正式なレースじゃないし、ルール設定もない。まさか直哉が明日香のためにここまで恥も外聞も捨てるとは。星の指がステアリングをぎゅっと握りしめた。胸の奥から、久しぶりの怒りがこみ上げてくる。汚すぎる。陣形が完成する前に動かなければ、もう機
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