もうどれくらいかわからなくなるほど、気が遠くなるくらい長い時を渡ってきた。 吾(われ)は闇を統べる者、リグ・ベヌス。 吾とその悠久の時の流れを共にするのは、光のの象徴たるエルト・ディーワ、その弟カイ・ベルグ、そして光と闇の調和者であるアルタミラ。 この世界には、吾等のように長き時を渡りかつ不思議な力を持つ『神』と呼ばれる長命種と、百年に満たぬ時を生きる短命種が共に住んでいた。 我々の目前には、たくさんの存在が現れ、そして消えていった。 仲睦まじくなった人々は、吾よりも先に年を取り、吾よりも先に逝ってしまう。それが普通のことであり、世の定めだった。 あまりにも多くの『友』を失った吾は、すでにもう流す涙も枯れ、失うことは当然のことと思っていた。 そんな中、この世界を支える神と呼ばれる存在の一翼たる吾と、先の三人の友は、この世界の終末を見届ける時まで共に在るのだ。 吾はそう信じて疑わなかった。 折あらば酒食を共にし、語り合う、大切な存在。 だが、ある時異変が訪れた。 調和者アルタミラが、前触れもなく何処かへ姿を消したのである。 吾とディーワ、そしてカイは八方手を尽くし彼女を探したが、使いの者が戻ってくることはなかった。 今思えば、あれがすべての始まりだったの気もしれない。 けれど、吾に何ができたのだろう。 今語ろう、始まりの物語を。 ※ 闇の領域は、人々の歓喜に満ち溢れていた。 人々は『闇の王』の誕生を心から祝っていた。 元々、闇の領域には闇を統べる『闇神』が存在していたが、『王』と呼ばれるものは存在しなかった。 けれど、人々は自らを統治し導く存在を欲した。 そこで彼らは、闇神リグ・ベヌスに王への即位を請うた。 『生き神』として神殿に押し込められることを是としないベヌスは、快くその願いを聞き入れた。 何より、人々とともに有り、寄り添いたいと思ったがためである。 そして、晴れて即位の儀が執り行われる事が決まったのだった。
Last Updated : 2025-05-30 Read more